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金融政策運営に関する意見の興味深い箇所

27日に日銀が公表した3月15、16日開催の金融政策決定会合における主な意見は、よくよく読むとなかなか面白い箇所があった。このなかの金融政策運営に関する意見を確認してみたい。

「世界経済が好転するもとで、わが国の景気回復の足取りもよりしっかりしたものになってきているが、2%の「物価安定の目標」にはなお距離がある。こうした状況では、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していくことが適切である。」

これが現在の日銀の金融政策の基本的なスタンスとなっている。我が国の景気がしっかりし、日銀が異次元緩和を行って、何故2%の物価安定の目標にはなお距離があるのか、ここが物価目標達成に向けた最大の問題点となろう。そこを解き明かさないと強力な金融緩和を推進していくことで本当に良いのかどうかは結論できないはずである。

「経済の好循環は緩やかで、「物価安定の目標」達成は道半ばである現況下においては、経済の好循環の後押しに資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。」

ここでは「経済の好循環の後押しに資するべく」との表現が気になる。実はこれが当たり前の金融政策の見方だったはずなのだが、黒田日銀のスタンスは能動的に金融政策で物価を動かすというものであり、これは昔の日銀の香りが漂う発言となる。

「物価安定の目標達成に向けて、経済を自律的な成長軌道に乗せることが重要である。海外経済を巡る不確実性も踏まえると、拙速に行動すべきではなく、現行の枠組みのもとで粘り強く金融緩和に取り組むことが肝要である。」

拙速にどんな行動を起こせというのであろうか。これはもしや昨年のマイナス金利政策などの反省を込めて、ということになるのであろうか。

「オーバーシュート型コミットメントを含む「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早く達成するために、現時点で最適な政策枠組みである。」

最適というよりもいろいろと矛盾した政策であることは昨日、このコラムにて指摘させていただいた。

「現行の金融緩和政策は、その所期の効果を発揮しており、またオペレーション上も特段の問題をきたしていないことから、早急に枠組みを変更する必要性は認められない。」

早急に枠組みを変更する必要性はさておき、日銀の現場の担当者は今年に入り、オペレーションではかなり苦労したであろうことが伺える。また、どの物価を見れば、現行の金融緩和政策は、その所期の効果を発揮していると言えるのであろうか(物価だけが中央銀行の金融政策の目標ではないが、掲げた目標はあくまで物価であったはずである)。

「金融市場局が国債買入れオペ実施日の公表などの工夫も講じながら機動的なオペ運営に努めたことから、イールドカーブは、引き続き金融市場調節方針に沿った形で推移している。」

国債買入れオペ実施日の公表などの工夫は確かにマーケットの動揺を抑えた。市場との対話がやっとスムーズになってきた印象はあるが、それでも期末に向けた対応などやや唐突な面もあり課題は残ろう。

「海外金利の上昇から、金融政策の転換を求める声があるが、日本の金融政策はあくまでも日本の景気と物価を考えて行うべきである。米国や欧州の物価上昇率は2%近傍となっているが、日本はいまだ0%近辺である。日本の金融政策の転換が必要となるまでには相当に時間がかかる。」

米国の金利上昇と日本の足元物価の回復は、日本の長期金利の上昇要因となりうる。果たして長期金利をいつまでゼロ%近辺に抑えることが可能なのかを市場は懸念している。日銀の政策変更を求めているわけではないが、実勢に見合った長期金利が形成出来ない状態が何かしらのリスク要因となったりはしないか。そもそも長期金利の目標引き上げは単なる調節ではなく利上げに見えてしまう点にも長短金利操作の難しさがある。

「本行の金融政策が注目されている中では、市場の状況次第で、我々の情報発信が、意図と異なった受け止め方をされ得る。情報発信にあたっては、その時々の状況を踏まえることが肝要である。」

まさにその通りかと思うが、なにぶん政策に矛盾した面があり(量と金利の併存、大胆な緩和で物価が動かない等々)、日銀の情報発信は注意したとしても、市場は悩んでしまう面もある。

「2月に国債買入れ額が大幅に膨らんだことは、長期金利に目標を設定すると大幅な国債買入れを余儀なくされ得るという 、イールドカーブ・コントロールの弱点が顕現化したものだ。」

