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異次元緩和の効果の検証

日銀のよる大胆な国債買入を中心とした異次元緩和は果たしてデフレからの脱却を可能にしたのか。9月の日銀の金融政策決定会合で示される総括的な検証では、このあたりについても具体的に検証されるであろうと期待したい。

量的・質的緩和を決定してから数日経っての2013年4月12日の講演で黒田日銀総裁は次のように発言していた。

「買入れの平均残存期間を、現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長しました。これまでのような短めの金利だけでなく、イールドカーブ全体の金利低下を促すことにより、経済・物価への働きかけを強めていくためです。」

この際に異次元緩和のトランスミッション・メカニズム(波及経路)として黒田総裁は3つの経路を指摘した。国債の金利全体やプレミアムに対する働きかけること、ポートフォリオ・リバランシングの効果、さらには期待を通じた効果となる。

最初に指摘した働きかけは確かに効果があった。国債の利回りは低下し、今年1月に決定したマイナス金利政策も加わって、今年7月には20年債利回りもマイナスとなる場面があった。

しかし、問題はここから先となる。金利は素直に低下した。しかし、それによって貸し出しなどが目に見えて増加してはいない。金利低下が結果として物価上昇に働きかけることもなく、物価は低迷している。ここにはそもそも金利から物価へと繋がるはずのトランスミッション・メカニズムが働いていなかったことになるのか。そうであれば、いくら金利を深掘りしようともあまり意味がないということになる。

「これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が、株式や外債等のリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸出を増やしていくことが期待されます。これは、教科書的にはポートフォリオ・リバランス効果と言われるものです。長期国債の買入れの平均残存期間を思い切って延長したのは、この効果を意識したものです。」

ポートフォリオ・リバランシングの効果については、GPIFも巻き込んで国を挙げて実施した格好となった。年金運用で株式投資の比率を高め、日銀もETFなどを積極的に購入した。国債が日銀に買い占められ、さらにその利回りがマイナスとなったことから、機関投資家は外債などに資金をシフトせざるを得なくなった。

ところが米国の株価指数が過去最高値を更新しているにもかかわらず、日経平均は戻り切れていない。ドル円もここにきて一時100円を割り込むような状況となっている。はたしてポートフォリオ・リバランシングにどのような効果があったのか。それがどのようにして物価に波及するはずであったのか。このあたりの検証結果も確認したいところである。

そして最後の期待を通じた効果というものが一番良くわからない。これは期待を図る道具がないため検証しようにもできないためである。当初、日銀は物価連動国債から算出されるブレーク・イーブン・インフレ率を使おうとしていたが、それはあまり意味のないものであることがわかったようで、最近はあまり使っていない。アンケート調査にしても、それをもし自分が答えるときに何をもって1年後の物価が予想しうるかを考えると適格な予想が出せる自信はまったくもってない。

学問上での期待は存在するかもしれないが、日銀が操作しうる期待がどこに存在しているのかかがわからない。少なくとも日銀が国債を大量に購入したら、その期待が動くという理屈がわからない。このあたりについても日銀の検証で具体的な説明がほしいところである。


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# by nihonkokusai | 2016-08-25 10:01 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

7月の国債売買はさほど盛り上がらず

 8月22日に日本証券業協会は7月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

7月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -975(-865、748、-482)
地方銀行 -5351(-2377、-2446、161)
信託銀行 1237(-559、2950、464)
農林系金融機関 -2048(-1598、76、155)
第二地銀協加盟行 -1678(-800、-520、-20)
信用金庫 -3089(-2382、381、520)
その他金融機関 1842(-388、984、1335)
生保・損保 -3402(-2875、439、382)
投資信託 682(541、218、510)
官公庁共済組合 -175(-47、-3、3)
事業法人 -264(12、-22、2)
その他法人 -73(-37、289、130)
外国人 -16693(1860、-4453、-13200)
個人 432(2、33、6)
その他 11357(10690、3833、731)
債券ディーラー -304(53、487、-763)

 都銀はそれほど金額は大きくはないが買い越しに転じた。6月に大きく売り越していた地銀は買い越しとなっていた。長期ゾーンを買い戻した格好に。海外投資家は中期ゾーンを主体に引き続き大幅買い越しとなった。買い越しは25か月連続となっている。

