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「アリとキリギリス」

 財務省のホームページに2月6日の「菅財務大臣記者会見」の概要がアップされた。

 財政の問題については菅大臣は、「日本は間違いなく債務残高ではオリンピックであれば金メダルが取れるぐらいの立場にあることはご承知の通りです」と発言し、世銀の増資などの資金的拠出もそう簡単ではないことを示したそうである。しかし、オリンピックを控えているとは言え、金メダルとの表現はいかがなものであろうか。

 また、日本の財政状況について、「日本の状況はきちんとお伝えをしました。率直に言って、もっと話題になるのかなと思いましたが、どちらかと言えば、ヨーロッパのほうで問題になっているギリシャの問題が多く色々と意見交換されまして、結果として日本の財政赤字そのものを問題にする意見というか、やり取りは殆どというかありませんでした。」

 これは日本の財政への他のG7諸国の関心の低さを示しているのか、それとも日本の財政の話題が出なかったことでそれほど懸念されていないことを示したかったのか。

 「今、来年度予算の国会審議をやっておりますけれども、もちろん年度内成立を目指しているわけで、年度内成立、その前に衆議院を通さないといけないわけですが、衆議院の通過という、それぞれのハードルを越える中ではですね、そうした中長期の展望を今年の半ばには出せるような一つの準備に入りたいと、このように考えています。」

 この発言内容を見る限り、菅財務大臣が日本の財政再建に向けて本気で取り組もうとしているのかやや疑問である。「中長期の展望を今年の半ばには出せるような一つの準備に入りたい」という表現は菅さん独特の言い回しなのかもしれないが、これでは、とりあえずやっては見るけどといった対応にしか感じられない。

 日本の財政は確かに「今そこにある危機」ではない。しかし、まだ余裕があるうちに手を打っておかなければ、あとで取り返しがつかなくなる。冬の準備を怠らないアリと、なんとかなるさと気軽に構えたキリギリスの話を思い起こしてしまうのだが。
# by nihonkokusai | 2010-02-10 10:00 | Trackback | Comments(0)

「2009年の経常黒字は2年連続で減少」

朝方、財務省が発表した2009年の経常黒字は前年比18.9%減の13兆2782億円となり、2年連続で減少した。

「貿易・サービス収支」の黒字幅が拡大したものの、「所得収支」の黒字幅が大幅に縮小したことから、経常収支の黒字幅は2年連続で縮小した。海外子会社の不振による配当の減少や円高で所得黒字が22.2%減の12兆3229億円と、比較可能な1986年以降で最大の減少率を記録した。所得黒字の減少額も3兆5185億円と過去最大。

2009年12月の経常黒字は前年同月比452.8%増の9008億円と5か月連続で前年を上回った。「所得収支」の黒字幅が縮小したものの、「貿易収支」が黒字に転じたこと等から、経常収支の黒字幅は拡大した。貿易収支が6312億円の黒字(前年同月は1959億円の赤字)に転じた。
# by nihonkokusai | 2010-02-08 10:52 | Trackback | Comments(0)

「米国はトリプルA格付けを失う危険性はないのか」

ガイトナー米財務長官は7日に放映されたABCテレビとのインタビューで、格下げを懸念しているかとの質問に対し、米国は最上級の「トリプルA」格付けを失う危険性はない「絶対にない」と述べ、「そうした事態は米国には決して起こらないだろう」との見解を示した(ロイター)。

同長官は、世界の安定性に懸念が生ずるときはいつも世界の投資家は米国債とドル建て資産に向かうものだと述べ、これは米国と米経済の回復力に対する「基本的な信頼感」の表れだと指摘した(ロイター)。

米格付会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは先週、今後10年間に見込まれる財政赤字の削減に向けて追加策が講じられなければ、米国債の格付けは将来的に下押し圧力にさらされるとの見方を示した。

果たして、世界の安定性に懸念が生ずるときはいつも世界の投資家は米国債とドル建て資産に向かうという図式はこれまで通りに通じるものなのであろうか。質への逃避先として米国債に資金が向かうことは確かかもしれないが、ドルそのものについてはやや動きが異なりつつあるように思われる。

また、米国債そのものも米国債の売却は考えたくなったとしても実行に移すことは考えにくい日本よりも、中国の保有が大きくなっている。対米関係を意識すれば中国が保有の米国債を手放すことは考えづらい。しかし、日本よりもそのあたりはフレキシブルのようにも考えられる。