木内委員の発言とみられるが、その通りとしか言いようがない。

「10年金利の目標をゼロ%程度とすることに反対であり、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は若干スティープであるべきと思う。先行きの不確実性への備えもあり、買入れは極力減らしておくことが望ましい。なお、先行きの外貨調達環境を考えると短国利回りは4月以降もさほど上昇しない可能性があり、一段の買入れ減額の余地がある。」

こちらは佐藤委員の発言か。こちらもほぼ同意であるが、先行きの外貨調達環境をどのように設定しているのであろうか。

「見通しに沿って、物価の基調が高まれば、長期金利の上昇圧力が強まることが見込まれる。長短金利操作の手順や政策反応関数について、今のうちから議論しておく必要がある。」

これもその通りとしか言いようがないが、今のうちから議論しておく必要があるというのは少なくとも政策委員ベースでの議論はこれまで行っていないということになる。もちろん執行部ベースではシミュレーションはしていようが(しているはずだが)、表だっては出口に向けた動きを見せられず、政策委員間での議論はこれまで本当になかったようである。

 「イールドカーブ・コントロールのもとで、市場の金利や期待をコントロールするのは難しい一方、国債買入れオペは、むしろ市場の期待に影響され、買入れ額の調整等の面で柔軟性を失っていくリスクがある。このため、資産買入れ額に新たに目標を設定し、それを秩序だって段階的に下げていくことが、政策の持続性と市場の安定性を高める。」

これは発言内容から、資産買入れ額を減額して操作目標とする枠組みを提案していた木内委員の発言と思われる(同一人物の発言が複数回載っていることはありうる)。これが素直なやり方のひとつであると思うが、金融緩和の後退は認めたくない現在の日銀が、この政策を取り入れることは、余程のことが起きない限りはたぶんない。


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# by nihonkokusai | 2017-03-29 09:40 | 日銀 | Comments(0)

矛盾だらけの日銀の異次元緩和政策

FRBが今年は年内複数回の利上げを見込み、イングランド銀行も英国のEU離脱というショックがあったものの今後の方向性としては利上げが視野に入り、ECBはデフレ脱却を表明し緩和に傾倒していた姿勢にブレーキを掛け始めた。

欧米の物価は2%近傍となり、物価目標という意味合いからも世界的なリスク発生による異常な緩和政策からの出口を探る方向に舵を切るなか、日銀だけが異常な金融緩和政策からの脱却の道筋が描けずにいる。

この要因としては、安倍首相の登場で日銀法改正までちらつかせながらリフレ的な政策を日銀に要求し、欧州の信用不安が後退しつつあるタイミングで、日銀がそれを行わざるを得なくなったことにある。しかもインフレターゲット政策として2%の物価目標を掲げ、それを金融政策で達成しようとしたことに無理があった。

日本の消費者物価がなぜ2%にならないのか。それは日銀の緩和が足りなかったわけではないことを理解するのに4年以上の時間をかけた壮大な実験を行ってしまったのが日銀である。しかも、その間に異次元緩和の拡大やらマイナス金利政策まで導入してしまった。量的緩和とマイナス金利という相反する政策が矛盾を来たし、その結果、今度はそこに長期金利まで操作対象にするという、なんでもござれの政策を実施している。シン・ゴジラは第四形態となってより強力な存在となったが、日銀の金融緩和の第四形態(QQE、QQE拡大、マイナス金利、長短金利操作付き)は無理に増築に増築を重ねた巨大で歪な構造物となりつつある。

ただし、日銀は出口政策にまったく目を向けていないわけではない。金利を下げることが金融緩和であるが、マイナス金利政策によって金融機関の運用に支障を来してしまった。このため長短金利操作という手段を導入したが、これは長い期間の金利を「上げる」政策となっていた(イールドカーブのスティープ化)。

また、国債の買い入れはいくらでもできると豪語しながら、現実には年間の国債発行額のほぼ全額を買わざるを得ない状況となってしまっている。来年度の国債発行額の減額もあり、日銀の国債買入は減額せざるを得ない。それが1月の日銀の国債買入のスキップであったが、市場との阿吽の呼吸ができずに市場を混乱させた。しかし、国債の日程を事前公表するなどして、市場にそれとなくステルステーパリングを認識させた。80兆円という買入の数字はすでに目標ではないし、現実にはそれを下回る国債買入となることが予想される。目標でなければテーパリングという表現はあてはまらないかもしれないが、現実には国債の需給を睨んだステルス的なテーパリングを行っているのが現状である。

日銀は表面上は緩和姿勢を維持させているように見せながら、これ以上の金利低下や国債買入の増額を模索しているというよりも、いかにして長期金利を現在の政策金利に抑え込めるのか、いかにして国債買入の減少をうまく実施させていくのかが、いまの日銀の課題になっているように思われる。

27日に公表された3月15、16日開催の金融政策決定会合における主な意見では、「本行の金融政策が注目されている中では、市場の状況次第で、我々の情報発信が、意図と異なった受け止め方をされ得る。情報発信にあたっては、その時々の状況を踏まえることが肝要である。」との意見があった。この日銀の意図とは何なのか。本当のところの意図が言いたくても言えないところから市場の誤解を招くといったリスクもあるのではなかろうか。



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# by nihonkokusai | 2017-03-28 09:29 | 日銀 | Comments(0)

昨年末時点での日本国債の保有者

日銀は3月19日に資金循環統計(10~12月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は昨年末時点で約1800兆円となり、過去最高となった。9月末時点では約1752兆円となっていた。個人の金融資産の内訳は、現金・預金が前年比1.8%増の約937兆円となった。株式等が同0.4%減の約167兆円、投資信託は0.2%増の約96兆円となっていた。昨年11月の米大統領選挙のあとの円安株高などを受け、株式のマイナス幅が縮小し、投資信託は減少から増加に転じた。

この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

日銀の国債保有残高は370兆8253億円となり、38.7%のシェア。前期比(速報値)からは14兆544億円の増加。

保険・年金基金は236兆4668億円(24.7%)、6兆604億円減。

預金取扱機関(都銀や地銀など)で203兆5814億円(21.2%)、11兆3835億円減。

海外投資家で53兆1004億円(5.5%)、1兆9917億円減。

公的年金の49兆2160億円(5.5%)、1兆8102億円減。

家計の12兆7283億円(1.3%)、5642億円減。

その他が32兆1628億円(3.4%)、5兆2539億円減。

2016年9月末(速報値)に比べ、国債(短期債除く)の残高は約13兆円減少し、約958兆円となった。

9月末(速報値)に比べて大きく増加したのは、国債を買い入れている日銀で約14兆円の増加となった。増加は日銀だけとなり、今回は海外も減少させていた。

9月末に比べて大きく減少したのは中小企業金融機関等(ゆうちょ銀行含む)の約6.4兆円減、企業年金の1.2兆円減、国内銀行の約4.4兆円減、生命保険の約4.1兆円減などとなっていた。

日銀は昨年1月にマイナス金利政策を導入し、2月9日には10年債利回りもマイナスとなった。マイナス金利政策そのものに対して金融界からその弊害も指摘された。金融機関はこの間、マイナス金利の影響も加わって国債の保有残高を減少させた。

日銀は昨年9月の金融政策決定会合において総括的な検証を行った上で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の導入を決定した。この政策は国債のイールドカーブのスティープ化を促すためのものではあったが、10年以下の国債利回りは抑え込まれた格好となった。日銀の巨額の国債買入が続いていたこともあり、それは結局、金融機関などの保有する国債を減少させることとなった。

短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1076兆円となり、日銀が約421兆円で39.1%のシェアとなっていた。そして海外勢の残高は約113兆円と短期債を含めると国債全体の10.5%のシェアとなっていた。


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# by nihonkokusai | 2017-03-27 09:56 | 国債 | Comments(0)

国債市場特別参加者制度の見直しのポイント

3月22日に財務省で開催された国債市場特別参加者会合(第70回)の議事要旨が23日に公開された。このなかで国債市場特別参加者制度の見直しについて財務省からの説明があった。今回、どのような変更となるのかを知るために、そもそも国債市場特別参加者とはいかなるものであるのかを確認しておきたい。

戦後、国債発行が開始されてから国債の安定消化に大きな役割を果たしていたのが国債引受シンジケート団である。しかし、シ団制度は多くの国で行われていないことに加え10年利付国債しかカバーしていなかった。国債の発行年限の多様化などにより、シ団制度そのものの形骸化が指摘されるようになり、1998年末の資金運用部ショックと呼ばれた国債の需給悪化を背景にした債券急落をきっかけに、新たに設けられたのが国債市場懇談会である。この国債市場懇談会はあくまで財務省理財局長の勉強会との位置付けであった。これを発展させ、欧米で広く採用されているプライマリー・ディーラー制度(政府公認の国債取引業者)の仕組みを取り入れて、省令に基づく正式な制度としたのが、2004年10月から導入された国債市場特別参加者制度である。日本版プライマリー・ディーラー制度であり、その会合は国債市場特別参加者会合が正式名称であるが、PD懇(プライマリー・ディーラー懇談会)とも称されている。

