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トランプリスクが再燃し金融市場が動揺、バノン氏更迭も解決策にならずか

 南部バージニア州で今月12日、白人至上主義や極右思想を掲げるグループとこれに抗議する市民グループが激しく衝突した上、市民グループに車が突っ込み、女性1人が死亡、30人余りが、けがをした。

 これに対しトランプ大統領は当初、白人至上主義などを明確に非難しなかったが、人種差別への問題意識が十分ではないなどと反発が広がったことから、白人至上主義団体のKKKなどを名指しで批判した。

 ところがトランプ大統領は15日に記者団に対し、「一方のグループは悪かったが、もう一方のグループも非常に暴力的だった。誰も言いたがらないが、私は言う」と述べ、市民グループについても非難した(以上、NHKニュースより)。

 これに関連して製造業諮問委員会と戦略・政策フォーラムのメンバーである企業経営者らが次々に辞任を表明し、トランプ大統領は16日、メンバーの辞任が相次いでいた2つの助言組織を解散するとツイッター投稿。経済界との対立姿勢を強めた。これにより、今後のトランプ政権の経済政策運営が更に困難になりかねない事態を招いた。

 与党・共和党の指導部や経済界だけでなく、陸海空と海兵隊の4軍トップも人種差別への批判の声を上げた。米軍最高司令官の大統領の考えに賛同しないことを示唆した異例の事態となり、まさに四面楚歌の状態に陥っている(日本経済新聞の記事)。

 白人至上主義者らと反対派との衝突に対するトランプ大統領の発言を巡っては、トランプ米政権で経済政策の司令塔を務めるコーン国家経済会議委員長がひどく動揺したとも伝えられ、辞任観測が流れた。ホワイトハウスがコーン氏は同職にとどまるとして噂を否定したものの、政権の混乱で税制改革などの経済政策への期待が一段と後退する事態は免れない。

 17日の米国株式市場でダウ平均が274ドル安と大きく下落したのはこれが要因となった。18日のダウも続落し76ドル安に。米株は3指数が過去最高値を更新するなど米国株式市場は高値圏で推移していただけに、さらに大きな調整が入る可能性もある。  

 バルセロナでの車両が群衆に突っ込むテロ事件を受けての不安も強まり、リスク回避の動きも手伝い17日の米国債は買われ、長期金利は低下した。しかし、トランプ大統領は、側近であるバノン首席戦略官・上級顧問を更迭すると発表、政権混迷の戦犯とされてきたバノン氏を排除することで事態打開を図る姿勢をみせた。これを受けて18日の米国債は買い戻されたが、これで事態が収束するとも思えない。

 さすがに今回の事態は今後のトランプ政権の行方を揺るが可能性が高い。全米各地で反人種差別集会も開かれているようである。トランプ政権の支持率がさらに低下するだけでなく、議会などとの対立色を強め、政策運営がさらに立ち行かなくなる懸念が強まる。


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# by nihonkokusai | 2017-08-20 12:32 | 国際情勢 | Comments(0)

トランプリスクが再燃し金融市場が動揺、バノン氏更迭も解決策にならずか

 南部バージニア州で今月12日、白人至上主義や極右思想を掲げるグループとこれに抗議する市民グループが激しく衝突した上、市民グループに車が突っ込み、女性1人が死亡、30人余りが、けがをした。

 これに対しトランプ大統領は当初、白人至上主義などを明確に非難しなかったが、人種差別への問題意識が十分ではないなどと反発が広がったことから、白人至上主義団体のKKKなどを名指しで批判した。

 ところがトランプ大統領は15日に記者団に対し、「一方のグループは悪かったが、もう一方のグループも非常に暴力的だった。誰も言いたがらないが、私は言う」と述べ、市民グループについても非難した(以上、NHKニュースより)。

 これに関連して製造業諮問委員会と戦略・政策フォーラムのメンバーである企業経営者らが次々に辞任を表明し、トランプ大統領は16日、メンバーの辞任が相次いでいた2つの助言組織を解散するとツイッター投稿。経済界との対立姿勢を強めた。これにより、今後のトランプ政権の経済政策運営が更に困難になりかねない事態を招いた。

 与党・共和党の指導部や経済界だけでなく、陸海空と海兵隊の4軍トップも人種差別への批判の声を上げた。米軍最高司令官の大統領の考えに賛同しないことを示唆した異例の事態となり、まさに四面楚歌の状態に陥っている(日本経済新聞の記事)。

 白人至上主義者らと反対派との衝突に対するトランプ大統領の発言を巡っては、トランプ米政権で経済政策の司令塔を務めるコーン国家経済会議委員長がひどく動揺したとも伝えられ、辞任観測が流れた。ホワイトハウスがコーン氏は同職にとどまるとして噂を否定したものの、政権の混乱で税制改革などの経済政策への期待が一段と後退する事態は免れない。

 17日の米国株式市場でダウ平均が274ドル安と大きく下落したのはこれが要因となった。18日のダウも続落し76ドル安に。米株は3指数が過去最高値を更新するなど米国株式市場は高値圏で推移していただけに、さらに大きな調整が入る可能性もある。  

 バルセロナでの車両が群衆に突っ込むテロ事件を受けての不安も強まり、リスク回避の動きも手伝い17日の米国債は買われ、長期金利は低下した。しかし、トランプ大統領は、側近であるバノン首席戦略官・上級顧問を更迭すると発表、政権混迷の戦犯とされてきたバノン氏を排除することで事態打開を図る姿勢をみせた。これを受けて18日の米国債は買い戻されたが、これで事態が収束するとも思えない。

 さすがに今回の事態は今後のトランプ政権の行方を揺るが可能性が高い。全米各地で反人種差別集会も開かれているようである。トランプ政権の支持率がさらに低下するだけでなく、議会などとの対立色を強め、政策運営がさらに立ち行かなくなる懸念が強まる。


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# by nihonkokusai | 2017-08-20 12:32 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀が長期国債の買入額を減らしても市場は動揺せず

 日銀は8月16日の国債買入のオファーの際、5年超10年以下の買入予定額を前回の4700億円から300億円減額し4400億円とした。

 日銀は7月24日の国債買入で5000億円から300億円減額し4700億円としていたことで、同じ金額の300億円減額となっていたが、市場は今回の減額をサプライズと受け取った。なぜなら減額はいずれあるとしても、200億円として4500億円に戻すとみていたためである。

 2016年当初は5年超10年以下の毎回の買入額が4500億円程度であった。しかし、世界的な長期金利の低下を受けてこの年の7月に4300億円に減額した。そして2016年9月30日にも残存5年超10年以下の買入予定額を4100億円に減額した。

 今年1月27日に日銀は残存5年超10年以下の買入予定額を4500億円と400億円増額させてきた。これは25日の国債買入での中期ゾーンスキップの代わりに、5年超10年以下を増額した格好となった。しかし、1月末に発表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」で残存5年超10年以下の買入予定額の2月初回買入は4100億円と元に戻された。

 ところが、2月3日には残存5年超10年以下の買入予定額を4500億円に戻していた。2日の10年債利回りは0.115%まで上昇していたため、それ以上の上昇を抑えるのが目的とみられた。

 これに対し3日に日銀は残存5年超10年以下の買入予定額を4500億円に増額したものの、市場は元に戻しただけとの読みとなった。ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認していると解釈され、債券が大きく売られた。この急激な利回り上昇を受けて、日銀は指し値オペを実施。5年超10年以下の額を4500億円から5000億円に増額した。

 その後欧米の長期金利の上昇は落ち着いたことから、5年超10年以下の買入予定額を7月24日ら4700億円に減額し再調整し、8月16日にも再調整したが4500億円に戻すのではなく4400億円とした。

 このパターンで行くと来月にも300億円減額し4100億円とすることも予想される。

 8月16日の5年超10年以下の買入予定額の減額による影響は一時的なものとなった。むしろその後、10年債は買い進まれ、債券先物も上昇しており、減額規模はさておき、市場はこの減額はかなり想定していたとみられる。そもそもいまの日本の債券市場は管理相場に近く、売り材料には反応しにくい相場となっていることもあるのだが。


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# by nihonkokusai | 2017-08-18 09:45 | 日銀 | Comments(0)

米国債保有高、日本を抜いて再び中国がトップに

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、今年6月の国別の米国債保有高のトップは中国が日本を抜いて再びトップの座を奪い返した。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」 http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 6月の中国(China、Mainland)の米国債保有高は1兆1465億ドルとなった。2位は日本で1兆908億ドルの保有高となった。上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)

中国(China, Mainland)  1146.5

日本(Japan)  1090.8

アイルランド(Ireland)  302.5

ブラジル(Brazil)  269.7

ケイマン諸島(Cayman Islands ) 254.0

スイス(Switzerland)  244.5

英国(United Kingdom) 237.3

ルクセンブルグ(Luxembourg )211.7

香港(Hong Kong)  202.6

台湾(Taiwan) 184.4

 日本は昨年10月に中国を抜いて米国債保有額でトップとなっていたが、ここにきて中国による米国債保有高が増加してきたことで、中国に抜かれた格好となった。  中国の外貨準備高は6か連続で増加し、7月には3兆ドルを突破し、3兆800億ドルに達した。これが中国による米国債買入の原資となっていることは確かである。為替介入(ドル売り元買い)が減少してきたことも影響しているようである。

 ただし、日本については、8月8日に公表された6月の国際収支の付表によると米債を1兆2429億円買い越しとなっていた。米財務省のデータによると5月から205億ドル減少となっており、違いが生じている。米国債国別保有残高は後ほど修正が加えられることもあるため、注意も必要か。


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# by nihonkokusai | 2017-08-17 09:39 | 国債 | Comments(0)

金融緩和で物価が上がらないなら財政でという安易な発想

 日銀が現在行っている金融緩和策のバックボーンには、いわゆるリフレ派と呼ばれる人達の考え方がある。リフレーション(リフレ)とは、 中央銀行が世の中に出回るお金の量を増やし、人々のインフレ期待を高めることでデフレ脱却を図ろうとする金融政策のことを示す。リフレは通貨再膨張と訳されている。

 ただしリフレ的な発想には暗に財政拡大も絡んでいる。政府は財政再建等を行わず、さらなる借金をしても(国債を増発しても)財政を拡大させ、その国債を日銀に引受させる格好で金融緩和を行い、それによって景気は拡大し物価も上がる。景気拡大による税収増によって借金は返済できるといった発想となる。これはいわばフリーランチ的な発想ともいえる。

 日本の債務がGDPの倍以上となっており、この数字そのものはまさに危機的な状況にある。ただし、政府は多額の資産も保有しており、実質的な債務はそれほど多くないとする意見もリフレ派にみられる。さらには日銀が保有している国債は、日銀が国の機関であるため相殺でき、債務をそれほど心配する必要はないとの意見もリフレ派からは聞こえる。

 そうであればなぜ、欧米の国々が中央銀行の国債引受を禁止しているのであろうか。中央銀行が国債を買い入れれば債務は実質増えないのであれば、税金など取らずに大量の国債を日銀に保有してねもらえば済むことである。なぜ世界の国々はそれをしていないのか。

 ここまで国が債務を拡大しても全く問題なかったため、さらに財政を拡大させて国債残高を増やしても問題はない、と本当に言えるのか。日本政府の債務はそのほとんどを国民の金融資産で賄われているので問題ないといえるのか。政府が債務を放棄すれば我々の金融資産はどうなってしまうのか。

 そして政府による財政拡大で本当に税収が増えるのか。GDPギャップをそれでカバーできるのか。それはこれまでさんざん試してきたことではなかったか。税収を大きく増加できる財政政策は高度成長期などであればまだしも、低成長期にはかなり難しくなる。

 単純に財政を拡大すれば景気が回復し物価が上がるとの発想も、大胆な緩和で物価が上がるという発想とあまり変わりはない。結果は出ずに国の債務だけ増加し、日銀は出口も見えない状況に追い込まれ、世界第二位の市場規模を誇る日本の債券市場が機能不全に陥るといった状況が続く。政府もそろそろこのフリーランチ政策とは距離を置いて、現実と向き合った政策に修正すべきだと思う。


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# by nihonkokusai | 2017-08-16 09:56 | 財政 | Comments(0)

アベノミクスに相当な成果があったとする見方への疑問

 10日の日経新聞の大機小機に次のような記述があった。

 「アベノミクスの4年半を振り返ると、景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げたと評価できる。非伝統的な金融政策が威力を発揮したといえる。」