日本国債についてはその94%が国内投資家の資金で賄われていることで格付会社の格下げの影響は受けにくい。しかし、海外投資家の保有比率が半分近くになっている米国債は格下げの影響をもろに受ける。世界経済への影響も大きい。

格付会社大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスもS&Pも米国の会社である。日本国債をこのムーディーズとS&Pが格下げした際に、国内の格付会社は日本国債の格付は最上級を維持したままであった。同様に米国債をムーディーズとS&Pが格下げすること自体は考えにくい。

しかし、財政悪化の歯止がかからなければ、「絶対にない」という保証もないことも事実であろう。しかし、財政悪化の歯止という面では日本の方がブレーキがかかりにくいことも確かである。まずは米国で財政悪化の歯止に向けての姿勢を示し、行動を伴うことで、米国債の格下げという事態米を国には決して起こさないようにすべきである。もちろんこれは日本も同様であろうし、財政悪化は日本の方がひどい状況になっている。日本の財務大臣が格下げなど「絶対にない」といえるような状況を生み出すことがまず求められる。
# by nihonkokusai | 2010-02-08 10:51 | Trackback | Comments(2)

さらに悪化傾向が予想される日本の財政

財務省は4日に「平成22年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」(http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h22/sy2202a.htm)と「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」(http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h22/sy2202b.htm)を発表した。「平成22年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」では、2011年度以降に実施の可能性がある新規施策については加味せずに一定の経済前提を仮置きした上での試算を示した。

経済指標の前提として名目経済成長率を2010年度が0.4%、2011年度1.7%、2012年度2.0%、2013年度2.2%。CPIがそれぞれマイナス0.8%、マイナス0.5%、0.0%、0.5%。長期金利が2.0%、2.2%、2.4%、2.6%。

この経済前提において、歳出削減や増税など歳入構造の見直しがなければ、歳出から税収とその他税収を除いた差額が、2010年度が44.3兆円、2011年度51.3兆円、2012年度52.2兆円、2013年度55.3兆円に拡大していくことを示している。

税収についてはそれぞれ37.4兆円、38.7兆円、39.7兆円、40.7兆円となっており税収と差額(新規国債発行額)の逆転現象が継続される見通しとなっている。その他収入はそれぞれ10.6兆円、3.9兆円、4.2兆円、4.2兆円とすでに埋蔵金頼みにも限度があることを示している。

また2011年度以降金利が変化した場合の国債費の増減額について、長期金利が1%上昇した際に2011年度で1.1兆円、2012年度で2.6兆円、2013年度で4.3兆円膨らむ試算になっている。

今度は「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」を見てみると、年度末の公債残高は2011年度で680兆円、2012年度で732兆円、2013年度で770兆円規模に膨らむことで、長期金利上昇による国債費の増加は年々大きくなることが予想される。ちなみに「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」では2019年度までしか計算結果が示されていないが、その2019年度末の公債残高は968兆円と1000兆円に近づく試算となっている。
# by nihonkokusai | 2010-02-05 10:23 | Trackback | Comments(0)

「日銀の足元景気の見通し」

1月26日の日銀金融政策決定会合後に発表された「当面の金融政策運営について」から、12月18日に発表されたものと比較しながら、日銀による日銀の足元景気の見通しについて見てみたい。

(1月26日発表分) わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなりつつある。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。

(12月18日発表分) わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。企業の業況感は、製造業大企業を中心に、緩やかに改善している。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなりつつある。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落している。

「新興国の回復」を「新興国経済の強まり」と新興国経済の堅調さをさらに強調している。29日の白川総裁の講演においても、新興国・資源国の急速な景気回復について述べており、人口が増加する中で、生活水準向上に伴う消費活動の活発化や社会インフラ整備の必要性など、もともと内需の潜在的な力が強いことを挙げている。 設備投資については「下げ止まりつつある」と変化はなかったが、29日の白川総裁の会見では、「設備投資の水準が相当下がっているだけに、輸出や生産の増加が続けば、稼働率の上昇に伴い、設備投資は下げ止まりから増加に転じていく」と指摘している。 また「当面の金融政策運営について」の物価面では、1月分に「石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している」とのコメントを加えた。

(1月26日発表分) 先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。

(12月18日発表分) 先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。

経済の見通しに変化はなかったが、29日の講演で白川総裁は国内景気について、「雇用・賃金面の調整圧力が残ることから、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースも緩やかなものとなる可能性が高いと考えています。その後は、米欧のバランスシート調整が相応に進捗し、国内でも、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくると予想されます」と発言している。

「当面の金融政策運営について」での物価面については、前年比下落幅は縮小の要因として、12月の「石油製品価格などの影響が薄れていくため」から「マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから」に変化させている。

ただし、白川総裁は講演で「出発点としての需要不足がかつてないほど大きく、先行きの景気回復のペースも緩やかなものになると見込まれるため、物価の下落圧 力は、ある程度長い期間に亘って残ると思われる」と指摘している。
# by nihonkokusai | 2010-02-04 09:30 | Trackback | Comments(0)

底が見えない恐怖感から先が見えない不安感へ

日銀の白川総裁は1月29日に内外情勢調査会において「最近の金融経済情勢と金融政策運営」と題する講演を行なった。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1001a.pdf

現在の日本経済について、「底が見えない恐怖感」は去ったとはいえ「先が見えない不安感」は依然として大きい状況、との表現はなかなか言い得ている。株式市場でも「底が見えない恐怖感」は去ったものの、経済ばかりでなく政治や財政の悪化についても「先が見えない不安感」があり、上値が抑えられている。

リーマン・ショック後の金融市場で取引相手に対する信認が大きく崩れ、経済活動に必要な資金が行き渡りにくくなった。意図せざる金融引き締めが世界的な規模で突 然起きたことで、支出を控える動きが広がり。その結果、世界の需要が瞬間的に蒸発した。需要蒸発の影響を最も受けたのは、資本財や耐久消費財であり、自動車や電機、一般機械など日本が得意とする分野を直撃した。

ただし、世界経済は昨年春頃には下げ止まり、現在は回復の段階に入っている。回復の主体は新興国ないし発展途上国であり、2010年の成長率に占めるこれらの国の寄与は7割にも上っている。

新興国・資源国の急速な景気回復についての要因としては、まず人口が増加する中で、生活水準向上に伴う消費活動の活発化や社会インフラ整備の必要性など、もともと内需の潜在的な力が強いことを挙げている。さらに新興国・資源国においても、今回の危機に対応するため、積極的な景気対策を実施したこと、そして先進国内では十分な投資機会を見出せないリスク・テイクの資金が新興国・資源国に大量に流入していることが挙げた。

しかし、米欧などの先進国経済は、急激な収縮からは持ち直したものの、依然として自律回復力は弱い状態が続いている。これはリーマン・ショックの背景に、バランスシート調整という構造的な問題があったためである。

バランスシートを修復する作業は、世界経済が持続可能な成長経路に復帰していくために避けては通れないプロセスだが、その間は経済に対し下押し圧力がかかり続けることを認識する必要があると総裁は指摘している。

今回の回復過程で大きな役割を果たした金融政策と財政政策については、中央銀行が金融市場に資金を供給する際の政策金利自体は下限で張り付いていても、金融市場の安定化を促すことを通じて、金融緩和が実質的に強化されたと指摘。

財政政策の役割も重要だったとしながら、同時に財政赤字は拡大し、政府債務残高は著しく増大した。政府は民間のリスクや債務を肩代わりしたが、国際金融市場の参加者は財政赤字や財政規律の問題にも大きな関心を払うようになってきたと指摘している。

これに関連し興味深いとして総裁が指摘したのが、FRBが昨年3月から10月まで行った国債の買入れであった。

FRB は、実施に当っては、この買入れが中央銀行による財政ファイナンスや長期金利の特定水準への誘導を目的としたものでないことを繰り返し強調。FRBによる買入れ規模は日銀の国債買入れと比較すると、経済規模との対比では日本よりもはるかに少ないものであったにもかかわらず、中央銀行として通貨コントロールへの信認確保をそれだけ重視していたように思われる。

どうやら、今後の日本の財政悪化にともなって日銀の国債買入増額要請が出る可能性があるが、そのための予防線をやんわりと張った指摘のように思われる。
# by nihonkokusai | 2010-02-03 09:33 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

「中期財政フレーム策定はまとまるのか」

 菅副総理兼財務相は、日本経済新聞のインタビューで、2011年度予算で社会保障関係費だけで、約6兆円の追加財源を探す必要があるとの見通しを示した。特別会計などを徹底的に見直すと述べ、マニフェストの見直しにも言及した。

 そして、野田財務副大臣はNHK番組で子ども手当の満額支給は難しいとコメント。ところが、菅副総理兼財務相は朝日新聞のインタビューで、子ども手当の満額支給について、やるといったら、やらないといけないと話し、野田副大臣の発言に対して、そんなことを率直に言うのは間違いだとコメントした。

 政府はこれから中期財政フレームを6月までに策定するが、増税などは慎重姿勢となっている。歳出の削減もなかなかむずかしいだけに、政府は今後、どのような対応をしてくるのか。欧州でもギリシャだけでなくスペインやポルトガルの財政悪化が懸念されるなど、世界的にソブリン・リスクが注目されており、日本における中途半端な財政再建策では市場にも影響が出る可能性もある。

 財務大臣と副大臣にこのような意見の違いが明らかになるなどしており、納得できる中期財政フレームが果たして策定できるのか。景気を良くしなければ税収は伸びない。しかし、これ以上の財政悪化は日本国債の信用悪化を招きかねず、国内投資家も慎重姿勢にさせる可能性がある。国債の安定消化に支障が出れば、政府も身動きが取れなくなるはずである。なかなか厳しい状況にあればこそ、知恵を出し合う必要があるが、民主党政権は一丸となって対処するような姿勢が見られないところに、大きな懸念もありそうである。
# by nihonkokusai | 2010-02-01 10:04 | 国債 | Trackback | Comments(0)

「国債の決済」

 国債の決済に関しては、1995年時点ですでにアメリカ、イギリスなどは約定日から起算して2営業日目(T+1)つまり翌日決済を行っていたが、当時日本ではまだ特定日決済の5・10日決済をおこなっていた。ちなみに「特定日決済」とはある期間に約定された取引の決済をすべて特定の日に行う決済である。これに対して取引を常に約定日から一定期間経過後に決済するのは「ローリング決済」と呼ばれる。

 その後日本でも1996年9月19日の売買分より、約定日から起算して8営業日目(T+7)に決済を行うローリング決済に移行し、1997年4月21日売買分から約定日から起算して4営業日目(T+3)に決済を行うことになり、現在に至っている。

 1988年に日銀ネットが稼動し、日銀の当座預金を用いた金融機関同士の資金決済や国債決済が日銀ネットを通じて行なわれている。金融機関同士が行う資金取引の決済や国債など証券取引の代金の決済や、民間決済システムの最終的な決済に、日銀の当座預金での振替が利用されている。日銀が金融機関との間で行っているオペレーションや貸出し、国庫金の受払い、国債の発行・償還に伴う資金の受払いなどについても、日銀の当座預金を介して決済が行われている。日銀はこうした資金や国債の決済が安全かつ効率的に行われるようにするために、コンピュータ・ネットワークシステムを構築し、これが「日銀ネット」とも呼ばれる日銀金融ネットワークシステムである。国債の入札も日銀ネットを使っている。

 そして、証券と資金の振替が同時に行われる決済方式であるDVP決済(DVP、Delivery versus Payment)が1994年に導入された。これは資金の受払いと国債の受渡を相互に条件付け、一方が行われない限り他方も行われないといった仕組みである。

 また、2001年からは国債決済にRTGS(即時グロス決済)(RTGS、 Real-Time GrossSettlement)が導入された。システミック・リスクに対応するため、日銀ネットを使った決済については、1日の決まった時間に多くの受払いを、まとめて受払差額のみを決済する方式(時点ネット決済)から、個別に随時決済を行うRTGS(即時グロス決済)という方式に一本化していている。RTGSによる決済では、1件ずつ即時に決済を行うため、ある金融機関で決済不能が生じても、その影響を受けるのは取引相手の金融機関だけとなり、そこから連鎖的な決済不能といった事態は回避できる。

 2005年5月からは日本国債清算機関の業務が開始され、国債の決済に対してのリスクはかなり軽減されている。日本国債清算機関(JGBCC:Japan Government Bond Clearing Corporation)とは、国債決済が従来の時点決済からRTGS(Real Time Gross Settlement)決済に移行し、その後、欧米並みの清算機関創設の機運が高まり声が、国債市場の主要プレーヤである証券会社・銀行・短資会社等の共同出資により2003年10月に設立されたものである。

