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米追加利上げは確定的か

 米労働省が8日に発表した11月の米雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業雇用者数が前月比22万8千人増となった。これは事前の市場予想を上回った。

 失業率は4.1%と前月比横ばいと予想通り。ただしこの失業率の水準はFRBが完全雇用とみる水準よりも低い。

 インフレ率の動向を占ううえで注目される平均時給は前年同月比2.5%増と、前月の2.4%増から小幅に伸びが加速したものの、賃金上昇が強まらない状況が続いている。

 8日の米国市場では、平均時給の伸び鈍化で米債が買われる場面もあったが、非農業雇用者数の予想以上の増加を素直に景気の拡大基調と捉えて、株が買われ、米債は小幅ながら下落した。8日のダウ平均は117ドル高となり最高値を更新した。ドル円も113円台半ばまで上昇しており、11日の東京時間では113円台後半に上昇し、114円を伺うような動きとなっている。

 米議会上下両院は7日に、8日が期限となっていた連邦予算について22日までのつなぎ予算を可決した。トランプ大統領が署名し成立した。ひとまず政府機関の閉鎖を巡る懸念が後退したことも、米国市場でのリスクオンのような動きの背景にあった。ただし、今回はそれほど政府機関の閉鎖を巡る懸念が強まっていたわけではない。

 さらに英国の欧州連合(EU)離脱交渉を巡り、英国のメイ首相とユンケル欧州委員長が8日に離脱条件について大筋合意したことも、目先の懸念を払拭させた。メイ首相は、EU離脱後にアイルランドとの国境に「ハードボーダー」(厳格な国境管理)は導入されず、ベルファスト合意(1998年)と呼ばれる英国とアイルランドの和平合意の内容は維持されると述べた。これを受けて8日の欧州株式市場はロンドン株式市場を含めて上昇した(ただし、デービス英離脱担当相が8日の合意を英国が必ずしも順守しない可能性を示唆している)。

 このように8日にはいくつかの懸念材料が後退したことで、リスクオンの動きを強めた。外為市場では円が売られ、米国やドイツ、そして英国の国債が売られ、欧米の株式市場は上昇したことからも、それが伺える。そして今後は欧米の中銀の金融政策の行方も注目材料となる。

 11日の週は欧米中銀の金融政策を決める会合が相次いで開かれる。最大の注目は12日から13日にかけて開催されるFOMCか。米雇用統計もしっかりしていたことで、予定通り追加利上げが決定されよう。来年2月の退任が決まっているイエレン議長の会見内容にも注意したい。

 13日、14日にはイングランド銀行のMPCが開催される。11月のMPCで10年ぶりの利上げを決定したが、追加利上げにはかなり慎重のようで今回は現状維持と予想される。しかし、あらためて追加利上げの可能性を示唆する可能性もありうるか。金融政策を決定する際の賛否の行方についても注意したい。

 14日にはECB理事会が開催される。すでに2018年1月以降、月間の資産買入額を月600億ユーロから300億ユーロに縮小することを決定しているが、今後の正常化に向けた道筋を明らかにしてくるのかにも注目したい。


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# by nihonkokusai | 2017-12-12 09:41 | 中央銀行 | Comments(0)

高額紙幣廃止論のここがおかしい

 元イングランド銀行金融政策委員のブイター氏は11月20日付けの日本経済新聞において、現金の撤廃について下記のようにコメントしていた。

 「第1に現金をすべて廃止すれば、金利のゼロ下限(または実効下限)制約がなくなる。」

 中央銀行がマイナス金利政策を行って、預金金利をマイナスとしても、現金には当然ながらマイナス金利は適用できない。だからマイナス金利政策の効果が出にくい。このため、現金を廃止すれば、その効果が高まるとの見方である。しかし、本当にマイナス金利政策が需要を刺激できるのについては、かなり疑問が残る。

 「第2に現金は決済手段として非効率だ。金融の発達した国では、もっと効率的な様々な決済手段が存在する。」

 金融が極度に発達し、現金が国内であればどこでも安心して利用できるシステムが日本で構築されている。偽札の横行もほとんどなく、その意味では日本は金融の後進国ではありえない。日本では現金決済というシステムが高度に発達し、匿名性もあることで多少のリスクや費用が掛かっても現金を保有するというインセンティブが働き、その結果が100兆円もの現金流通量となっている。

 効率的な決済とは、スマートフォンを使った非接触型決済などであり、中国でのアリペイなどを指そうが、中国は金融システムの発達が遅れ、現金が利用しにくいために、インフラ整備の遅れが、新技術の普及を広めていったとは言えまいか。

 日本でもプリペイドカードを利用した少額貨幣での取引についてはキャッシュレス化は進んでいる。ただし、スウェーデンのスウィッシュや中国のアリペイやウィーチャットペイのように特定のアプリに集中していない。利便性の高くシェアの大きなアプリが出てくれば、一気に普及する可能性がある。

 「第3に現金には匿名性が備わっているため、非合法取引の決済や犯罪者の価値貯蔵の格好の手段となっている。また脱税、資本規制逃れ、資金洗浄(マネーロンダリング)、犯罪やテロの資金調達が容易になるという弊害もある。」

 現金は確かに匿名性を有しており、それが日本人の現金保有の要因のひとつになっている可能性はある。しかし、日本が脱税天国であり、マネーロンダリングやテロの資金調達に日銀券が大量に利用されていることは考えづらい。

 「日本は先進国の中で現金決済の占める比率が極めて高いので、特に問題が大きいと考えられる」とブイター氏は指摘するが、日本の現金比率の高さは犯罪に使われているというより、発達した金融システムにより、現金利用が便利なためとも言えるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-12-11 10:08 | 金融 | Comments(0)

FinTech(フィンテック)とは何か

 いまさらではあるが、FinTech(フィンテック)と呼ばれる用語について考えてみたい。FinTechとは金融を意味するファイナンス(Finance)と、技術を意味するテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語である。情報技術を金融サービスに利用して新しいサービスを生み出す動きともされている。

 この代表例としてビットコインが挙げられている。その値上がりピッチの早さもあって、ニュースなどでも紹介されているビットコインではあるが、その位置づけがはっきりしているわけではない。法的に金銭と評価することは現時点では難しいと、日銀の「FinTech 勉強会」における議論でもなされている。この日銀での議論のなかでは次のような指摘もあった。

 「しかしながら、ブロックチェーンや分散型台帳技術を利用する分散管理型ネットワークの特性といった新しい要素は、従来のパラダイムを大きく転換し得る観点を孕んでおり近年、様々な議論が行われている。」

 確かにブロックチェーンや分散型台帳技術についてはいろいろな応用が期待できるが、それが金融そのものを根本的に変えるかどうかは不透明である。世間の注目度としては、あらたな通貨が生まれたことで、その行方と言うか価格動向のみに注目が集まっているかのように思われる。

 ビットコインがバブルであるかどうかは、弾けてみないとわからない。しかし、その値動きは17世紀のオランダでのチューリップ価格の動きを連想させるものとなっている。チューリップであれば、それが綺麗で珍しいものであるのかは視覚や聴覚などで確認できても、電子通貨には実態はなく、あくまで価格の動きでしかない。その価値を適切に把握する手段もない。オランダのチューリップもその希少性のみで価格が上昇し、買いが買いを呼ぶことになったことで、適正価格なるものがあったわけでもなさそうである。

 私自身はFinTech(フィンテック)という用語については、懐疑的というかそれが金融の未来を変えうるものといったイメージはない。そもそも金融の世界は情報技術とともに発展していたものであり、何をいまさらといった感もある。

 コンピュータが生まれ、それを真っ先に利用した業態といえるのが金融業界であった。証券取引所のシステム化の歴史、銀行や証券会社によるシステム化の歴史をみればそれが明らかであろう。金融取引と情報技術は極めて相性が良い。だからこそFinTech(フィンテック)という用語は決して新しいものとは言えないと個人的には思っている。その代表格がビットコインとあっては尚更感も強いのである。ただし、モバイル決済などについては金融決済を今まで以上に容易にさせうるものであり、それがさらに普及するであろうとは思う。しかし、これもあくまで新たな決済方式というよりも、情報技術を使っての利便性の向上にすぎないのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-12-09 14:27 | 金融 | Comments(0)

仮想通貨とモバイル決済と高額紙幣廃止議論

 ビットコインを代表とする仮想通貨、中国やスウェーデンなどで利用が拡大しているモバイル決済、インドなどでの高額紙幣廃止等々動きなどから、日本での1万円札廃止論なども出ている。これはハーバード大学のケネス・ロゴフ氏による日本での高額紙幣廃止論がひとつのきっかけとみられるが、仮想通貨とモバイル決済、高額紙幣問題は、キャッシュレス化社会としての動きとしてトータルで捉えるよりも、それぞれ切り離して考えるべきものではなかろうか。

 ビットコインを代表とする仮想通貨であるが、自国の通貨に信用のおけなくなった国であれば代替通貨としての利用も考えられるが、法定通貨である円に対する信認が強い日本では、通貨としての利用は考えづらい。仮想通貨は通貨と称しているもののネットを通じた仮想の金融取引手法であり、投機的に利用されているだけである。その値動きからも17世紀のオランダのチューリップバブルと類似しているものである。仮にビットコインバブルが弾けようと、実態経済への影響はほとんどないのではなかろうか。

 キャッシュレス社会が到来かと騒がれている中国などでのモバイル決済普及の動きについては、たとえば通常の電話網が整備されていないところで急速に携帯電話が普及したようなもので、現金利用に障害があることで、モバイル決済の普及が進んだといえる。さらに日本はモバイル決済の後進国などではなく、少額貨幣の利用ではキャッシュレス化は進んでいる。ただし、アプリなどの寡占化が行われず、各種のカードやアプリが乱立してしまっていることで、中国などに比べて普及が進んでいないかのような印象となっている。

 問題なのは高額紙幣問題であるが、ケネス・ロゴフ氏は日本での現金流通水準の高さ、1万円札など高額紙幣の利用度の高さの要因はマネーロンダリングや脱税などの犯罪行為に高額紙幣が利用されているためとしている。日本での1万円札など現金が異常に利用されているのは何故なのか。マネーロンダリングやテロの資金調達などに日銀券が使われている可能性は全くないとまでは言い切れないものの極めて低いと思われる。

 問題となるのは現金の匿名性を利用した脱税への利用であるが、これについては存在する可能性はある。昔の証券会社などにとっての金融商品販売の主力商品が割引金融債であったが、これは金融商品としてだけでなく、匿名性を利用した相続などでの脱税などにも利用されていた可能性があった。

 現在は中期ゾーンの国債の利回りもマイナスとなっているため、利息ゼロの現金のほうが中期債に比べれば利回りが高い状況となっている。保管費用はかかっても、多額の現金をしまい込んでいる富裕層がいる可能性は否定できない。ときおり所有者不明の多額の現金が発見されるが、それも税金対策などであった可能性はありうる。

 だからといって現金を廃止すべきというのはやや極論ではなかろうか。日本国内での現金利用率の高さは、決済等含めたその使い勝手の良さが大きく影響している。治安の良さ、現金をATMで引き出せる利便性、偽札が少ないこと、紙幣がクリーンであることなど、それなりの費用をかけて現金が利用されやすいインフラが整備されている。

 キャッシュレス化はその費用を軽減させることになるが、それには特定の使いやすいアプリなども必要となろう。ただ、高齢者にとってはモバイル決済は馴染みにくい面もある。脱税を防ぎ、キャッシュレス化を進展させるために高額紙幣を廃止するという議論は極端すぎるし、日本社会に混乱を招きかねない。いずれ否応なくモバイル決済などを通じたキャッシュレス化は進むであろうし、日銀がマイナス金利政策をやめれば、保管費用のかかる現金保有は減ることも予想される。


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# by nihonkokusai | 2017-12-08 10:08 | 金融 | Comments(0)

日銀総裁が指摘したリバーサル・レートの議論

 日銀の黒田総裁は、11月13日のスイス・チューリッヒ大学における講演で、「金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています」と発言し、市場関係者の注目を集めた。黒田総裁はリバーサル・レートについて以下のように説明していた。

 「これは、金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方です。」

 リバーサル・レートについては、講演議事要旨の注釈に「Markus K. Brunnermeier and Yann Koby (2017), "The Reversal Interest Rate: An Effective Lower Bound on Monetary Policy," mimeoを参照」とあり、米国のプリンストン大学のブルネルマイアー教授の論文を引用した。リバーサル・レートとはブルネルマイアー教授が考案した概念で、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるとの議論である。