 国債の投資家別売買高(一覧)での合計の国債売買高でみてみると2016年5月分の国債売買高は162兆1940億円となり、統計のある2004年4月以降最低となっていた。しかし、6月は201兆7760億円とかなり回復していた。6月は英国のEU離脱によりリスク回避の動きを強め、日本国債も買い進まれていたことで売買高が膨れた面もあった可能性もある。そして7月の数字をみると183兆9885億円と6月から減少していた。

 7月に入り米10年債利回りは一時1.3%台をつけ過去最低を更新し、30年国債の利回りも過去最低を更新した。ドイツの10年債利回りもマイナス0.2%台をつけ、スイスの50年債利回りが初のマイナスとなった。この世界的な金利低下の動きもあり、日本の債券市場も連日のように国債は過去最低利回りを更新した。バーナンキ前FRB議長が日銀総裁や安倍首相と会談したことでいわゆるヘリコプターマネー政策への期待も出ていた。日銀の追加緩和期待なども出たことで債券先物は過去最高値を更新するなど買い進まれた。

 しかし、7月29日の日銀金融政策決定会合では「金融政策の強化」としてETFの買入を現行の3.3兆円から6兆円とすることなどを決定。一部期待のあったマイナス金利の深掘りや国債買入の増加などは見送られた。これをきっかけに債券相場は調整局面入りすることとなった。

 7月は債券先物が高値を更新するなどしていたが、全体の現物出来高はそれほど多くはない。相場が調整局面を迎えた8月に特に海外投資家がどのような動きを示し、売買高にどのような影響があったのか。債券の流動性が低下しつつあるのかどうかは、8月の数字を確認する必要もありそうである。

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# by nihonkokusai | 2016-08-24 10:14 | 債券市場 | Trackback | Comments(0)

FRBの9月利上げへの地均しか

 FRBのフィッシャー副議長は21日、コロラド州のアスペン研究所での講演において、米経済が既に金融当局の掲げる目標の達成に近づいており、成長が今後勢いを増すだろうと述べ、これまでの姿勢に変化がないことをあらためて示した。これは少なくとも年内1回の利上げの可能性を示唆したものと受け止められた。


 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は16日のインタビューで、追加利上げが適切となる時期にじわじわと近づいていると述べ、9月20、21日の会合で利上げを決定する可能性はありうると指摘した。フィッシャー副議長はここまで具体的なコメントはしなかったが、追加利上げに向けて引き続き前向きの姿勢であることを示した格好となった。


 26日にイエレン議長の講演を控えているにも関わらず、相次いでFRBの執行部から利上げに前向きとも取れる発言が相次いだのは何故であろうか。これは6月と7月のFOMCで利上げが見送られた上に、イングランド銀行が包括緩和策を決定するなどしたこともあり、市場ではFRBによる年内利上げ観測が急速に後退した。しかし、FRBのスタンスには大きな変化はないことをあらためて示す必要性を感じたためとの見方もできるのではなかろうか。


 本来であれば、次の政策変更を予定していたとしても市場に対しては過度な先入観を与えないようにするため、イエレン議長やフィッシャー副議長、ダドリー総裁などはバランスを保つことをこれまで重視していた。誰かが利上げに前向きな姿勢を示すと、別の人物がそれにブレーキを掛けるなどして調整を図っていた。ところが今回は市場が利上げの可能性を後退させてしまい、特に9月の利上げの可能性を指摘する向きは少数派となっている。市場との対話の上でこの予測を多少なりとも引き寄せることが、このタイミングでのダドリー総裁やフィッシャー副議長の発言の意図となっていたのではなかろうかとも推測されるのである。


 そうなると26日のジャクソンホールで予定されているイエレン議長は、バランスを取るというよりも、フィッシャー副議長と同様に英国のEU離脱というショックや一時的な米雇用統計の数字の悪化があったにも関わらず、FRBのスタンスには大きな変化はないことを示す可能性が高いと思われる。その上で9月のFOMCで利上げを決定する可能性がありうることを示唆してくるのではなかろうか。


 米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは、市場参加者にとり大きな注目材料となっている。過去の歴史を見ても、このシンポジウムでは主に金融政策に関わる興味深い出来事が多かった。


 2013年5月22日にバーナンキ議長(当時)の会見でテーパリングの意向が明らかとなったことで、9月のFOMCでテーパリング開始が決定されるのではないかとの観測が強まっていたが、この年のジャクソンホールにバーナンキ議長は異例とも言える欠席をした。