 現物国債のほとんどが店頭で取引されており、約定から決済に過程は、約定から照合、そして清算、決済といった流れとなっている。清算機関が創設される以前は、清算がないまま各当事者が相互に日銀ネット上で決済を行なっていた。しかし、清算機関が創設されたことにより、参加者同士の取引に関わる決済は、原則に日本国債清算機関に集約され、清算(ネッティング)を経て決済を行うことが可能となったのである。つまり参加者は決済上の相手方リスクを負うことなく、ネッティングにより決済量を大幅に減少させた上で、安全かつ効率的に決済することが可能となっている。
# by nihonkokusai | 2010-01-29 13:25 | Trackback | Comments(0)

「国債の流動性リスク」

債券など金融商品には流動性リスクというリスクが存在します。これは市場リスクとも呼ばれ、市場における売買が円滑に行われなかったことにより、期待していた収益が得られなくなるリスクのことです。

債券などの金融商品は、いつでも売りたいときに売れて買いたい時に買えるかどうかという点が重要です。国債のように流動性に優れているものであれば、通常は適正な水準で必要な金額を売買することが可能です。国債市場は一度に数千億円という売り買いすらこなせる市場になっているため、国債の流動性はかなり高いといえます。国債は現金に次ぐ流動性を誇っているとも言われ、これも国内の金融機関が積極的に国債を購入する大きな理由ともなっています。

それに対し、発行額の少ない債券などは希望する価格で売れなかったり、買い手が見つからないといったことが現実にありえるのです。国債でも発行額が比較的少なかく、買い手が偏在していた15年変動利付国債や物価連動債では、なかなか買い手が出てこないなど流動性リスクの問題が生じたことがありました。

また、取引の相手方に経営不安説が流れたり、システムが故障で停止したりするなど、なんらかの特殊事情によって決済が滞ってしまうリスクも流動性リスクといえます。そのひとつの典型例としてリーマン・ショックが上げられるます。

2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻の際に、「正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する」旨を発表したことで、約定済みの国債取引が一切履行されないという非常事態が発生しました。

この結果、リーマンが国債取引について引き起こしたデフォルトの規模は、2008年9月の予定分だけでも約7兆円規模に上ったのです。これによりリーマンと決済を予定していた相手先では、ポジション再構築(リーマンから引渡しを受けられなかった国債の調達及びリーマンに引き渡す予定であった国債の売却処分を余儀なくされたのです。また、リーマンから引渡しを受けなかったものについては、即日にその国債を調達することもできずフェイルを余儀なくされました。リーマン・ショックのあった2008 年9月において、累計で6兆円弱のフェイルが市場で発生しました。リーマン破綻の経験を通じて、市場では、「破綻等のストレス時にモノ・金を予定通りに受け取れないリスク」(デフォルト・フェイルに伴う流動性リスク)が、概念上の存在に止まらない現実的なリスクとして、改めて強く認識されたのです。 (「リーマン・ブラザーズ証券の破綻がわが国決済システムにもたらした教訓」日本銀行資料より、http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0903a.pdf)

このリーマン破綻による国債取引への支障の経験により、国債市場において流動性リスクが現実に生じることが明らかになりました。この流動性リスクへの対応策のひとつとして検討されているのが、国債の決済期間を短縮しようというものです。証券、銀行など金融業界と日銀、金融庁は国債の決済日を現在の売買日の3日後(T+3)から、翌日(T+1)に短縮する方向で検討に入ったと伝えられています。ちなみにT+1のTとは「Trade date」のことで証券の売買が成約された日、つまり約定日を意味します。

参考、「国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」(第1回)議事要旨

http://www.kessaicenter.com/finish/kokusaik1.pdf
# by nihonkokusai | 2010-01-28 14:55 | Trackback | Comments(0)

「日本のソブリン・リスク」

 国債にも当然ながら信用リスクが存在する。信用リスクとは、どこかに貸したお金が約束どおり返ってこないとか、あるいは購入した債券の利息や償還金をあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなる(債務不履行)リスクのことを示す。信用リスクはデフォルトリスクといった使われ方もする。実際に企業が倒産したり国の財政が破綻してしまうケースだけでなく、倒産する可能性が高くなることで債券の価格が下落することなども信用リスクに含まれる。

 債券市場における信用リスクは、市場においてリスク・フリー金利に上乗せされるプレミアムといった形で表わさられる。それはひとつの信頼感の証とも言えよう。債券の発行体などに対してどの程度信用できるかはその上乗せ金利(スプレッド)という数字で表現される。ちなみにその元になるリスク・フリー金利は通常「国債」の金利となっている。

 そして、国債そのものの信用リスクはソブリン・リスクもしくはカントリー・リスクと呼ばれるものである。ソブリン(sovereign)とは政府もしくは政府機関の発行する債券のことを示す。そして、ソブリン・リスク(sovereign risk)とは政府などに対する融資のリスクを意味している。これに対してカントリー・リスクとは海外投融資や貿易の対象となる相手国の政治、社会、経済などの環境基づいた信用度の事である。

 このソブリン・リスクやカントリー・リスクなど国の信用リスクを確認ために使われるものに「格付」がある。この格付けとは、債券などの元本や利息が、約定通りに支払われるかどうかの確実性を、専門的な第三者である格付け会社が評価して段階的に表示したものである。代表的な格付会社としては海外ではムーディーズ・インベスターズ・サービス、スタンダード&プアーズ、フィッチ・レーティングスなどがある。国内では格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)などがある。

 たとえば、ある会社が債券を発行したいとき、格付け機関に費用を払って格付けを取得する。もしこの格付けが高いと、その企業の安全性が高いことが認められたわけで、高い利子をつけなくても債券を発行できるようになる。

 格付け会社は、こういった企業の格付けのほかに、独自で国の格付けを実施している。日本では1998年11月に米国の格付け会社のムーディーズ・インベスターズが日本国債を最上級のAaa(トリプルA)からAa1(ダブルA1)に引き下げたことが大きな話題を呼んだ。また、スタンダード&プアーズは2010年1月26日に日本ソブリンのアウトルックを「ネガティブ」に変更したが、この理由として民主党政権の政策では財政再建が従来の予想より遅れるもようであることを指摘した。

 ちなみに格付会社による日本国債の格下げによる国債価格への影響はこれまで限定的となっている。その要因としては日本国債が国内資金でそのほとんどが賄われており、国内投資家が国内金融商品で最も安全な資産とされる日本国債を、格下げを理由にして売ることはしなかったためである。しかし、格付け会社の日本国債の格下げは海外からの警鐘でもあり、日本の政府のみならず国民に強く財政危機を意識させたことも確かである。

 ただし、2008年のリーマン・ショックなどをきっかけとした世界的な金融経済危機の際には、格付け会社の格付けに対しての問題点も指摘された。格付け会社の格付は絶対的なものではないことも確かであり、あくまで信用リスクを見る上での参考程度に考えておく必要がある。

 また債券が債務不履行(デフォルト)に陥るリスクに備える保証料を示すCDSスプレッドも信用リスクを見るためのひとつ参考になる。通常5年物国債のCDSスプレッドが取引されています。この場合のCDSスプレッドとは、その5年物国債の年間保証料といえるものである。ただしCDS市場そのものの規模は小さく参加者も限定的であるため、日本ソブリンのCDSスプレッドの変化についても思惑的な動きによることも多いのが実情であることも注意したい。

ムーディーズとS&Pによる日本国債格付の推移

1998年11月ムーディーズ、日本国債格付けをAaa(トリプルA)からAa1(ダブルA1)に引き下げ
2000年9月ムーディーズ、Aa1からAa2に引き下げ
2001年2月S&P、AAAからAA+へ引き下げ
2001年9月S&P、アウトルックを「ネガティブ」に変更
2001年11月S&P、AA+からAAへ引き下げ
2001年12月ムーディーズ、Aa2からAa3に引き下げ
2002年4月S&P、AAからAA-へ引き下げ
2002年5月ムーディーズ、Aa3からA2に引き下げ
2004年3月S&P、アウトルックを「ネガティブ」から「安定的」に変更
2006年5月S&P、アウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に変更
2006年6月ムーディーズ、アウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げ
2007年4月S&P、AA-からAAへ引き上げ
2007年7月ムーディーズ、A2を引き上げ
2007年10月ムーディーズ、A2からA1に引き上げ
2008年6月ムーディーズ、A1からAa3に引き上げ
2009年5月ムーディーズ、 Aa3からAa2に引き上げる一方、 外貨建て債務格付けをAaaから引き下げ、両者をAa2に統一
2010年1月S&Pはアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更
# by nihonkokusai | 2010-01-28 10:33 | Trackback | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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