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「政策対応に依存した脆弱な景気回復」

 岡山県で開催された金融経済懇談会における水野日銀審議委員の「政策対応に依存した脆弱な景気回復」と題された講演の内容を、日銀のホームページにアップされたものから見てみたい。

 水野委員は現在の日本経済について、輸出と生産の持ち直しと、個人消費・設備投資・住宅投資といった国内民間需要の弱まりという、強弱両方の要因が打ち消しあっている状態と指摘している。

 強気の材料としては、在庫調整の進捗や自動車の減産緩和を受けた幅広い業種における生産のリバウンド、中国における家電購入への補助金支払いの波及、各種政策効果による自動車・家電の国内販売の増加、公共工事請負金額の増加、昨年末から今年初めにおける急速な景気悪化の一巡を受けた、経済の先行きに対する不安心理の後退を上げている。

 それに対し弱気の材料としては、国内民間需要から見て、企業は夏季賞与の大幅削減、出張の削減など経費削減を強化し、設備投資は大幅に減少している点。さらに昨年秋以降、雇用・所得環境の悪化が顕在化していること。こうした下で、各種の政策効果が現れている自動車・家電販売を除けば、消費関連指標は軒並み悪化している点を上げている。

 現在の状況は、在庫調整の進捗に起因する生産持ち直しという「短期的な景気循環」と、国内民間需要の弱さに現れている「構造調整圧力」が混在した状況にあり、経済活動の水準は極めて低く、生産と輸出も崖から落ちるような「フリー・フォール」が終息した程度であると指摘している。

 景気の先行きについて水野委員は、景気持ち直しの動きが続くのかどうか、その不確実性は引き続き高い状況が続いていると指摘した。

 すなわち、雇用と設備の調整圧力の強さ、大企業・製造業における経費削減の強化、非製造業と中小企業におけるマインド回復・業績底入れの遅れなどにより、国内民間需要の下振れリスクは小さくないとしている。

 水野委員は、持続的な景気回復が実現するための前提条件としては、海外需要の回復によって生産が企業の採算ラインを継続的に上回るところまで増加することであるとしている。

 さらに個人的な見解として、わが国の潜在成長率は、4月の展望レポートで公表した1%前後よりも低下している可能性があるとみているとしている。

 そして、過去に想定していた潜在成長率や、それに対応する需給ギャップの大きさについても、相応の幅を持って考える必要があると指摘しており、その需給ギャップを縮めるには、財政出動等で需要サイドを刺激する、(設備廃棄など供給サイドの過剰を削減する、という2つのアプローチが想定されるとしている。

 「ワイズ・スペンディング」を体現する財政政策とは、公的需要で一時的に需給ギャップを縮小させるだけでなく、潜在成長率の低下に歯止めをかける成長戦略、「少子高齢化」対策や雇用のセーフティー・ネット拡充などの消費者重視の政策、規制緩和等による新規産業創出策、税制面のサポートによる環境関連技術など、様々な経路で企業活動の活性化を促す政策対応を備えたものである必要があるとしている。

 それに対してわが国の財政政策を巡る議論からは、雇用、子育て、医療、教育、年金など国民に安心できる生活を保証することが焦点となっている点を指摘している。これは今回の衆院選におけるマニフェストを見ても明らかとみられ、さらに水野委員は「セーフティー・ネットのみならず、雇用創出力や租税負担能力が高い大企業のリスクテイク能力を高める策もまた重要です」と指摘している。まさにこれはその通りだと思う。

 そしてまた水野委員は次のような警鐘も鳴らしている。

 「1990年代以降の財政拡張のツケは、現役世代の負担増加にとどまらず、将来世代の財政政策の選択の幅を狭めます。わが国のような経済大国で、人口減少社会に陥った先例はありません。経済の活力を高め、長期的な経済成長率を引き上げていかない限り、現役世代の間でも、次第に世代間の負担と受益の公平性を要求する声が強まり、社会保障制度のあり方を巡る議論は、世代間闘争の色彩を強めてくると予想されます。」
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by nihonkokusai | 2009-08-20 13:44 | 日銀 | Comments(0)
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