 2013年4月に安倍政権の意向を汲んで決定されたのが、日銀による大胆な緩和策、量的・質的緩和策である。これは異次元緩和とも称され、出口政策のことなどはおかまいなく、大胆に国債を大量に買い入れて、マネタリーベースを増加させて、物価目標を2年程度で達成しようとしたものである。

 中央銀行の金融政策は、あくまで金融市場を通じて経済や物価に働きかけるものである。その甲斐あってか長期金利は低位のまま推移し、マイナス金利政策により一時マイナス圏にまで低下した。外為市場にも働きかけた格好となり、ドル円は急減に上昇し、これが株高を誘発した。

 しかし長期金利は抑えられても、外為市場での円安に対する働きかけは一時的なものとなった。財務省が管轄の為替介入も実施されず、日銀の大胆な緩和策により、欧州不安の後退のタイミングで、大きな円買いポジションがひっくり返されての投機ポジションを含む、一時的な円安にすぎなかった。

 それでも雇用は大きく改善している。物価も一時のマイナスからプラスを回復している。景気についても低空飛行ながら改善している。それは果たして日銀の異次元緩和による効果と言えるのだろうか。

 原因と結果を結びつけるには、その間にある経路についてもしっかりした説明が必要になろう。アベノミクスの大きな柱となっていた日銀の異次元緩和は、どのようにして雇用の回復に影響したのか。大きな金融経済危機の後退含めた海外要因、さらには2020年のオリンピックを睨んだ国内要因など、日銀の金融政策以外の要因を除いて、金融緩和効果がどれだけ残っているといえるのか。

 そもそも日銀は物価目標を達成させることで、デフレを解消させ、それが景気回復要因となり、雇用も改善し、賃金も上昇するというシナリオを描いていたのではなかったのか。

 肝心の物価目標2%がまったく達成の兆しがないことは、それはつまりアベノミクスの中心となっていたリフレ政策が雇用を含めて景気を改善させるというシナリオそのものに間違いがあった可能性はなかったのか。

 アベノミクスが景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げたと評価するのも勝手ではあるが、非伝統的な金融政策が威力を発揮したとの結論はどこからくるのか。少なくとも物価目標を達成していないという事実はどのように評価するのか。

 安倍政権の支持率低下には、いろいろな要因があると思われるが、そのひとつとしてアベノミクスという経済政策への疑問も含まれているのではなかろうかと思う。当初は華々しく見えたものが、日銀は無理に無理を重ねる結果となっており、むしろその副作用も意識されつつある。そのあたりも支持率に影響を与えていると見てもおかしくはないと思われる。


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# by nihonkokusai | 2017-08-11 09:27 | アベノミクス | Comments(2)

北朝鮮リスクに東京市場も動揺

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は8日、北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭の生産に成功したとの機密分析を米国防情報局(DIA)が7月にまとめたと報じた。北朝鮮が保有する核弾頭は従来の推定よりも多い最大60発と見積もった(日経新聞電子版)。

 これに対し米国のトランプ大統領は8日、北朝鮮は米国への脅迫行為を続けるべきではないと明言し、さもなければ「世界が未だ目にしたことのないような炎と怒りに直面するだろう」と述べた(ロイター)。

 北朝鮮の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)戦略軍の報道官は8日、米領グアム島の軍事基地を弾道ミサイルで包囲射撃する作戦を計画しているとする声明を発表した。

 ここにきて膠着感が強まっていた東京市場ではあるが、北朝鮮による地政学的リスクがこれら一連の報道であらためてクローズアップされてきた。

 北朝鮮の地政学的リスクが意識され、9日に外為市場でドル円は再び110円を割り込んできた。日経平均は一時、300円以上も下落した。北朝鮮のICBMがグアムの米軍基地を狙っており、そこには核弾頭の搭載も可能となれば、地理的にさらに近い日本への影響も当然出てくる。それが何故、円買いとなるのかは条件反射的な動きとしか言いようがない。しかし、このリスクが現実味を帯びてくれば、いずれ円売り要因に変化することもありうるか。

 果たして北朝鮮は何をしたいのか、これに対して米国がどのような対処をしてくるのかも読めない。いまのところ軍事衝突の可能性はそれほどは高くないとの認識が、円売りではなく円買いの動きが示しているのかもしれない。ただし、外為市場では韓国ウォンなど中心にアジアの通貨は下落した。

 ただし、公約の経済政策は打てず、支持率の低下しているトランプ政権が、情勢打開を狙って、軍事行動によって国民の目を経済対策からそらせるといった手段を取らないとも限らない。しかし、そのためには政権内の結束も必要であろうが、それもおぼつかないことも確かである。

 いまのところ、北朝鮮と米国の威嚇の応酬がどのような結果を招くのかは読みづらい。日本でも核シェルターが売れているようだが、米国がリスクを冒してまで軍事行動に踏み切れるのかも疑問ではある。米政権当局者からトランプ大統領の北朝鮮に対する発言について、計画された発言ではなく、自発的なものだったとの発言も聞こえた。それでも北朝鮮からの度重なる挑発行動に対して、何らかの行動をトランプ大統領が指示することは可能性としてありうる。

 あらたな地政学的リスクの先が読めない。それだけにブラックスワン的なリスクも含むことになる。日本のお盆の時期は、年末年始と同様に国内投資家の参加が少ないだけに、海外投資家による仕掛け的な動きが強まることがある。今回も不透明な材料が出てきたことで、膠着感を強めている東京市場がさらなる動揺を見せる可能性もあり、注意したい。


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# by nihonkokusai | 2017-08-10 10:03 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀の金融政策の効果だけ強調するのはいかがなものか

 7月23日に審議委員の任期を終え、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストに就任した木内登英氏は4日にブルームバーグとのインタビューで、「いろいろな副作用があることを人々が心配している時に、効果だけ強調する情報発信は問題が大きい」と指摘した。

 果たしていろいろな副作用があることを市場関係者以外でどれだけ認識されているのかは不透明ながら、市場関係者を中心にその副作用を心配していることはたしかである。

 その副作用としては、日銀がマイナス金利政策や大量に国債を買い入れてしまうことで、国債の利回りを押しつぶし、その結果金融機関による資金運用が難しく、収益性の悪化を招いていることがまずあげられる。

 さらに国債市場が機能不全をおこしており、経済や物価の体温計としての役割を果たさなくなったこと。金利がついたり、国債価格が大きく動くということを経験できず、市場参加者の経験値が不足してしまうこともある。それ以上に債券市場の機能低下で参加者そのものが減少してしまうリスクもある。

 大量の国債発行が続いても日銀が大量に国債を買い入れることで、財政規律が緩む懸念が生じるとともに、このまま大量に中央銀行が国債を購入しつつけることで、マネタイゼーションへの懸念が何かのきっかけで生じるリスクもある。

 国債利回りが異常なほど低下しているということは、国債の利回りと価格が反対に動くことで、それだけ異常な国債価格が形成されているということで、ある意味、国債はバブル相場となっているともいえる。いずれこの反動が出る懸念もある。

 それに関係して、日銀の異次元緩和の出口問題も生じることになる。FRBの出口政策はいまのところ、うまくいっているように見えるが、物価目標が達成できないためとして長短金利操作付き量的・質的緩和という長いネーミングの政策を行ってしまっている日銀にとって、出口政策はかなり困難にみえる。市場を動揺させずにうまく出口を模索できるという保証はない。

 以上のような副作用が懸念されるなか、日銀は物価目標達成はさておき、金融緩和による効果が出ていることを強調するのはいかがなものかと木内氏はコメントしている。まさにこれは同意である。日銀が強力にマーケットに働きかけているのの、物価には影響を与えず、それでも一定の効果があると主張していることは、人々に誤った認識を与えかねない。金融政策にまったくの効果がないとはいわないまでも、もう少し現状に向き合った発言も必要ではなかろうか。

 ちなみに、木内委員は、こうした姿勢を軌道修正するきっかけは「人が変わること」であると述べている。これも同意であるが、その人というのは日銀にいる人ではない、とも思うのであるが。


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# by nihonkokusai | 2017-08-09 09:43 | 日銀 | Comments(0)

先日の米雇用統計は利上げの判断材料にはなりにくい

 7月4日に発表された7月の米雇用統計では、非農業雇用者数は前月比20.9万人増となり、18万人増程度との予想を上回った。失業率も4.3%と前月比0.1ポイントの改善となり、16年ぶりの水準となった。平均時給も前年同月比で2.5%増となり、こちらも予想の2.4%増を上回った。

