「ほっ」と。キャンペーン

牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

「債券先物の黒電話」

 私が債券先物を中心とした債券ディーラーになったのは1986年10月であったが、当時、債券先物の売買の注文は黒電話で行なわれていたのである。ちなみに黒電話とは黒いダイヤル式の卓上電話である。東証と、会員である証券会社や特別会員である銀行の債券売買の部署は直通の電話回線が結ばれており、この電話を介してJGB先物の注文を出すのである。

 当時はまだ若手であった私が電話番を任された。受話器を上げるとそのまま東証につながり、実栄証券の担当者が出る仕組みになっている。現在はなくなってしまったが、東証に場立ちがあったときに、株式市場の注文についても実栄証券が会員の相手となって取引を行なっていたのである。

 朝方、寄り付き前に実栄証券の担当者から電話がかかってくる。これで朝の挨拶をしてからいよいよ取引が開始されるのである。電話注文で行なっていた当時は、大手証券などはそれぞれ個別の担当者がいたようだが、一人の実栄証券の担当者が何社かの会員を受け持つこともあり、それによってブロックが作られていた。

 当時の債券先物の売買は、東証の中の一室で、扇形のように実栄証券の担当者が電話を前に座り、扇の要の位置に注文をまとめる担当者がおり、その後ろに売買を書き込む黒板、まさに板があったのである。

 実栄証券の担当者は売買の注文を受けると、手を上げて売りか買いかのサインを出す。それを確認した真ん中の担当者から指名されると、注文の相手先とともに価格と数量を伝える。それを板に書き出しながら値をつけて行くのである。今はコンピュータで値が瞬時についてしまうが、当時は人と人が結ばれて値段が形成されていった。

 注文を伝えてから約定されるまで、さすがにコンピュータ売買に比べて遅かったものの、個人的にはそれほど支障をきたさなかったように思う。上司は遅い、遅いと言う事も多かったが。それ以上に人間が介在することで、大きな間違い注文などはチェックも働く。それになんといっても場の状況が声を通じて伝わってくるところが良かった。何かしらの材料で相場が動くと電話の先が大騒ぎしており、場の状況が電話口から伝わってくる。

 私がディーラー駆け出しのころは、とにかく間違いなく委託注文を含めた売買を伝え、約定を受けてそれを会社の担当者やディーラーの先輩に伝えることが重要で、さらに自分の売買注文も出さなければならず、なかなか余裕はなかった。しかし、さすがに時間とともに慣れてくると、実栄証券の担当者とも仲良く話しをするようになった。実栄証券の担当者は数か月ごとに変わっていったが、担当者によってはたいへん気が合うようになり、売買の公正さから言えば、本当はいけないことであったかもしれないが、それでも人と人であり、仲良くなれば飲みにも行くようになる。そこで実栄証券から見たJGB先物などの相場の世界とはどのようなものなのか、駆け出しディーラーの私にとって彼らから聞く話はのちのちの自らのディールにたいへん役立った。さらに他社のJGB先物の担当者を紹介してもらうなどしたことで、情報交換のためのネットワークも広がった。

 その後、債券先物はコンピュータ化され、電話を介した注文はなくなった。受話器を通じて場の様子も聞けなくなり、まさに値動きからでしか相場の動向が見られなくなったのは、ディーラーとしては寂しい。コンピュータ取引全盛の今でも、シカゴの先物市場やニューヨーク株式市場ではいまだに人が間にたって売買を行なっている。これは相場を形成しているのはあくまで人であり、人と人が売買をぶつけ合うことで、相場の場が形成され地合を読むことができる。これが本来の相場の世界であるのだと思う。
[PR]
by nihonkokusai | 2009-05-01 09:52 | 債券市場 | Comments(9)
Commented by みついちえ at 2009-05-01 14:47 x
>コンピュータ取引全盛の今でも、シカゴの先物市場やニューヨーク株式市場ではいまだに人が間にたって売買を
ただ株の場合は、コンピュータ取引は多くの参加できる人が同じ条件っていうよさがあります。。。立会いは、間違いの事件もありましたし・・・。
Commented by nihonkokusai at 2009-05-01 16:21
みついちえさん、そういえばご無沙汰です。

 取引って、やっぱり人が介在していたほうが何かと面白みも増すと思うのですが。
 また実は書くのを手控えていたのですが、システムだと過誤訂正はむずかしいものの、人が入るとそれが可能になったりします。特に委託玉の発注ミスなどに対して、実栄さんが入っていた際はなんとかなったりしたものです。そういった良さもありますし、私は無機質なコンピュータ取引より良いような気がしています。
Commented by 63番(1) at 2009-05-03 23:05 x
大変ご無沙汰しております
以前は「会員登録」して、屋形船にもご一緒した元泡沫債券ディーラーです。
黒電話の頃の話が出たので、懐かしくて書き込みます。
私も実栄証券の方々には大変お世話になりました。
パンチパーマで一見怖そうなお父さん方も、夜一緒に酒を飲むと「語り部」のようにいろんな昔話を聞かせてくれました。
もう時効でしょうから書きますが。注文を出してる最中に「お、◎◎が買いの手挙げてるぞ。挙げとくか?」なんてこともありましたっけ。

Commented by 63番(2) at 2009-05-03 23:06 x
それから、ミスのときは「貸し借り」みたいなこともありましたね。
でも、注文を出してる最中にバックで「成行500売る◎番!」なんて注文が出て、場がザワザワするようなときはワクワクしました。
そう、ちょうど88年か89年5月のこのゴールデンウィークのときにシステム売買に移行したと記憶してます。
なんかとっても淋しかったですね。
その後、東証株式立会場最後の日にも現場に行きましたが、役員クラスの年配の方々が涙を流していたのが印象的でした。
ここ何年か研修担当になり、海外から来た方を立会場見学に案内するたびに思い出します。
東証見学も面白いですが、日銀の案内付ツアーや向いにある「貨幣博物館」も結構面白いですよ。。。
また、久保田さんにお会いできる日を楽しみにしております。

Commented by nihonkokusai at 2009-05-07 09:54
63番さん、コメントありがとうございます。

ミスのときの「貸し借り」、ありましたね。それで余計に親交が深まったりして。
私もシステム移行の際はとても寂しい思いをしました。

東証や貨幣博物館の見学、今度なんとか時間を見つけてみたいと思います。

再びお会いできることを楽しみにしております。

Commented by みついちえ at 2009-05-07 13:36 x
私も、基本的には立会いが好きなんですけどね・・・。前の会社が、双眼鏡で手サインみながらお経を唱えるようにラジオ放送していた時代とか、懐かしいです。でも取り消しむずかしいのは、今システムを導入してる○○社の問題だと思います・・・。システムで作られた板でも、見慣れると周りの人が注文いれたり、引っ込めたりしてる様子、感じられますよ~~。
Commented by nihonkokusai at 2009-05-07 14:12
 過誤訂正とはいったん約定してしまったあと、間違いに気付いての訂正のことで、通常の注文の訂正とは異なります。こればかりはシステムではなかなか対応は難しいと思われます。
Commented by みついちえ at 2009-05-08 10:39 x
思い出した!それで立会いがあったころ、東証相場報道システムでは、値段訂正のとき、歩み値まで戻したんですよ・・・あれ難しかったんですよね~すごいマトリクス作って処理してました。
Commented by nihonkokusai at 2009-05-08 12:24
なるほど、過誤訂正は、そんな影響も与えていたのですね。
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー