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トランプ相場をきっかけに、異常な低金利からの脱却はありうるのか

 米大統領選挙におけるトランプ氏の予想外の勝利によって、ドルが買われ、米国株式市場ではダウ平均などが過去最高値を更新するなど、いわゆるトランプ・ラリーが起きた(ラリーとは株価などが上昇しやすい現象のこと)。このトランプ・ラリーの象徴するのが米長期金利の上昇となる。

 米国の長期金利は今年7月に1.3%台まで低下後、英国のEU離脱によるショックが一時的に止まったことなどからじりじりと上昇してきた。それがトランプ氏が次期大統領に選出されたことによって、上昇ピッチが加速して、米10年債利回りは節目とされた2.35%もあっさり抜けてきた。2.5%が次の節目となるが、このまま3%に向けて上昇してくる可能性もありうる。

 この米長期金利の上昇要因としては、トランプ氏の打ち出す減税や規制緩和などによる米経済回復への期待、原油価格の上昇も相まっての物価上昇予想がある。また財政赤字拡大の懸念も米国債の売り(長期金利の上昇)要因となっている。

 しかし、それ以前に世界的に金利は上昇局面に変化しつつあることの見方もできる。米国の長期金利上昇の背景には、12月のFOMCの利上げ観測も当然ある(市場の予想はなぜか100%を超えている)。FRBは昨年12月に利上げを行い正常化に向けて一歩進めた。ところが今年の年初からの原油価格の下落や、その要因ともなった新興国経済への不安感により、金融市場のリスク回避の動きによって、米長期金利は上昇どころか低下した。さらに今度は英国の国民投票によるEU離脱決定という事態が起きて、ここでリスク回避の動きがピークアウトする。

 英国のEU離脱による金融市場でのリスク回避の動きが一過性のものとなったことで、米長期金利の反発がスタートした。これは原油価格の上昇ともリンクしていた。しかし、この原油価格はWTI先物で節目の50ドルがいったんの上限となった。OPECでの減産合意に不透明感が強まり、原油先物は下落したのである。ところが30日のOPEC総会での最終的な減産合意となったことで、米長期金利の重しとなっていた原油先物も上昇し、米長期金利もあらためて上昇した。

 長期金利の上昇は米国にとどまらず、英国やドイツの長期金利も同様に上昇してきている。英国債は米国債の動きに連動しやすい面もあるが、この欧米の長期金利の上昇は、これまで次々に襲ってきた世界的な経済金融のリスクからの脱却を意味するものではないかと思われる。異常ともされた日米欧の金融緩和に対して、すでに市場も違和感を覚えつつある。いつまでこのような政策を中央銀行は続けるつもりなのかと。

 米国はあらためて正常化に向けた道筋を歩むとみられ、イングランド銀行もいずれ方向を変えてくることも予想される。しかし、日銀とECBは向きを変えることすら困難なところに自ら追い込んでしまっている。見えないかたちで国債の買い入れ額を縮小するというステルス・テーパリングがせいぜいではないかとみられる。日銀の長短金利操作付き量的・質的金融緩和はそれを可能とさせた。ECBも国債買入期間を延長する変わりに買入額を減少させるのではとの観測もある。いずれにしても国債買入にはすでに限界が近いことも確かである。

 日本の長期金利もさすがに上昇したといっても、やっとプラスになった程度である。この日米の長期金利の上昇ピッチの違いも円安ドル高の要因とされており、これは日銀の意図したところかもしれない。しかし、原油価格の上昇は日本の物価にも跳ね返ってくる。果たして日銀はいつまで長期金利を抑えるつもりなのか。日銀はそのような技術的な操作などよりも、出口を意識した政策にそろそろ頭を切り換える必要があるのではなかろうか。

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# by nihonkokusai | 2016-12-04 12:27 | 中央銀行 | Trackback | Comments(0)

ユーロリスク再燃の可能性

 イタリア政府は憲法改正の是非を問う国民投票を12月4日に実施する。憲法の改正案は上院議会の議員定数の削減や権限の縮小など首相の権限の強化につながる内容となっている。レンツィ首相は憲法改正はイタリア政治に必要な安定をもたらすと主張、否決された場合には辞任する意向を表明している。

 世論調査では、改正反対派が優勢となっている上に、米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利によってレンツィ首相を取り巻く環境に変化も生じた。イタリアでもレンツィ政権の打倒を目指すポピュリストの運動は勢いを増しつつあり、12月4日の国民投票では憲法改正が否決され、レンツィ首相が辞任するのではないかとの観測が強まった。2017年の早い時期に総選挙実施となる可能性も指摘されている。

 これを受けて今年8月に1%近くまで低下したイタリアの長期金利は一時2%台に乗せてきた(2日は買い戻しの動きが出て大きく買い戻されて2%割れとなった)。イタリアの政治空白の可能性によるイタリアの銀行への懸念も出ていた。レンツィ首相が辞任するような事態となると、資金調達を巡る懸念により、同国内の銀行に破綻のリスクが生じるとされる。

 12月4日にはオーストリアでも大統領選挙が行われる。これは5月の決選投票で開票作業の不備が明らかになったことでのやり直し選挙となる。極右・自由党候補のホーファ国民議会第三議長とリベラル系の前緑の党党首、ファンデアベレン氏の対決となる。最近の世論調査では両候補の支持が伯仲しているようだが、トランプ効果により、EU離脱派でもあるホーファ氏が勝利する可能性もある。

 来年4月または5月にはフランスで大統領選挙が実施される。こちらも極右政党「国民戦線」のルペン党首が有力候補となっている。現職のオランド大統領の支持率は各世論調査で最低を記録し、すでにオランド大統領は大統領選挙への立候補を断念する考えを表明している。トランプ効果の追い風もあり、フランスでも極右政党の党首が大統領となる可能性がある。ドイツも来年9月に総選挙を控えている。

 すでにイギリスは国民投票でEU離脱を決定した。米国ではトランプ氏が予想を覆して勝利し、この流れで行くとイタリアでも国民投票の結果を受けてレンツィ首相が辞任しかねない。フランスでも極右候補が大統領選を制する可能性が出てきており、オランダでも極右候補が台頭している。

 イタリアの銀行の動向も気になるところではあるが、この流れはあらためてユーロシステムの崩壊の可能性を意味する。ギリシャショックの際はかろうじてユーロ崩壊は免れたものの、今後再びユーロリスクを意識せざるを得なくなる懸念がある。

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# by nihonkokusai | 2016-12-03 11:07 | 国際情勢 | Trackback | Comments(0)

OPECの減産最終合意でトランプ相場は継続

 30日のOPEC総会では、減産を巡り利害の対立を抱えるサウジアラビアとイランが土壇場で歩み寄り、9月末のアルジェリアの臨時総会で合意した内容に基づき減産で一致した(日経新聞)。

 サウジ、イラン、イラクの意見が噛み合わず、特に全加盟国に減産協力を求めるサウジと減産の適用除外を求めるイランが対立していた。このため30日の総会での減産合意は難しいとの観測から原油先物は売られていた。WTI先物は45ドル近辺まで下げた。

 総会直前の30日朝には加盟国の閣僚らによる非公式会合が開かれたことで、合意は難しいとの観測がむしろ強まっていたが、それだけ減産に向けてサウジを中心に何とか減産合意に持っていきたいとの意識が強かったようである。

 イランへの譲歩に難色を示してきたサウジの態度の軟化が、加盟国を8年ぶりの減産での合意に導いた格好となった(日経新聞)。

 これを受けて原油価格は急上昇、指標となっているWTI先物は30日から12月1日にかけて買い進まれて50ドルの大台を回復した。トランプラリーの原動力となっている米長期金利も上昇しも米長期金利は2.4%台に乗せてきた。これは原油価格の上昇による物価上昇という要因だけでなく、ADP全国雇用者数が予想を上回るなど経済指標も影響した。12月13、14日に開かれるFOMCでの利上げ観測がさらに強まった格好となった(すでに100%以上の利上げ予想ではあるが)。

 外為市場でドルは上昇し、特にドル円は一時114円台後半まで上昇した。ドル高ではあるが、ユーロ円も121円台をつけるなど円安の動きともなっていた。

 ただし、30日から1日にかけての米国株式市場はアマゾン・ドット・コムやフェイスブック、グーグルの持ち株会社アルファベットといった代表的なネット関連株が大幅安となったことで、ナスダックは下落した。銀行株や石油関連株の上昇で12月1日のダウ平均は上昇し、過去最高値を更新した。

 これはトランプ次期大統領が、米国を代表する大手企業であるアップル、グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、マイクロソフトなどに対して、米国の雇用面、海外投資などに絡んで改善を求めることが予想され、対立色を強めるのではとの観測が背景にある。

 つまりトランプラリーという相場のなかでは、これらハイテク企業の株は売られやすくなり、規制緩和などの観測による銀行株などが買われた格好となった。

 新政権が現実にどのような政策を行うのかはまだはっかりしていない。ここにきてやっと財務長官や商務長官の人事が発表されたが、この人事からもTPPは反対するであろう程度しか読み取れない。

 それでも期待感を背景に2012年末のアベノミクス相場のような展開があらためて再開した。チャートを見る限り、ドル円は115円をいずれ突破して120円あたりまでの上昇もありうるか。日経平均は昨年12月以来の2万円が目処となる。そして米国の長期金利は2014年はじめにつけた3%もいずれ意識される可能性がある。

 原油価格の上昇や円安は物価上昇要因となる。これに株高も組み合わされば、日銀にとっては願ってもない動きとなろう(決してこれは日銀の金融緩和によるものではないが)。しかし、米長期金利の上昇が今後続き、原油高などによる物価の上昇観測が強まれば、日本の国債の利回りも当然、上昇圧力を強めることも予想される。それをどのように日銀はコントロールするのか、というよりもコントロールできるのか、このあたりも今後の焦点となる。

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# by nihonkokusai | 2016-12-02 09:38 | 国際情勢 | Trackback | Comments(0)

来年度の国債発行額は減額か、国債で気にすべきリスク

 財務省において25日に国債市場特別参加者会合が、28日には国債投資家懇談会がそれぞれ開催され、財務省のサイトでその議事要旨が公表されている。

 今回の会合の目的のひとつは来年度の国債発行計画に関わるものとなり、財務省からは以下の説明があった。

 発行規模について借換債(除く復興借換債)は、平成29年度概算要求ベースでは104.6兆円と、今年度の当初計画額の109.0兆円より約4.4兆円低い。新規財源債(建設・特例国債)は、予算編成過程で決まるが、発行総額は今年度から減額される見通しとなっている。

 これについていわゆるディーラーからは、2年債及び5年債を中心に減額余地があるとし、超長期債については減額するのであれば20年債、10年債については先物の受渡適格銘柄であるため、できれば減額は最低限に留めてほしいといった意見が出ていた。

 投資家からも、減額するのであればマイナス利回りとなっている中短期ゾーンにしてほしいとしている。ただし、担保需要があるため、あまり大きく減額されてほしくはないとの意見もあった。30年債及び40年債の増額を希望するとの意見もあった。

 これを見る限り、減額は2年、5年を中心に一部の超長期債含めて調整が行われると思われる。ただし、これによって債券市場が大きく変動することは考えづらい。すでに日銀が年間発行額の9割を購入している以上、需給バランスが崩れるとすれば日銀次第ともなる。

 その日銀の政策含めて、最近の国債市場の状況と今後の見通しについては、日銀のイールドカーブ・コントロールとトランプ相場に関する意見が多く出ていた。

「日本銀行は市中発行額の9割程度を買い占めており、少なくとも操作対象にしている10年債の金利はある程度グリップできる。」

 たぶん市場参加者の間ではこういった認識が強いかと思われるが、下記のような指摘もあった。

 「歴史を紐解いても長期国債というものは、国民の長期的な老後の備えである年金を運用する大きな受け皿として、社会的な意味合いを持っていたはずである。そのように考えると、金融政策によって金利を極端に下げることは、現段階では主に金融仲介機関に問題を発生させている状況だが、本質的には国民社会全体に影響が及ぶものではないかと考えている。」

 いずれ国民社会全体に影響が及ぶ可能性は年金運用に止まらずあると思われる。さらに投資家からは下記のような意見も出ていた。

 「金利が上がってくれば国債を購入するニーズは出てくるという声も聞かれているが、生保は大手も含めて、貯蓄性商品の販売を取りやめている。そうすると、運用資金が入らないことや時間の経過により負債のデュレーションが短くなるため、数年後に金利が上昇したとしても超長期ゾーンの国債を購入する需要が元に戻るという話にはならないと思う。その点について、市場参加者はもう少し危機感を持った方がよいのではないか。」

 現実に日本の金利が急上昇するという前提での予想は立てづらいものの、日銀による異常な緩和政策が国債を軸で行われた結果、異次元緩和以前に比べ債券への投資環境に変化が出ていることには注意すべきと思われる。

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# by nihonkokusai | 2016-12-01 09:58 | 国債 | Trackback | Comments(0)

日本の物価はいまだ前年比マイナスの理由

 25日に公表された10月の全国消費者物価指数は、総合が前年同月比プラス0.1%と前月のマイナス0.5%からプラスに転じた。これは生鮮野菜の値上がりが大きく影響し、宿泊料の上昇も寄与した。

 日銀が物価目標としている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比マイナス0.4%となり、前月のマイナス0.5%からはマイナス幅は縮小しているが、いまだマイナスを脱していない。マイナス0.4%という水準は日銀が量的質的緩和を決定した月である2013年4月のマイナス0.4%と変わりはない。

 下落に寄与したのはガソリンなどエネルギー価格であるが、その下落幅が縮小しており、マイナス幅は縮小している。WTI先物の価格を1年前と比べるとすでに上回ってきており、今後エネルギー価格は前年比でみるとプラスに寄与してくると予想される。

 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は、前年同月比プラス0.2%となっている。日銀が独自に公表している基調的なインフレ率を捕捉するための指標(速報)によると、総合(除く生鮮食品・エネルギー)は 9月の0.2から10月は0.3となっている。

 原油価格の下落の影響は次第に後退するとみられ、消費者物価指数(除く生鮮)はいずれプラスに転じてこよう。もちろんこれは日銀の金融緩和の成果ではなく、原油価格の動向など外部環境の変化によるものである。

 日銀は物価の基調はしっかりしていると主張するが、前年比ゼロ近傍で日銀の物価目標たる消費者物価が推移している以上はその主張は正しくはないということになる。もともと日本の消費者物価指数は帰属家賃などの影響で上がりづらい面があるとともに、原油価格や為替市場動向に大きく左右される。

 2013年4月の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比マイナス0.4%となっていたが、それが1年後の2014年4月にプラス1.5%にまで上昇した。これは2012年10月頃の原油先物価格が90ドル近辺、ドル円が80円割れとなっていたものが、1年後の2013年10月にそれぞれ100ドル、100円近辺上昇した影響が大きい。

 ドル円はその後も上昇し2015年には一時120円台をつけるが、原油先物は2015年に50ドル割れまで下落する。この原油価格の下落が消費者物価指数の前年比を押し下げた。結果を見る限り、日本の消費者物価指数は主に原油価格の動向に左右されがちで、そこに為替による影響もありうるといったところか。

 そこにどれだけ日銀の金融政策の余地がありうるのか。もちろん賃金が抑えられ、消費が上向かないなどの上昇抑制要因もあろう。しかしそれが日銀の金融政策で変えられるものではない。まったく効果がないとは言わないが、金融政策はあくまでその補助的な役割でしかないはずである。

 大胆な金融政策でも物価は変えられないし、世界も変えられない。金融政策はあくまで金融市場の不安を取り除くといった役割程度の認識とすべきで、過度の期待は禁物ではないかと思われる。

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# by nihonkokusai | 2016-11-30 09:48 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

トランプ効果で金融緩和の影響度が強まることも

 9月21日に日銀が金融政策決定会合で決定した金融緩和強化のための新しい枠組み「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で日銀はいったい何をしようとしているのか。米大統領選挙でのトランプ氏の勝利が金融市場を取り巻く環境が大きく変化しつつあり、これを踏まえて考えてみたい。

 日銀は9月21日に金融緩和の「総括的な検証」を行っている。このなかで、2%の物価目標が実現していない理由を指摘している。当初は「予想物価上昇率の引き上げ」と「名目金利の引き下げ」による実質金利の引き下げが経済を刺激し、物価が上がるというメカニズムが働いたとした。それにより実施1年後には消費者物価は1.5%に上がったと結論づけた。

 物価の上昇基調は2013年4月の量的・質的緩和の決定のタイミングですぐに上向きはじめたように見える。タイムラグもなしに上向いたのは、大胆な金融緩和による予想物価上昇率が引き上げられたというよりも、外部要因によるものとの説明のほうが適切ではなかった。急激な円安と消費増税前の駆け込み需要等の要因で説明すべきではないのか。

 事実、日銀は物価が下がった要因について、2014年夏以降の原油価格の下落と消費税率の引き上げ後の需要の弱さ、2015年夏以降の新興国経済の減速とそれを受けた世界的な金融市場の不安定化という逆風を指摘し、この外部要因で実際の物価上昇率が低下してしまったとしている。それならば物価の上昇も外部要因で説明すべきものではないのか。

 つまり日銀による大胆な金融緩和だけで物価が動かせるものではない。金融政策はあくまで経済や物価の悪化を食い止めるための金融市場を通じた環境作りでしかなく、金融政策そのものが景気や物価を動かすものではない。

 ただし、この環境が変化すると金融政策の影響度が強まることも考えられる。金融政策ではなく外部環境がもしデフレ脱却の方向に向かいつつなれば、金融政策がそれを加速させることになる。ここにきての円安や米国株式市場の上昇もあっての東京株式市場の上昇は、それを予感させるものとなる。

 環境が変わると日銀の金融政策の影響にも変化が出てくる。金利については無理に引き下げても、実体経済に上向きの力がなければ生かされない。ところが実態経済に上向きの力が加われば、それに応じた金利上昇が予想されるが、それを日銀のイールドカーブ・コントロールで押さえつけることとなる。

 いわゆる「金融抑圧」や「高圧経済(high-pressure economy)」といった状況を強めることが予想される。実体経済に即した金利形成を阻害する形だが、それは景気そのものの回復力を強めることも予想される。しかし、これはなかなか危険な賭ともなりうる。

 日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で「イールドカーブ・コントロール」とともに、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」も打ち出している。つまり2%が見えるまでは、「金融抑圧」や「高圧経済」を続けるということでもある。

 実際に外部環境に本当の意味で変化が生じているのかどうかは、今後の経済物価指標等を確認する必要はある。金融政策では物は動かせなくても、その動きを加速させる要因ともなりうることで、今後の外部環境の変化にも注意しておく必要がある。

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# by nihonkokusai | 2016-11-29 09:59 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

トランプ氏勝利で流れが変わった金融市場を振り返る

 11月8日の米大統領選挙の結果、事前の予想を覆してトランプ氏が勝利した。大統領選挙の開票が行われていた時間に開いていた東京市場では、トランプ氏の優勢が伝えられると、日経平均は一時1000円以上も下げ16000円に迫った。しかし、10日の日経平均は1000円を超す上昇となって昨日の下げ分を埋めた。それどころか、そこからじりじりと上昇し、18000円台を回復した。

 この背景にあったのがドル高円安であり、ドル高の要因となったのが米長期金利の上昇となった。米長期金利の上昇の背景には、インフレへの懸念や米国の財政赤字の拡大懸念があった。さらにそこは12月のFOMCでの利上げ観測も強まりもあった。

 このような背景ではあったが、米国株式市場は利上げ観測や財政悪化などを理由に売られるどころかむしろ買い進まれた。11月21日の米国株式市場ではダウ平均、ナスダック、S&P500種株価指数の3指数そろって過去最高値を更新している。

 つまりトランプショックとも呼ばれた市場の動揺は一時的であり、むしろ金融市場ではトランプ氏の政策への期待感が強まったことになる。トランプ氏は既存概念を打ち破り、新たな政策への期待感が強まった。保護主義などへの懸念はあるものの、法人税減税などの財政政策や規制緩和への期待感が強まった。

 米国経済を見ても雇用面などがしっかりしており、FRBは歩みは遅いながらも正常化を進めてきた。すでにリーマン・ショックやギリシャ・ショックと呼ばれた世界的な危機は過去のものとなりつつある。日米欧の大胆な金融緩和も限界が見えてきたというよりも、その必要性が後退してきた。時代は危機対応から正常化への過程が、このトランプ氏の登場により、より明確になってきた。

 この金融市場の現象が一時的なものであるのかどうかは不透明ながら、少なくともドル円でいえば、今年初めのリスク回避の動きが始まる前の水準である120円近辺に戻ってもおかしくはない。日経平均は2万円という大きな節目も意識される。

 円安株高の流れは日銀にとっては願ってもないものとなろう。ただし、米長期金利が今後さらに上昇するとなると、日本の債券市場を取り巻く状況が変わってくる。日銀は9月の金融政策決定会合でイールドカーブコントロールとオーバーシュート型型コミットメントを打ち出した。しかし、これにあまりに縛られすぎると日本でも先行きの金利上昇期待が強まっても、日銀に金利が無理矢理押さえつけられる懸念がある。そもそも日銀が本当に金利を抑えられるのかという疑問も残る。トランプ氏の登場をきっかけに様変わりした金融市場を取り巻く環境変化に日銀がどう対応するのかも興味深い。

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# by nihonkokusai | 2016-11-28 18:43 | 国際情勢 | Trackback | Comments(0)

日銀による初の国債の指し値オペの目的は何だっのか

 日銀は11月は17日に初の国債の指し値オペをオファーした。この目的は何かと問われれば、トランプ相場によるところの米長期金利の上昇を受けての日本の国債利回り上昇の抑制となる。

 日経QUICKニュース社の取材に答えた日銀の金融市場局の担当者は、指し値オペの実施を初めて通知したことについて「短中期の金利の急速な上昇を踏まえたもの」とした。

 黒田日銀総裁は17日午前の参院財政金融委員会で、米金利の上昇につれて日本の金利に上昇圧力がかかる中、長短金利を操作目標としたイールドカーブ・コントロール政策の下では、日本の金利上昇を容認することはないと語った(ロイター)。

 日銀が17日は20年国債の入札日であるにも関わらず、異例の国債買入、しかも初の国債の指し値オペをオファーした背景には16日の債券相場の動きがあった。10年債利回りは16日の引け後にプラス0.035%まで上昇し、2年債利回りはマイナス0.095%、5年債利回りはマイナス0.040%に上昇したのである。

 日銀によるオペの指し値が、2年利付国債370回の買入利回りで-0.090%、5年利付国債129回の買入利回りは-0.040%とまさに16日に売り込まれた水準であったことからもそれが伺える。

 それでは何故、「長短金利」操作をうたった日銀が「中期」の金利の抑制に動いたのか。これは長期は0.035%まで上昇したとはいえ、概ねゼロ%という水準に近いことで動きづらい面があった可能性がある。それよりも16日の債券市場でまとまった売りが中期ゾーンに入り、中期ゾーンの利回り上昇に対して日銀が意識した可能性がある。

 当然ながらこの中期ゾーンの売りの要因なり売り手を探るため、日銀は市場関係者にヒアリングを実施した事も考えられる(通常でも意見交換はあると見られるが特に念入りに)。その結果、指し値水準から見ても16日の段階で17日中には初の国債の指し値オペを実施することを決めていたのではないかと思われる。国会に出席する黒田総裁の耳にも事前に入れておいたはずである。

 これにより日銀のイールドカーブコントロールが試される。17日の初の国債指し値オペの応札はゼロとなった。実勢利回りが指し値よりも低下したためのことではあるが、これで2年債と5年債の利回りの下値の防衛ラインが意識されることとなった。

 米金利はそれ以降も上昇基調となり、今後さらに上昇する事態も考えられる。また、16日の中期債の売り手が国内投資家ではなく海外投資家の可能性もある。日銀は無制限に買い入れるとしているが、海外の金利動向次第では、日本の長期金利形成が歪なものとなる可能性もある。為替介入でも自国通貨安を食い止めることに無理はあった。このようなことをもし日銀が続けるとなれば、いずれ日銀は市場参加者と立ち向かうことにもなりかねない。

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# by nihonkokusai | 2016-11-28 09:54 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

世界的なデフレ圧力の後退を予感させるトランプ氏の登場

 米大統領選挙でのトランプ氏の勝利は当初、金融市場では危機感を持って迎えられた。それが急速に期待感に変化したところが面白い。日経平均株価の日足チャートなどを確認するとわかるが、反発トレンドがいったんトランプ氏の登場で崩れかかっていたものが、再び上昇トレンドとなった。そもそも何かのきっかけで株高、ドル高の動きが生じやすい地合であったといえる。

 ドル円の上昇ピッチが速いこともあり、急激な円安が進行したかに思えるが、水準からすれば今年2月につけた120円台にすら戻っていない。今年初めからの中国など新興国の景気減速と原油価格の下落で、いわゆるリスク回避の動きが金融市場で急速に強まった。これを受けて日銀は1月に慌ててマイナス金利政策を講じることとなる。

 このリスク回避の動きは、英国のEU離脱という新たな要因を受けてからピークアウトすることになる。トランプ氏の勝利もそのリスク回避の動きを強めるとの観測もあったが、むしろリスクオフではなくリスクオン、つまりリスク回避の反動を加速させる要因となった。

 これは表面上はトランプ氏の経済政策などへの期待がある。しかし実際に大統領選挙の時の発言内容をすべて実行に移せるかは疑問である。それでも大きな変化が生じるであろうことも確かである。それを最も敏感に反映したのが米長期金利の上昇かもしれない。

 英国のEU離脱あたりまで、世界的なリスクとなる要因が次々と出てきたことや、原油価格の下落なども背景に、物価は上がりにくい状況が日米欧の先進国で継続していた。日本のデフレ病が欧米にも拡がったとの見方も出ていた。日欧の中央銀行が非伝統的な金融政策をこれでもかと続けていたことも、日米欧の長期金利を押さえつけた。

 ところがトランプ氏の登場はこういった世界的なデフレ圧力の後退を予感させることとなる。ここには原油価格の底打ち感などもあった。米国の雇用情勢をみてもかなり景気の改善が伺えるところに、日米欧の金融緩和もあってのいわゆる「高圧経済」と呼ばれるような環境となりつつある。

 そこに米国が積極的な財政政策を行うとの期待が加わり、インフレ圧力の強まり、さらにFRBの正常化が急がれる可能性が意識され、財政悪化懸念も加わっての米長期金利の上昇となった。これが日欧の長期金利にも刺激を与えた。