プライマリー・ディーラーのプライマリーとは新規に発行されることを示す。つまりプライマリー市場が発行市場を意味し、これに対して既に発行されたものを売買するのがセカンダリー市場と呼ばれる。つまりセカンダリー市場とは債券の流通市場となる。またディーラーとは、財務省が発行する国債を自己の資金で売買することができる証券会社や銀行などを指す。

プライマリー・ディーラー制度とは、指定を受けた証券会社や銀行に対し、一定の規模の国債の入札や落札、市場の状況等の報告が義務付けられる代わりに、一定の優遇措置が認められる制度である。

国債市場特別参加者制度運営基本要領によると、国債の安定的な消化の促進並びに国債市場の流動性、効率性、競争性、透明性及び安定性の維持並びに向上等を図ることが国債市場特別参加者制度の主な目的となっている。

国債市場特別参加者、つまりプライマリー・ディーラーとなった参加者に対しては責任が求められる半面、資格も得られる。

責任としては、すべての国債の入札で、相応な価格で発行予定額の4%以上に相応する額を応札しなければならない。落札額も超長期国債・長期国債・中期国債についてそれぞれ1%以上、短期国債は0.5%以上の落札責任がある。また、国債流通市場に十分な流動性を提供することも求められている。毎週、自らのアウトライト取引(日計り売買)、債券先物取引、店頭オプション取引及び円金利スワップ取引等の取引の動向等について情報の提供が求められる。

資格については、おおよそ四半期に一度開催される国債市場特別参加者会合に参加することができる。ここで各年度の国債発行計画、各四半期の国債発行のあり方、国債に対する需要動向、国債の商品性のあり方、国債流通市場の動向等、財務省と意見交換等を行うことができる。

国債市場特別参加者は第1非価格競争入札と第2非価格競争入札に独占的に参加できることになった。第1非価格競争入札により、価格競争入札における加重平均価格で財務省が特別参加者ごとに設定する応札限度額まで応札できる。この際の発行分の限度額は、当該国債の発行予定額の10%となっている。

今回、修正されるのは「相応な価格で発行予定額の4%以上に相応する額を応札しなければならない」との応札義務の箇所で、4%を5%とする。国債市場特別参加者は、手元に残るデータでみると2012年あたりで25社あった。ところが合併などに加え、昨年の三菱東京UFJ銀行の資格返上もあって、現在21社となっている。このため21社が4%の義務だけ応札してしまうと84%となり、未達が発生する懸念が出てしまう。

米国のプライマリー・ディーラー制度では、発行予定額をプライマリー・ディーラーの社数で除した値を応札義務と定め、プライマリー・ディーラーの応札のみで発行予定額の全額をカバーする仕組みとなっている(議事要旨の財務省の説明文より)。それならば今後も国債市場特別参加者が増減する可能性もあり、米国のプライマリー・ディーラー制度の方式を取り入れても良いと思われるが、とりあえず5%として特別参加者21社の応札責任で全額をカバーできる格好とするようである。

また、第1非価格競争入札の発行限度額についても10%から20%に引き上げる。入札そのものでは平均落札価格を上回る価格で落札すると販売時に損失が出る可能性がある。それに対して、第1非価格競争入札では平均落札価格で購入できるためリスクが少なくなるという利点があり、その活用枠を拡げることになる。

これらの変更は今年7月以降に「発行」される国債の入札分から適用する予定だとか。このため、例えば6月に行われる2年債の入札では現状、発行日が翌月の7月となるため新制度が適用されることになる。



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# by nihonkokusai | 2017-03-25 10:30 | 国債 | Comments(0)

トランプ相場が失速した背景を探る。アベノミクス相場との類似性

2012年11月あたりからのドル円や日経平均株価の急速な上昇は、アベノミクスによるものとされた。リフレ政策を掲げた安倍自民党総裁は12月の衆院選で政権を取り戻し、これがきっかけとなって相場が大きく動いた。しかし、相場が動いた背景にはそれまでの急激な円高とそれに伴う株安の反動という側面が大きかった。あくまでアベノミクスという政策そのものが相場を動かしたのではなく、それをひとつのきっかけとしてドル円や東京株式市場でのショートカバーの動きを強めた。ヘッジファンドなどがそれを先導したとされている。

昨年11月からのいわゆるトランプラリーとかトランプ相場と呼ばれた市場の値動きも、この2012年11月からのアベノミクスと似通った動きとなっていた。トランプ相場もトランプ大統領の経済政策などへの期待によるドル高、株高との見方が強かった。しかし、これもまたアベノミクス同様に反発するエネルギーが溜まっていたことが相場を大きく動かしたといえる。

昨年当初の世界の金融市場は大荒れとなっていた。中国を中心とした新興国経済への不安感や原油安により、いわゆるリスクオフの動きを強めた。たとえばドル円でみると、2016年初に120円台にあったのが、6月末には100円割れとなった。これは新興国リスクに続いて、今度は昨年6月23日の英国の国民投票によりEUからの離脱が決まったことが大きなショックとなったためである。しかし、英国ショックは一時的なものに止まり、さらに不安視された米大統領選挙でも予想外のトランプ氏の勝利はリスク要因というよりも期待要因に変化した。

ドル円は米大統領選の結果、101円台に一時下落したがそこから切り返し、12月15日には118円台に乗せた。実はドル円に関してはここでピークアウトしている。

また、米長期金利も大統領選挙前の1.8%台から12月14日に2.60%近くに上昇したが、この2.6%が壁となった。米長期金利については3月FOMCでの利上げ決定もあり、3月に再度2.6%台をつけるが、やはり跳ね返されている。

米国株式市場に関しては3月1日までは三指数ともに過去最高値を更新するなど絶好調となっていたが、ここから上値が重くなっている。3月1日のトランプ大統領の演説に新鮮味はなく具体性も欠くなどしており、このあたりから期待が剥げつつあった。相場の先導役のひとつとなっていたゴールドマンサックスの株価動向をみるとダウ平均などよりも、ピークアウト感が伺えるようなチャートとなっている。

そして昨年のリスクオフ相場の大きな要因となっていた原油先物の動きについては、すでに昨年2月あたりでボトムアウトしており、WTIは30ドル近辺から6月に50ドル台を回復した。その後売り買いが交錯するが、11月の米大統領選挙を受けて今年初めに55ドル台に上昇した。しかし、ここにきて47ドル近辺まで下落している。

これら一連の動きを見る限り、ひとまずトランプ相場は、アベノミクス相場と同様に原動力となったショートカバーのような動きが収まったことで、ピークアウトした感がある。ここからはあらたな材料を改めて模索するような展開となりそうである。


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# by nihonkokusai | 2017-03-24 09:22 | アベノミクス | Comments(0)

国債償還月の国債の発行日を修正か

 財務省は、国債償還が多い月に発行する国債を対象に、入札から発行までの期間を短縮する検討に入ったと21日にロイターが伝えた。


 国債の決済に関しては、2012年4月23日約定分からT+2に決済を行うようになった。つまり売買約定日から起算して原則3営業日目の日に受渡し・決済を行っている。このため5年債、10年債、20年債、30年債については入札日を含めた3営業日目の日(T+2)が発行日となる。今後はT+1に向けての検討も進められている。


 ただし、3月、6月、9月、12月のいわゆる国債の償還月については、20日が発行日となっている(20日が休日の場合は翌営業日)。


 償還月の発行日が20日となっているのは、償還を迎えた国債への再投資を円滑に進めるなどの理由があった。ただし、これだと入札日から発行日までの期間が大きく空いてしまうことになる。たとえば今月で言えば、3月2日入札の10年国債の発行日は3月21日(20日が祝日のため)である。これに対して2月2日に入札された10年国債の発行日は6日である(土日の4日と5日を挟む)。


 償還月の発行日が20日となっていることで、実は日銀の国債買入にも影響が出ていた。日銀は発行されていない国債を購入することはできない。つまり発行日を過ぎないと買入対象とならないのである。償還月に際しては20日まで日銀が買入対象にできないため、国債を入札した業者は期間リスクを負うことになる。


 また、2年債については償還月等に関わらず、入札日のあった月の翌月15日が発行日となる。これは年金支払いに併せていたもののようである。


 この2年債も含め、償還月の国債の発行日も入札から2営業日後に発行している通常の月と足並みをそろえるようである(つまりT+2に統一する)。これは決済リスクの軽減や償還資金で新発債を購入する需要が薄れつつある現状を踏まえたものとされるが、日銀の国債買入への対応という側面が大きいとみられる。



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# by nihonkokusai | 2017-03-23 09:33 | 国債 | Comments(0)

波乱となった2月の日本国債は誰が売り買いしていたのか

 3月21日に日本証券業協会は2月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

2月の公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスが買い越し
単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 4551(-393、4366、51)
地方銀行 8042(1996、3904、716)
信託銀行 314(-5250、-1398、6798)
農林系金融機関 -3495(-3056、394、0)
第二地銀協加盟行 1619(683、383、50)
信用金庫 1813(2387、32、150)
その他金融機関 8(-237、143、315)
生保・損保 -1534(-3264、1506、214)
投資信託 -225(-106、137、108)
官公庁共済組合 173(-5、69、221)
事業法人 -304(-74、2、11)
その他法人 41(-230、60、651)
外国人 -11210(-2687、3009、-10323)
個人 194(0、29、5)
その他 5682(8707、-2320、986)
債券ディーラー -401(112、-463、91)

 1月の日銀の国債買入で中期ゾーンが1回分スキップされたことで債券市場は荒れた展開となった。2月2日の日銀の国債買入において、市場が期待した超長期債は入らず、5年超10年以下も400億円の増額に止めた。これを受けてある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認していると受け止められ、債券は大きく売られた。10年債利回りは一時0.150%に上昇した。これをみて日銀は通常のオペタイムではなく12時半というイレギュラーな時間帯に「指し値オペ」をオファーした。これにより、日銀は10年債利回りの0.1%を意識していると改めて認識され、超長期債の国債買入の増額などもあり、債券は買い戻された。2月3日に149円28銭まで売られた債券先物は150円台を回復し、28日には150円60銭まで上昇した。10年債利回りも0.1%を割り込んだ。日銀は2月28日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」において、国債買入の日程予定も発表した。

 2月の国債の投資家別売買高をみると都銀は4551億円の売り越しとなっていた。1月の1937億円の買い越しから再び売り越しに転じた。売りは長期ゾーン主体となった。また、地銀も8042億円の売り越しとなり、こちらも長期ゾーン主体に全般に売り越しとなった。地銀によるこの売越額は比較できる1998年以降最大となったようである。信託銀行、農林系金融機関、海外投資家や生損保が超長期ゾーンを買い越していたのに対し、地銀に加え信金などが超長期ゾーンを売り越していた。

 海外投資家は中期債主体に1兆1210億円の買い越しとなってはいたが、1月の2兆3784億円の買い越しに比べて買越額は減少した。海外投資家も都銀同様に長期ゾーンは売り越しとなっていた。

海外投資家の売買状況
月 売買高(マイナスは買い越し)、(超長期、長期、中期)、全体売買高、うち中期

2016年 4月-36565(328、-9142、-27271)、294983、62513
5月-16775(1347、-6186、-10933)、246889、34315
6月-36565(328、-9142、-27271)、344055、65055
7月-16693(1860、-4453、-13200)、275366、61036
8月-16838(-1108、-5390、-9702)、302397、65718
9月-27674(-3320、-4283、-19310)、380542、102124
10月-5717(1051、-5636、166)、264616、62534
11月-11672(2275、-2448、-10674)、302551、48912
12月-26198(-970、2054、-26261)、317612、57609

2017年
1月-23784(-1153、-504、-19500)、294839、61994
2月-11210(-2687、3009、-10323)、292813、51127


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# by nihonkokusai | 2017-03-22 09:49 | 債券市場 | Comments(0)

高橋是清と日本銀行の関わり

高橋是清は明治から昭和初期にかけて活躍した歴史上の人物であり、だるま蔵相と親しまれたが、日銀にも大きく関わっていた人物として知られる。  

進取の気性に富む高橋是清は、森有礼の友人で農商務省次官の前田正名が持ち込んだペルーの銀山開発の話に乗って、農商務省を辞して鉱山経営のためにペルーに赴くものの、騙されて無一文になってしまう。さすがに責任を感じていた前田は高橋に第三代日本銀行総裁の川田小一郎を紹介した。

こうして是清は日銀に入行したが、本人による丁稚奉公から仕上げていただきたいとの希望で、日銀本店新設工事の建設事務主任となった。このときの監督は安田財閥の祖である安田善治郎、そして設計をしたのがのちに東京駅も手掛けた建築家の辰野金吾である。辰野金吾は唐津の洋学校での高橋是清の教え子でもあった。日銀本店工事では高橋是清の力が存分に生かされ、大幅に遅れていた工事はほぼ予定通りに進捗し、この実績が高く評価された。

入行の翌年には全国二番目の支店となった日銀西部支店の初代支店長となり、その後、横浜正金銀行本店支配人となった。横浜正金銀行とは半官半民の特殊銀行で、実質的に日銀の国際金融部門を担当していた。ここで川田日銀総裁は語学に堪能で海外に詳しい高橋是清に国際金融を学ばせた。横浜正金銀行副頭取などを経て、高橋是清は1899年に日銀副総裁に就任した。

日銀の副総裁のときに、高橋是清は日本の境地を救う働きをしている。日露戦争の戦費の調達である。この困難さは十分に承知していながらも、「君をおいてこの任を果たせるものはいない」とまで総理の桂太郎などに言われ、受けざるを得なかった。秘書役として深井英五(のちの第13代日銀総裁)を伴ってロンドンに向かう。高橋是清の人脈による英米金融人の協力もあり、困難といわれた起債を行い、戦費調達を成功させた。この功績により、高橋是清は1905年に貴族院議員に勅選し、1911年には日銀総裁となった。

日銀総裁を1年8か月務めた後は政界に身を投じ、1913年に第1次山本内閣の大蔵大臣に就任、この時立憲政友会に入党する。1918年には政友会の原敬が組閣した際にも大蔵大臣となり、原が暗殺されたことで、1921年に第20代内閣総理大臣に就任した。しかし首相就任から7か月で辞職する。

高橋是清の力が遺憾なく発揮されるのは、日銀総裁や内閣総理大臣となっていたときよりも、このあとになる。1931年9月に12月の犬養内閣の成立にともなって高橋是清が蔵相に就任し、ここで行った政策がアベノミクスのモデルとも言われた高橋財政である。


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# by nihonkokusai | 2017-03-21 09:24 | 日銀 | Comments(0)

正常化に舵を取る欧米の中央銀行とそれが出来ない日銀

15日に開催された米国の金融政策を決めるFOMCでは、追加利上げを賛成多数で決定した。政策金利であるフェデラル・ファンド金利の誘導目標を年0.50~0.75%から0.75~1.00%に引き上げた。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が金利据え置きを主張して反対票を投じた。イエレン議長は「利上げが遅れればリスクになる」と強調し、ドットチャートによる年内利上げの見通しは今回含めて3回という数字が示された。市場では年4回の可能性もあるのではと懸念していたことで、この結果をみてむしろ安堵した。

昨日のイングランド銀行のMPCでは、賛成多数で金融政策の現状維持を決定したが、フォーブス委員が利上げを主張して反対票を投じた。他のメンバーも早期の景気支援策縮小が正当化される可能性を示唆し、イングランド銀行の次の選択肢は利上げとなる可能性が出てきた。ちなみにフォーブス委員は6月に退任する予定となっている。

9日のECB理事会後の会見でドラギ総裁は、ユーロ圏にはデフレリスクはもはや見られないとの認識を示した。デフレリスクへの対応として一段の行動を必要とする切迫性がもはや存在しないことを主に示唆しているとも述べ、デフレ脱却宣言とも取れる発言となった。

16日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策の維持を決定した。景気の総括判断も据え置かれた。黒田総裁は会見で、米国の利上げは国内金利の引き上げに直接的な影響はないとの認識を示した。

FRBの利上げペースは2015年、2016年の年一回から今年はすでに複数回の利上げの可能性が高くなっている。正常化に向けて慎重なスタンスからここにきてペースを早めた格好である。それだけ経済環境が好転していることになるとともに、世界的なリスクの後退も当然影響しているとみられる。

いわゆるリーマン・ショックに代表される米国の金融機関を中心に発生した世界的な金融経済危機、その後、ギリシャを発端とした欧州でのユーロ危機は、とりあえず収束した。しかし、なかなかリスクへの警戒を緩めることはできなかった。

それでもいち早く正常化路線を歩んだFRBがそのペースを速めつつある。EU離脱という選択をした英国も混乱は一時的となり、むしろポンド安で物価は上昇し、株価も上昇した。イングランド銀行も中立姿勢に戻しつつあり、正常化にむけたタイミングを計っている。日銀と同様に緩和政策に前傾姿勢をとっていたECBも、ここにきてやっと中立姿勢に戻そうとしつつある。そのなかにあって日銀だけがいつまでも非常時の体制を維持し、かなり無理な緩和策を継続し、緩和に前向きな姿勢を崩そうとしていない。