 2015年には年内利上げをすでに示唆しているイエレン議長も本来であれば主催者ともいえる立場でありながら(形式上はカンザスシティ連銀主催)、ジャクソンホールは欠席していた。


 今年も仮に9月に利上げを模索するのであれば上記の伝統?に従えば、欠席してもおかしくはない。しかし、FRBの利上げのターゲットは9月の前に予定していたとすれば、今回特に欠席する必要性はなかった。


 ただし状況は変わり今回のジャクソンホールでのイエレン議長の講演があらためて注目されるようになった。ここをむしろ利用して市場との対話を図る可能性がある。その前座となった格好のダドリー総裁やフィッシャー副議長の発言内容がその内容を示唆していると思われる。やはり9月のFOMCでの利上げ決定の可能性は市場が意識しているものより、高いのではなかろうか。



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# by nihonkokusai | 2016-08-23 10:03 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

日銀による国債買入の歴史

昭和39年の東京オリンピックに向けたインフラ整備などの反動から昭和40年不況が起き、戦後初めてとなる国債発行が準備された。1966年1月に、戦後初めての国債が、期間7年、利率6.75%で2千億円発行された。次いで1966年当初予算から本格的に国債が導入され、3月からは大蔵省資金運用部による国債の引受も開始された。

昭和40年代に発行された国債は国債引受シンジケート団と大蔵省資金運用部によって引き受けられていた。シ団引受の一部は市中消化されたが、ほとんどはシ団メンバーの金融機関が保有した。金融機関が引き受けた国債の市場売却は事実上自粛され、国債の利率も低く抑えられていた。

ただし、1967年1月より日銀は買入債券の対象に発行後1年経過の国債を追加したことで、金融機関の保有する国債はほぼ全額このオペによって吸収されたのである。これが日銀の国債買入の始まりである。

1977年に金融機関の取得した国債の流動化がスタートした。日銀オペで吸収される国債の比率が低下し、都銀等の預金増加額に占める国債引受の割合が急増していたため、借換債の発行をしていなかった特例国債の市場売却については各金融機関の自主的な判断に委ねられた。ただし、引き受け後一年間は引き続き売却を自粛することとされた。また建設国債に対しても借換方式を見直すことを前提に流動化が開始された。

1985年6月に金融機関の債券のフルディーリングが開始された。10月には東京証券取引所に日本ではじめての金融先物市場が誕生した。国債は流動性が向上することとなり、債券市場は急速に拡大した。

1993年1月に大蔵省資金運用部が初めての国債買い入れを実施した、1998年にその運用部の国債買入停止観測などをきっかけに運用部ショックが発生。結局、運用部の買入は継続されたが、2001年4月から財投債の発行が開始されたことで資金運用部の国債買い入れは停止された。

日銀は2001年3月19日の金融政策決定会合において量的緩和策を決定し、国債買い入れの額をそれまでの4千億円から増額した。ただし、国債買入れについて日銀券の発行残高というキャップをつけた。

2002年1月に日銀は国債買い入れオペ対象を発行年限別の直近発行2銘柄を除くに拡大した。1967年1月に日銀は発行された国債が1年経過した国債を買い入れオペに加えることを決定したが、日銀はこの1年ルールも変更することにしたのである。この量的緩和時代も日銀は数度にわたり国債買入の額を増額させた(除く福井総裁時代)。

2010年10月の包括緩和政策では、これまでの国債買入れとは別枠で国債を買入れる方針を示した。日銀券ルールに縛られない実質的な国債買入の増額となった。ただし、買入対象は中期債に限定していた。

これらのルールを完全に覆したのが2013年4月の量的・質的緩和である。長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行うこととし、長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長した。

2014年10月の量的・質的緩和の拡大で長期国債については保有残高が年間80兆円に相当するベースで増加するよう買入れを行うこととし。買入れの平均残存期間を7~10年程度に延長したのである。


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# by nihonkokusai | 2016-08-22 09:43 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

日銀の政策立て直しへの注意点

 9月の日銀金融政策決定会合での総括的な検証を元にして、日銀は金融政策そのものの立て直しを図る可能性がある。しかし、その際に注意すべきポイントがいくつか存在する。


 そのひとつが2013年1月に内閣府と財務省、日本銀行の連名で公表された「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」という共同文書である。いわやるアコードである。このなかに下記の文章が存在する。

 「日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。」


 日銀はここで「消費者物価の前年比上昇率で2%」という物価目標を設定している。これは政府との約束事でもあり、日銀が独自でこの旗を降ろすことはできない。もしこの日銀の目標を名目GDPに変えるとか目標の数字を変えるとなれば、あらためて政府と共同文書を結び直す必要がある。これは日銀単独の作業とはならない(日銀が自ら縛りをつけてしまった感もあるが)。


 この共同文書には下記の文章も存在していた。


 「日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。」


 9月の日銀の総活はこの共同文書の趣旨に則ったものとの見方もできるかもしれない。そうであれば、「金融面での不均衡の蓄積」などが総活のひとつのポイントになる可能性がある。特にマイナス金利政策でこの面のリスクが指摘されており、マイナス金利政策については深掘りどころか、その修正が求められることになると予想される。


 そして量という側面からみると日銀の政策を縛りかねない別の目標が存在する。それがこの共同文書が出されてから数か月後に決まった「量的・質的緩和政策」にある。2013年4月4日の金融政策決定会合議事要旨には下記のような記述がある。


 「量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更し、金融市場調節方針を以下のとおりとする。」


 現在の日銀の金融政策の操作目標は何かと出題されたら、公定歩合や無担保コール翌日物金利という解答は不正解である。答えはマネタリーベースとなる。つまり、日銀にとっては本来、金融政策の変更を行うのであればこのマネタリーベースの数字を変える必要があったはずである。たとえば政策目標が公定歩合であったときはその金利の上げ下げが政策変更であった。


 日銀は2014年10月に量的・質的緩和政策の拡大を決定した際にマネタリーベースの目標値を変更したが、今年1月の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入の際には、この政策目標の変更はせずにマイナス金利に該当するものが政策金利であることも明確にしないなかでの政策変更を行っている。


 このあたりから操作目標がかなり曖昧となってしまった。今年7月にはやはりマネタリーベースの目標は据え置いて、ETFの買入れ額の増額だけを決定している。これを日銀は追加緩和としているが、このときの声明文のタイトルが「金融緩和の強化について」としたのは白川総裁時代の政策金利を維持した上での資産買入等の基金の増額時と同様の認識があったものとみられる。


 このように現在の日銀の金融政策は短期決戦を狙っていたが効果が出なかったこともあり、金融政策が今年に入って継ぎ接ぎのような格好となってしまっている。今回の総活ではこのあたりの整理も必要ではなかろうかと思われる。つまりもし量と質と金利の三本柱で今後も走るのであれば、もう少し明確な操作目標の設定も必要ではなかろうか。そうすればあらためて追加緩和の可能性を広げることも可能かもしれない。ただし、べき論からすれば、そんなことよりも出口を見据えた戦略を練ってほしい気がするのだが。



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# by nihonkokusai | 2016-08-20 11:56 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

日銀が本来すべき総活とは

9月20、21日の金融政策決定会合では議長(恒例により通常は日銀総裁)から指示のあった「総括的な検証」が発表される予定となっている。企画を中心とした執行部はその取りまとめを現在行っていると思われる。

フレームワークの調整としては外部要因による影響も考慮して、もう少し期間や量の幅などを柔軟にするといったことが予想される。マイナス金利政策については金融庁からも指摘があった以上、深掘りは選択肢に入れることはできないとみられる。むしろ1月に決めた多段階方式をさらに複雑化させて金融機関に配慮するようなことも予想される。日銀が現在の前向きの姿勢を維持している限り、このような予想にならざるを得ない。

しかし、いつまでもこのような異常ともいえる政策は続けるべきではない。短期決戦を狙ったものの、当初の勢いはなくなり戦線は拡大したが、いたずらに量を増やすだけとなり、金融市場を混乱させてしまっている。開戦を画策した当事者たちからは玉砕戦法とすらいえるヘリコプターマネーまで持ち出される始末である。

ここで日銀が本来すべき総活とは、これまでの政策の前提に間違いはなかったのかとの点に絞るべきであろう。単純にマネタリーベースといった量を増やし、長い期間の国債を含めて大量に購入した結果、引き返しが困難な状況に自らを追い込むことで何か変わったのか。これでレジームチェンジは起きたのかとの検証である。

アベノミクス開始後の一時的な円安株高はあくまでタイミングが良かっただけである(欧州リスクの後退によるリスク回避の巻き戻し)。目標とする物価はたしかに一時前年比プラス1.5%まで上昇した。この点についての検証もほしいところであるが、円安や消費増税前の駆け込み需要等てせの説明も可能であろう。その後再びマイナスに落ちている以上は、レジームチェンジが起きたことでの物価の前年比の上昇とは結論づけることも難しい。

雇用の回復が仮に異次元緩和などの効果だとするのであれば、物価の上昇を経由せずに可能になった理由の説明も必要になる。雇用の回復といっても失業率等だけでは判断できない面もあるのも事実。

これらから導き出される結論は、大胆で思い切った金融緩和により、物価を含めた経済の回復に直接影響を及ぼすことはできなかったという事実ではなかろうか。

金融緩和は本当の意味での治療薬ではなく、金融市場を沈静化させる麻酔薬に過ぎない。ただし、国債の利回り低下に働きかけたことは確かである。しかし、長期金利がマイナスに低下したからといってファンダメンタルズが劇的に改善するわけでないことも実証した格好となっている。

これらからみた結論は大胆な緩和策を見直すことにあるのではなかろうか。すでに量と金利の面からは限界も見えている。質かどうかはわからないがETFの買入増額はむしろ市場の秩序を乱すとの指摘も出てきている。国債の買い入れに額については早期にテーパリングを進めるべきであり、マイナス金利政策も止めるべきものと言えよう。

ここまで膨らんでしまった日銀のバランスシートはついては、この水準を当面維持させることで緩和効果は継続するとの主張をすることで、緩和政策からの後退ではなく、この緩和状態を維持させて効果を見守るといった姿勢に変更できないだろうか。これは正常化を進めているFRBに近い策となる。

そうはいっても為替市場や株式市場の反応が恐い面もみあろうし、ここまで金利が下がっている長期金利の反発も市場を混乱させる懸念がある。しかし、どこかで決断しないことには、むしろ市場によっていずれ出口政策追い込まれてしまうというリスクも存在しよう。


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# by nihonkokusai | 2016-08-19 09:56 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

FRBの9月利上げに意外性はない

 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は16日のインタビューで、追加利上げが適切となる時期にじわじわと近づいていると述べ、9月20、21日の会合で利上げを決定する可能性はありうると指摘した(ブルームバーグ)。

 アトランタ連銀のロックハート総裁も16日の講演で、「現段階でいかなる政策の立場にもとらわれていないが、経済に対する私の自信が正当化されるのであれば、年内に少なくとも1回の政策金利引き上げが適切になるかもしれないと考える」と述べた(ブルームバーグ)。

 ここで注目すべきは執行部の一人でもあるダドリー総裁の発言であろう。ハト派とされているはずのダドリー総裁の今回の利上げに向けた発言の背景には当然ながら、正常化路線を進めようとしているイエレン議長がいると思われる。

 米国市場では5日に発表された7月の米雇用統計の内容が良かったことで、年内利上げ観測が強まった。しかし、それも9月ではなく12月との見方の方が多いし、年内利上げは難しいとの見方も依然として存在している。こにきて米国の株価指数は過去最高値を更新しており、米長期金利は低位で安定している。そこに市場参加者にとってサプライズ的に9月に利上げを決定すると、その反動は大きくなる懸念がある。そこで9月の利上げに向けて、あらためて地均しを始めたと私は見ている。

 しかもそのタイミングが7月のFOMC議事要旨の発表前というのもなかなか興味深い。昨年12月のFRBの利上げ以降、次の利上げのターゲットは6月と見ていた向きは多かったのではなかろうか。イエレン議長のシナリオも仮にそうであったとしたら、6月は予定通りに利上げを見送ったのではなく、想定外の事情により見送らざるをえなかったとの見方ができる。その想定外の出来事とは英国のEU離脱であった。

 6月のFOMCは国民投票前ではあったが、世論調査で離脱観測が強まり市場は動揺していた。ここでの利上げ決定は見送らざるを得なかった。7月のFOMCでは実際に英国のEU離脱が決まり、それによる影響を見極める必要があり、ここでも利上げは見送られた。