 リバーサル・レートの議論は、大胆な金融緩和策の副作用ともいえるものであり、何故、黒田総裁はこのタイミングで、この議論を海外の講演で紹介したのか。

 日銀は長短金利操作付き量的・質的緩和と称する大規模な金融緩和策を行っている。いろいろな緩和策をくっつけたような名称となっているが、現実には量的・質的緩和とその後のマイナス金利政策にいろいろな意味で限界や副作用が生じ、それを修正するための手段との見方もできる。

 2016年1月のマイナス金利付き量的・質的緩和の導入については金融界からの批判が相次いだ。現実にここにきてメガバンクが大量のリストラ策を発表しているのも、マイナス金利による影響が大きい。マイナス金利政策はECBなどがすでに実施していたが、その効果は見えないにも関わらず、金融機関への収益を大きく悪化させかねないものである。そのため、マイナス金利政策の修正を行ったのが、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和策である。

 長短金利操作付き量的・質的金融緩和策は一見、短期金利に加えて長期金利も操作目標に加え、追加緩和のようにみえる。しかし、その実態は長めの期間の金利を引き上げ、イールドカーブを少しでもスティープ化させて、金融機関の運用に対する悪影響を軽減させるものである。また操作目標を量から金利に変えたことで、量への呪縛を解くこととなった。

 これにより、日銀は国債の保有残高の増加額年間約80兆円という数字は残しているものの、実質は40兆円台となるなどステルステーパリングを行うことが可能となった。これに対して市場は緩和策ではなくなっているのではとの印象よりも、日銀の国債買入への限界を気にしていたことでその不安が多少なり解消されたことをむしろ好感した。長期金利に目標が課せられたことで、国債の利回りが大きく跳ね上がることも抑えられることになった。

 日銀の黒田総裁がこのタイミングでリバーサル・レートの議論を紹介したのは、さらなる利下げ観測を牽制したとか、今後の異次元緩和からの微調整の可能性を示唆したとの見方もできなくはない。しかし、それよりも日銀の現在の政策である「長短金利操作付き量的・質的緩和」がリバーサル・レートも意識した上での政策であることを示す目的もあったのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-12-06 10:00 | 日銀 | Comments(0)

チューリップバブルと類似するビットコイン

 欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁(ポルトガル出身)は、17世紀に発生したチューリップバブルを引き合いに出し、「ビットコインはチューリップのようなものだと言える。数日間で40%、50%上げ下げするものに賭けたい人のための投機手段だが、通貨でないことは確実だ。中央銀行や金融政策への脅威になるとは見ていないことは確かだ」と述べた(ブルームバーグ)。

 現在のビットコインの状況をみるとコインという名称は付いているものの、通貨としての利用というよりは、一部の人達による投機的な利用が主体のように思われ、チューリップバブルをイメージするというのは適切ではなかろうか。それでは17世紀にオランダで起きたチューリップバブルとはどのようなものであったのか、振り返ってみたい。

 17世紀はじめのオランダは、商人が世界各地に進出し、ヨーロッパで最も経済が発達した国となった。所得水準がヨーロッパで最高となり、消費や投資が活発化した。株式会社に加え、銀行、複式簿記、為替手形、そして証券市場などが発達し商業資本主義の基礎を築き上げた。

 世界最初の中央銀行はスウェーデンのリクスバンクと言われているが、1609年に市の条例で設立されたアムステルダム振替銀行ではないかとの見方もある。預金には金利はつかず、保有する金の範囲でしか紙幣を発行せず、融資はほとんど行わなかった。こうしたアムステルダム振替銀行の高い信用などを背景に外国為替の割引が活発に行われ、これによりアムステルダムが国際的な取引で支配的な地位を確立したのである。

 1530年に設立されたアムステルダム取引所では商品、為替、株式、債券そして海上保険などあらゆる種類の金融商品や金融サービスが売買されていた。取引の主流は先物取引となり、穀物や香料、砂糖や銅、硝石などの先物取引が行われていた。

 オランダでは、その地形や気候により花の栽培に適しており、特に好まれたのがチューリップ栽培であった。オスマン・トルコからチューリップが持ち込まれた当初は、貴族や商人など一部の収集家だけで取引されていたが、1634年あたりから一般個人も値上がり益を狙って、チューリップ市場に参入するようになった。

 珍しい品種が高値で取引されるようになり、1636年から1637年にかけて投機熱は最高潮に達した。居酒屋などで行われた先物取引などが主体となり、次第に実態のない取引が行われるようになる。珍しい球根は家一件分といったように、すでに価格は現実からかけ離れたものとなり、貴重品種以外の品種も高値で取引されるようになった。

 1637年2月にチューリップ市場は突然暴落した。暴落の理由らしい理由はなかったものの、春になると受け渡しの期日が来ることで、その前に売ろうとしたところ、買いが入らず、売りが売りを呼ぶ展開となったのではないかといわれる。先物の決済が行われず、債務不履行が次々に起こる。混乱が収まったのはやっと政府が乗り出した1638年5月である。

 数千人規模で支払いきれない債務者がいたといわれたオランダのチューリップバブルであるが(バブルという言葉そのものはのちの南海バブルから)、そのバブル崩壊による実態経済への影響はほとんどなかったといわれている。このためチューリップの熱狂が本当にあったのかどうか疑問視する見方もあるが、これをきっかにオランダのチューリップが世界的に広く認識され、オランダでの花き産業が発達していったことも事実である。


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# by nihonkokusai | 2017-12-05 09:37 | 金融の歴史 | Comments(0)

中国のスマホ決済の急速な普及と日本の実情

 11月28日付けの日経新聞によると中国で「生活インフラ」として定着したスマートフォン(スマホ)決済が2年で6倍に増え、年間660兆円にも達したそうである。上海の一角に密集する八百屋や雑貨店など20店に聞くと、電子決済を使えないのは婦人靴店1店のみだとか。中国のスマホ決済は「支付宝(アリペイ)」と「ウィーチャットペイ」の2強に延べ12億人が登録しているそうである。

 北京や上海で財布から現金を出して払っている人といえば、老人か外国人旅行者ばかりだとの指摘もあり、中国は大都市だけでなく内陸部でも交通や食事など、どんな支払いでも決済アプリで簡単にできてしまうようである。

 なぜ中国ではこのように急速にキャッシュレス化が進んでいたのか。それに対して日本ではキャッシュレス化が遅れているようにみえるのか。

 それは日本では現金が全国で流通できる社会基盤が充実していたことで、現金での決済の利用が便利であったためといえる。これに対して中国では日本よりも偽札が多く、また治安も日本に比べて良くない面も指摘され、現金の利用が日本に比べてリスクが高いことがあった。そこに急速なスマートフォンの普及があり、アプリでの簡易決済が可能となったことで現金を持ち歩くリスクもなく、気軽に使える決済方式が急速に普及したものと思われる。

 インフラ整備の遅れが、むしろ新技術の普及を広めていった事例のひとつとも言えるのではなかろうか。それでは今後、日本でもスマートフォン決済、モバイル決済が普及する可能性はあるのであろうか。

 キャッシュレス化が進んでいる国としてはスウェーデンもある。スウェーデンでは複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済が広く使われている。

 日本では現金の決済が便利なため、中国やスウェーデンのように一気にモバイル決済が普及することは現状考えづらい。しかしSuicaなどJRのカードやnanacoなどのコンビニのカードを使うことで小銭を持ち歩くことも少なくなった人も多い。少額貨幣についてはキャッシュレス化は進んでいる。

 スマートフォンの普及も中国ほどではないが、日本でも進みつつあり、今後、国内で使いやすいアプリが出てくれば一気に普及する可能性はある。国内大手銀行なども三菱UFJがMUFGコインを発表するなど、銀行口座のお金をスマートフォンで簡単に支払えるような仕組みが検討されている。銀行別のアプリとかではむしろ使いづらい面もあるが、スウェーデンのように複数の有力銀行が共同開発とかなれば使い勝手も良くなる可能性もあるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-12-04 09:54 | 金融 | Comments(0)

日銀の金融政策は消費者物価指数を動かせるのか

 12月1日に発表された11月の全国消費者物価指数は総合が前年同月比プラス0.2%、 生鮮食品を除く総合指数(コア)は同プラス0.8%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は同0.2%の上昇となった。

 総合指数の前年同月比の上昇幅は0.5ポイントも縮小した(9月0.7%→10月0.2%)。これは生鮮食品により総合の上昇幅が0.62ポイント縮小したことによる。夏の天候不順で野菜高騰が高騰していたが、それが収まりつつあるようである。

