「国債の翌日決済を検討」(一部修正)
国債など金融商品の決済期間の短縮は、未決済残高を減少させ、結果として決済リスクを削減するための有力な手段となる。たとえば急激な相場変動が起きた際にも決済不履行などの事故が生じる決済リスクを軽減させられる。
昨年秋のリーマン・ショック後の市場混乱をきっかけに、市場の安定化を目指し、国債のペーパーレス化も進んでいたことなどもあり、以前からの懸案事項でもあった国債の翌日決済などの制度改革に取り組むようである。
大手の証券、銀行、生保などが今月に入り、国債決済の短縮化を目指す専門委員会を設置したと日経新聞は伝えている。これは日本証券業協会が事務局となる「国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」のことを指すとみられる。
設置要綱 http://www.kessaicenter.com/finish/kokusaik-yoko.pdf
委員名簿 http://www.kessaicenter.com/finish/kokusaik-meibo2.pdf
これは1998年9月に設立されたGSTPA(Global Straight Through Processing Association)を意識したものではないかと思われる。GSTPAとはグローバルな証券取引におけるSTPを推進させるため、欧米の主要なバイサイド、セルサイド、カストディアンが結集して設立したものである。STP(Straight Through Processing)とは、約定から決済や商品受け渡しまでの事務を自動的に処理することである(野村資本市場研究所のサイトより http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/1999/1999sum08.html)。
国債の決済に関しては、1995年時点ですでにアメリカ、イギリスなどは約定日から起算して2営業日目(T+1)つまり翌日決済を行っていたが、当時日本ではまだ特定日決済の5・10日決済をおこなっていた。ちなみに「特定日決済」とはある期間に約定された取引の決済をすべて特定の日に行う決済である。これに対して取引を常に約定日から一定期間経過後に決済するのは「ローリング決済」と呼ばれる。
その後日本でも1996年9月19日の売買分より、約定日から起算して8営業日目(T+7)に決済を行うローリング決済に移行し、1997年4月21日売買分から約定日から起算して4営業日目(T+3)に決済を行うことになり、現在に至っている。
ただし、すでに日本では証券と資金の振替が同時に行われる決済方式であるDVP決済が1994年に導入され、2001年からは国債決済にRTGS(即時グロス決済)が導入された。また、2005年5月からは日本国債清算機関の業務が開始されるなどしており、現在のT+3でもシステマティックリスクなどの国債の決済に対してのリスクはかなり軽減されている。
リーマン・ショックのような異常事態が発生しない限りは未決済残高に関わるリスクが発生する可能性は低く、、巨額のシステム費用をかけてまで、T+1を推し進めるインセンティブは業界内ではさほど強くはないはずである。また、国債の翌日決済を実現するには、レポ市場の受け渡しを「T+0」に縮小する必要などもある。さらに日本ではフェールの問題も完全にクリアーとなっていない側面もある。慣行としてフェールは良くないとの認識も強く、そういった慣行となっている業態もある。そして、国債だけでなく株や一般債などでも同様の決済期間の短縮が図られると、さらにフェールの問題などが発生しうる。
日経新聞は国債の翌日決済の時期導入は国債の決済を担っている日銀がシステムを刷新する2015年が当面の目標となる見通しと伝えているが、具体的にそのような動きとなっているのかもどうやら不透明のようである。