 このまま世界的なリスク回避の調整が起きるとなれば、異常とされる日米欧の金融政策にも当然変化が出てしかるべきである。つまり積極的な金融緩和によって支えられていた面が強かった新興国の株価や通貨がピークアウトすることとなる。トルコ・リラとインド・ルピーは対ドルでともに過去最安値を更新した。

 トランプ氏の登場は結果として金融市場にとっては良いニュースとして捉えられたが、事前に言われていたような米国の保護主義に傾斜する懸念は当然残る。これについてはあるエコノミストからこれもデフレ解消要因となりうるとの指摘があった。つまり、これまでの各国の努力が積み重ねてきたグローバル化の動きの流れが変わることとなる。グローバル化は関税障壁などを取り払うことである意味、デフレ要因となっていた。しかし、その動きが反対方向に向かうとなれば、それは結果としてデフレ解消要因ともなる。

 保護主義が台頭しているのは米国だけではない。世界的な流れでもある。欧州でも12月のイタリア国民投票や、来年のフランスやドイツの選挙の結果次第でそれが強まる可能性もある。

 個人的にはトランプ氏はあまり好きではないし、怖さも感じる。保護主義の流れは大戦前を思い起こさせる。それでも来年以降、世界の政治情勢が大きく変わってくることは避けられない。結果としては世界的なデフレ化からの脱却の流れになる可能性があり、それは少なからず日本にも影響してくることが予想されるのである。

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# by nihonkokusai | 2016-11-26 09:42 | 景気物価動向 | Trackback | Comments(0)

日本の物価を左右する原油価格の行方

 石油輸出国機構(OPEC)は30日の総会でリビアとナイジェリアを除く全加盟国が原油生産量を4.0~4.5%減らすアルジェリアの提案について協議する見通しとなっている。この総会で8年ぶりとなる減産合意が可能なのかが焦点となっている。

 いまのところ、協議ではイラン、イラク、インドネシアが難色を示していると指摘されている。実際に今月22日の専門家会合ではイランとイラクが減産に難色を示し、供給制限の詳細がまとまらなかった。

 ところが23日にイラクのアバディ首相は「イラクは価格安定のため減産する」と表明し、OPECの減産に参加する意向を示した。合意実行は難しいとされてきたが、合意の可能性も出てきた。

 主要産油国でもあるロシアのプーチン大統領は今月、凍結の準備は整っているとの認識を示したものの、増産凍結をどのように行うかについて決めかねているとの観測もある。

 このように30日に減産合意が可能なのかどうかは、依然として不透明である。しかし減産合意となれば、原油価格があらためて上昇してくる可能性がある。

 原油価格についてはWTI先物がいわゆるベンチマークとなっている。WTIは今年に入ってからの中国など新興国の経済成長の鈍化などを嫌気して、一時30ドル割れまで下落した。ここでいったん底打ちとなり、50ドル台を回復した。しかしここから上が重くなり、ここにきて50ドル近辺での推移が続いている。

 30日のOPEC総会で減産合意となればWTIはもみあいから脱し、トランプラリーとなっている金融市場の動きと相まって、60ドルあたりまで回復する可能性はある。合意とならずとも、米国経済成長の期待などから大きく下がることも考えづらい。50ドル近辺でのもみあいが継続すると予想される。

 いずれにしても原油価格の下落傾向は止まったとみて良いかと思われる。どこまで回復するのかは不透明ながら、これは原油価格の動向に影響を受けやすい日本の物価に対して下方圧力の後退を意味しよう。

 外為市場では円安が進行し輸入物価の上昇による物価への上昇鬱力も加わり、マイナスに落ち込んでいる日本の物価は(10月のコア全国消費者物価指数は前年比マイナス0.4%)今後次第にプラス圏に転じてくることが予想される。

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# by nihonkokusai | 2016-11-25 09:41 | 景気物価動向 | Trackback | Comments(0)
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