 生鮮食品を除く総合の前年同月比の上昇幅は0.1ポイント拡大した。(9月0.7%→10月0.8%)。これはガソリンなどの上昇幅がさらに拡大し、生鮮食品を除く食料価格の上昇、携帯電話機や外国パック旅行費が上昇に寄与している。

 生鮮食品を除く総合(コア)指数は日銀の物価目標である。これについてみてみると、2017年1月にコア指数の前年比でプラスに転じ、前年同月比のプラス幅が拡大しつつある。かなりの時間を置いて日銀の異次元緩和が効いてきた、、、と言えるわけでは当然ない。ここにきての前年比の上昇率の拡大は原油価格の上昇が大きく寄与している。原油価格の上昇に日銀の金融政策が影響を与えているわけではない。

 日銀が2013年1月に置いた2%の物価目標、さらには同年4月の量的質的緩和政策で置いた目標とする物価は「除く生鮮(コア)」ではなく「総合」であった。ところが、2016年9月の決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、日銀はこの目標とする物価を総合からコアに置き換えている。いろいろな意味でタイムリーであった。

 それまで日銀は独自に新コアコア指数などを発表し、物価抑制の要因となっていたエネルギー価格の影響を排除した指数を使おうとしたが、むしろそのエネルギー価格の反発が、現在の物価を引き上げていることは今年に入ってからの消費者物価指数(コア)の前年比の拡大の状況を見ても明らかであろう。

 日銀の金融政策の目的は物価を安定させることである。その手段が金融市場を通じた金融調節ではあるが、それが直接、消費者物価指数を上げ下げさせることはできないであろうことは、この状況を見ても明らかではなかろうか。そろそろ日銀も消費者物価指数という物価目標に縛られない政策に転じる必要もあると思うのだが。


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# by nihonkokusai | 2017-12-02 07:45 | アベノミクス | Comments(0)

日銀の金融政策は消費者物価指数を動かせるのか

 12月1日に発表された11月の全国消費者物価指数は総合が前年同月比プラス0.2%、 生鮮食品を除く総合指数(コア)は同プラス0.8%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は同0.2%の上昇となった。

 総合指数の前年同月比の上昇幅は0.5ポイントも縮小した(9月0.7%→10月0.2%)。これは生鮮食品により総合の上昇幅が0.62ポイント縮小したことによる。夏の天候不順で野菜高騰が高騰していたが、それが収まりつつあるようである。

 生鮮食品を除く総合の前年同月比の上昇幅は0.1ポイント拡大した。(9月0.7%→10月0.8%)。これはガソリンなどの上昇幅がさらに拡大し、生鮮食品を除く食料価格の上昇、携帯電話機や外国パック旅行費が上昇に寄与している。

 生鮮食品を除く総合(コア)指数は日銀の物価目標である。これについてみてみると、2017年1月にコア指数の前年比でプラスに転じ、前年同月比のプラス幅が拡大しつつある。かなりの時間を置いて日銀の異次元緩和が効いてきた、、、と言えるわけでは当然ない。ここにきての前年比の上昇率の拡大は原油価格の上昇が大きく寄与している。原油価格の上昇に日銀の金融政策が影響を与えているわけではない。

 日銀が2013年1月に置いた2%の物価目標、さらには同年4月の量的質的緩和政策で置いた目標とする物価は「除く生鮮(コア)」ではなく「総合」であった。ところが、2016年9月の決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、日銀はこの目標とする物価を総合からコアに置き換えている。いろいろな意味でタイムリーであった。

 それまで日銀は独自に新コアコア指数などを発表し、物価抑制の要因となっていたエネルギー価格の影響を排除した指数を使おうとしたが、むしろそのエネルギー価格の反発が、現在の物価を引き上げていることは今年に入ってからの消費者物価指数(コア)の前年比の拡大の状況を見ても明らかであろう。

 日銀の金融政策の目的は物価を安定させることである。その手段が金融市場を通じた金融調節ではあるが、それが直接、消費者物価指数を上げ下げさせることはできないであろうことは、この状況を見ても明らかではなかろうか。そろそろ日銀も消費者物価指数という物価目標に縛られない政策に転じる必要もあると思うのだが。


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# by nihonkokusai | 2017-12-02 07:45 | アベノミクス | Comments(0)

日銀レポートにみる日本でのキャッシュレス化の現状

 あらためて日本でのキャッシュレス化の現状についての論点整理を試みたい。今回は「BIS決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴」という今年2月に日銀が出したレポートを参考にして見ていきたい。

 日本における現金流通残高の対名目GDP比率は突出して高く、キャッシュレス化が急速に進行しているスウェーデンの約11倍にも達する。日本では「国内の治安が相対的に良く、盗難等により現金を失うリスクが他国対比では低いこと、偽造された銀行券が相対的に少なく、銀行券に対する国民の信認が高いこと、低金利環境により現金保有の機会費用が小さいこと」等から法定通貨である円という現金の利用が多くなっているとしている(上記レポートより)。

 現金の支払手段としての側面からみてみると、法定通貨としての強制通用力や一般受容性といった性質に加え、支払完了性を有すること、価値以外の情報が切り離されているという意味で「匿名性」を有することといったメリットが挙げられている(上記レポートより)。

 電子通貨ではこの「匿名性」が失われる可能性がある。また支払可能な金額が額面金額に限定されていることも、むしろメリットと捉える向きもあると指摘されている。

 日本ではカード決済のウエイトが相対的に小さく、支払手段として現金が幅広く使われているが、各種カードの一人当たり合計保有枚数をみると、日本では一人当たり平均で7.7枚とかなり多い。実はデビットカードの保有枚数も日本は多いものの、それはデビットカードの保有枚数には「J-Debit」が計上されているためで、使わなくてもデビットカードの機能もあるカードを複数枚所持していることが要因となっている。

 そして、日本におけるカード決済金額をみると次のような特徴がみられるとレポートでは指摘している。

・電子マネーによる決済金額は、各国平均を大きく上回っている。

・クレジットカードは、概ね各国平均並みに利用されている。

・デビットカードによる決済金額は、各国平均を大きく下回っている。

 電子マネーのカード利用に関しては、交通系カードが広く普及していることやポイントの付加などが日本で多く利用されている要因となっている。電子マネーによる決済は、小売店等における少額決済を中心にかなり急速に増加しているようである(nanacoやWAON等々)。このため日本における少額貨幣の流通残高は減少している。

 デビットカードに関しては、日本における一人当たりの保有枚数は非常に高くなっている一方で、カード決済金額の対名目GDP比率は極めて低い。日本では人々が預金引き出し等のためのキャッシュカードをデビットカードとしてはほぼ全く使わないまま複数枚持ち歩いていることになるが、なぜデビットカードが普及していないのか。日銀のレポートは次のように指摘している。

 「日本においてデビットカードの利用が広まっていない理由としては、米国では銀行業界が、大量の小切手処理に伴うコスト削減の観点から、小切手を代替するデビットカードの普及に努めたのに対し、日本ではもともと小口決済において小切手の利用が普及していなかったことや、クレジットカードの発行に伴う審査が諸外国に比べ厳しくなく、比較的多くの人々がクレジットカードを持てること、さらには、このようなクレジットカードが利用される際、一回払いが選択される場合が多く、機能的にはもともとデビットカードに類似した使われ方がなされていることなどが挙げられる。」(日銀レポートより)

 海外でのキャッシュレス化の普及状況をみると、たとえばスウェーデンでは同国の複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済が広く使われている。中国でのモバイル決済は「支付宝(アリペイ)」と「ウィーチャットペイ」の2強に延べ12億人が登録している。このように使い勝手の良い限られたモバイル決済が大きく普及している。これに対して日本では日銀が発行した日銀券という使い勝手の良い決済が多く利用されているものの、電子決済に関しては事業会社ごとに異なるものとなっており、単一性が図られていない。これは利用者にとっても不便であり、それぞれの端末の設備投資が必要となる小売業などにとっても不便と言えよう。

 日本では脱税やマネーロンダリング防止目的での高額紙幣の廃止の必要性は感じられないが、モバイル決済については今後、さらなる普及が見込まれる。しかし、その障害となっているのが、単一性が図られていない面ではなかろうか。たとえばではあるが、スウェーデンのように日本の大手銀行がスウィッシュ(Swish)のような統一したモバイル決済を行うようになれば、電子決済の普及がさらに高まる可能性がある。


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# by nihonkokusai | 2017-12-01 09:29 | 金融 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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