中央銀行の金融政策で物価を能動的に動かすことはかなり困難であることは、日銀の異次元緩和の進み方と物価の動向を重ねれば明らかで、それならば今度は財政でというような妙な意見まで出ている。それほど無理を重ねて物価を上げようとする前に、なぜ日本の物価は上がりづらいのか。日銀が目標としている消費者物価をあらためて分析する必要もあるのではなかろうか。といってもこれは日銀が実は一番良くわかっている問題でもあり釈迦に説法か。日銀自体、大量に長い期間の国債を買うことで物価が上がるというロジックは通用しないことはわかっていたはずである。

ここにきての欧米の物価上昇も中央銀行の金融緩和が効いているというよりも、世界的なリスクの後退により景気そのものが回復し、心配された新興国経済も思いの外しっかりしていること、そこに原油価格の上昇も影響して生じたものと言えよう。

世界的な潜在リスクは当然、いつも存在する。しかし、現実のリスクそのものは金融市場を見る限り後退しているなかで、中央銀行の金融政策だけが異次元のまま非常時の対応が続けられることに違和感はないのか。違和感だけで済めば良いが、それがいずれマーケットの歪みを生む懸念もありうるのではないか。日銀にはリスクを警戒するあまり、自ら別なリスクを高めているようにも見えてしまう。


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# by nihonkokusai | 2017-03-19 11:52 | 中央銀行 | Comments(0)

ポピュリズムの流れは加速せず、ユーロのリスクは後退か

15日のオランダの議会下院の選挙では、ルッテ首相が率いる中道右派の与党「自由民主党」が8議席減らすものの32議席を獲得し、第1党の座を維持することが確実になったようである。ウィルダース氏が率いる極右政党の「自由党」は、7議席増やして19議席を獲得する見通しで、当初予想されていた倍増には至らない模様である(NHKニュースより)。

英国は昨年6月23日に行われた国民投票でEU離脱を選択した。このブレグジットが「大衆迎合主義」と訳されるポピュリズムの流れと言えるのかはさておき、自国優先主義、アンチグローバルという流れのひとつの象徴的な出来事と言えた。

昨年11月8日に投票が行われた米大統領選挙でのトランプ氏の勝利がその流れを加速させることとなる。トランプ氏はアメリカ第一主義、反イスラムを掲げ、中東とアフリカの6か国の人の入国を制限する大統領令を出している。この大統領令については、3月16日にハワイ州にある連邦地方裁判所が全米で執行の停止を命じる仮処分の決定を出した。

自国優先主義は欧州では反EUとなり、反イスラムは反移民ともなり、これらを極右政党が掲げ、ポピュリズムと呼ばれた。この流れがユーロ圏にどれだけ及ぶのかが、今回のオランダの総選挙の焦点ともなった。ポピュリズムの流れが加速するようなことになると今後のフランス大統領選挙やドイツ連邦議会選挙にも影響を及ぼす可能性があった。

市場ではポピュリズムの流れが加速することで、ユーロというシステムがいずれ維持できなくなるのではとの懸念を抱き、これがリスク要因となった。ところがオランダ総選挙の結果を見る限り、ポピュリズムの流れはあるものの、政権をひっくり返しEU離脱の可能性を探るといった展開にまで発展するような勢いではなかった。オランダの場合は、仮に極右政党の「自由党」が第一党となっても連立を組む相手がおらず、ウィルダース氏が首相になることはないとの見方が強かったことも確かではあるが。

今回のオランダの選挙の結果を受けて、フランスのエロー外相は、「極右台頭の流れを止めたオランダの人たちを祝福する」とツイートしたそうである(NHK)。

フランスの大統領選挙ではウィルダース氏と同様にユーロ圏離脱などを掲げている極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首の動向が注目されている。オランダ総選挙の結果がルペン氏を勢いづかせることは、どうやらなさそうである。英国の国民投票や米国大統領選挙で見られたような、事前の予想が覆されるといったことも今回のオランダの選挙では起きなかった。リスクは完全になくなったわけではないが、ポピュリズムの勢いが懸念されたほどのものではないとなれば、ユーロに対する警戒は後退しよう。これはECBにとっては金融政策の前向きの姿勢を修正しやすくなるものと思われる。


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# by nihonkokusai | 2017-03-17 09:18 | 国際情勢 | Comments(0)
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