 雇用統計を受けて米国債券市場で米債は下落し、10年債利回りは2.26%と前日の2.22%から上昇した。米10年債利回りはここにきて低下基調となっており、少し戻したに過ぎなかった。これによってトレンドが変わったようにも思えない。

 米国株式市場では、米長期金利の上昇などから金融株主体に買われ、ダウ平均は66ドル高と8日連続の高値更新、ナスダックも11ポイントの上昇となった。主力ハイテク株によりナスダック主体の上昇から、そのハイテク株に戻り売りが入ると、今度は好決算銘柄主体に買われてダウ平均が上昇するなど、うまく買い回転が効いている状態となっている。

 ドル円は7月11日に114円台をつけたあたりでいったんピークアウトし、110円割れたところでいったんボトムをつけた格好となっている。今年に入ってからのドル円のチャートをみると4月に108円台まで下落する場面はあったが、110円から115円のレンジ内にほぼ収まった格好となっている。これに対してユーロドルをみると今年に入ってからはほぼ一貫して上昇基調となっている。

 少なくとも今回の雇用統計の数字は、FRBの年内利上げを後押しする材料とはなろうが、市場参加者は雇用よりも物価動向を気にしている。8月1日に発表された6月の米PCEデフレーターのコア指数は前年同月比1.5%上昇と5月と変わらずとなり、2%に届いていない。

 さらにトランプ政権の行方も不透明感を強め、経済政策についてもまったく進展を見せておらず、これも利上げの行方を不透明にさせている。ここにきて原油先物が50ドルを割り込むなど、原油価格の上値の重さもやや物価をみる上では懸念材料となろう。

 次回9月のFOMCにおいてバランスシート縮小を決定することは規定路線となっているとみられるが、12月の利上げの有無については、今後発表される物価指標次第となる。イエレン議長も足元の物価の低迷は一時的なものとの見方をしている。それが確かめられれば、12月の利上げの可能性は高まる。しかし、物価の低迷が一時的なものではないとなれば、利上げが先湯送りされる可能性がある。そのあたり今回の雇用統計は判断材料とはなりにくいため、市場の反応が限られた面もあろう。


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# by nihonkokusai | 2017-08-08 11:22 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行の利上げに向けた姿勢に変化なし

 8月3日に開催されたイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、政策金利を年0.25%に据え置くとともに、資産買い入れ枠も据え置いた。これは6対2の賛成多数での決定となった。

 前回のMPCでは、利上げを主張し続けていたフォーブス委員に加え、マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わった。その後、フォーブス委員は退任したことにより、今回の利上げ派はマカファーティー、ソーンダーズ両委員となった。

 ちなみにチーフエコノミストのホールデン(ハルデーン)理事からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識が示されていたが、同理事は今回も現状維持派のままであった。

 また今回、欧州連合(EU)離脱が経済を下押しする恐れがあるとして、成長率と賃金の伸び見通しを下方修正した。また、物価見通しについても5月の見通しからやや下方修正した。

 これを受けて市場ではイングランド銀行は容易には利上げはできないとの見通しが強まり、外為市場でポンドが売られ、ロンドン株式市場はこのポンド安から上昇し、英国債は買い進まれた。

 ただし、カーニー総裁は記者会見で「持続的な物価上昇が達成できる状況になれば、金利の変更を決めることになる」と述べ、将来的な利上げの可能性を示唆した。

 今後1年以内に利上げを開始し、向こう3年間に投資家が予想しているよりも若干高めに政策金利を引き上げる可能性があることも今回の会合では、示唆されていた。

 カーニー総裁は6月27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、中銀は利上げを実施する必要が出てくる可能性があり、金融政策委員会(MPC)はこの件について向こう数か月以内に討議すると述べていた。

 ここにきて急にEU離脱による経済金融リスクが高まったわけではない。当然ながらその懸念も意識した上で、今後の利上げのタイミングを探る姿勢に変化はないとみられる。少なくとも今回が利上げを探るタイミングではなかったとの見方もできるのではなかろうか。

 年内のMPCは9月、11月、12月に予定されている。FRBは9月に保有資産の縮小開始を決定し、12月の利上げを模索しているとみられている。そうなると外為市場での影響を抑えるためにも、イングランド銀行も9月と12月のMPCで政策変更の可能性を探ることもありうるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-08-06 11:39 | 中央銀行 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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