 16日に公表される7月のFOMCの議事要旨の内容は、市場からはある程度利上げに慎重と捉えられる可能性があった。実際に公表された議事要旨では、完全雇用に近い状態だとして利上げを進めても問題ないとの指摘がある一方、追加引き上げを遅らせるのが望ましいとの意見があるなど意見が割れていた。利上げを見送った以上はこういう結果にならざるを得ない。それをみて市場は9月の利上げも困難と解釈してくることも予想される。そこでダドリー総裁は先手を打ってきたという見立てもできなくはない(インタビュー等をこういう目的で使ったであろう事例は過去ある)。

 利上げというが、米国のファンタメンタルズはそれほど良くはない、英国のEU離脱ばかりでなく、中国の経済減速などリスクが山積しているなか、日銀、ECBに加えイングランド銀行も大胆な緩和をせざるをえない状況下、FRBだけが利上げするのはおかしい、との見方もある。

 しかし、おかしいのはむしろ日銀、ECB、イングランド銀行の方ではなかろうか。市場の動揺を抑えるため、もしくは通貨安を招くためとして、非常時の緩和策をさらに深掘りすることにどれだけの効果があるのか。むしろ日銀のマイナス金利政策のように、弊害が目に見えて大きくなっているものも出てきている。

 そのなかにあってFRBが、雇用等のファンダメンタルズの改善の後押しもあるが、異常な緩和策からの脱却を図るというのは当然のことであろう。そのスケジュールが少し延びたものの、正常化路線を諦めるほど経済実態やマーケットは悪化してはいない。このため、予定通りに正常化路線歩むのであれば、9月の追加利上げは当然視野に入る。むしろ12月まで待つ方が、大統領選挙後ともなり政治リスクが入り、利上げがしにくくなる懸念もある。

 上記のシナリオに異を唱える人も多いかもしれないが、イエレン議長が正常化路線を諦めていないことは、少なくとも今回のダドリー発言で裏付けられたと思う。そして、26日のジャクソンホールの講演でそれをイエレン総裁自ら明らかにするのではなかろうか。9月の米利上げが決定されるとしてもそれは全く意外ではない。

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# by nihonkokusai | 2016-08-18 09:31 | 中央銀行 | Trackback | Comments(0)

日銀のマイナス金利の深掘りはいよいよ困難に

 13日に日経新聞は次のような記事を掲載した。

 「金融庁は日銀のマイナス金利政策が、3メガ銀行グループの2017年3月期決算で少なくとも3000億円程度の減益要因になるとの調査結果をまとめた。同庁は収益悪化が銀行の貸し付け余力の低下につながるとみて、日銀に懸念を伝えた。調査結果は日銀が9月に予定するマイナス金利政策の「総括的な検証」の材料になる見通しだ。」

 この記事を受けて15日の日本の債券市場では中長期債主体に売り込まれた。急落したわけではないものの、戻り売りに押された格好となった。この記事のなかで影響があったのは、金融庁が日銀に懸念を伝えたとの部分であり、これも9月の日銀が発表する総括的な検証に組み込まれ、ますますマイナス金利政策の深掘りが困難になるのではとの見方によるものと思われる。

 日銀は4月の金融政策決定会合で将来のマイナス金利深掘りに備え、銀行への貸し出しにマイナス金利を適用する追加緩和策を模索していたのではないかとの見方があった(6月16日の産経新聞「「銀行は貸し出し努力を」マイナス金利批判に有識者注文」より)。

 「都市銀行関係者によると、日銀は4月の金融政策決定会合で、将来のマイナス金利深掘りに備え、銀行への貸し出しにマイナス金利を適用する追加緩和策を模索。金融機関が日銀からお金を借りれば利息をもらえるため、銀行の収益悪化が和らぐという案」が日銀から内々に打診があったものの、これ受けた大手銀幹部は「銀行も貸出先に利息を払わなければならなくなり、利ざや縮小に拍車が掛かる」と抵抗し、導入は見送られたとしている。

 たしかに4月の金融政策決定会合では日銀の追加緩和期待が妙に盛り上がっていたが、結局、追加緩和は見送られた。その背景にはこのような動きがあった可能性がある。

 三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長が4月の講演で「(家計や企業の)懸念を増大させている」と政策効果に苦言を呈していた。その三菱東京UFJ銀行は国債市場特別参加者制度の資格を返上したが、前述の産経新聞の記事によると三菱UFJ幹部は、国債入札の特別資格返上に関し、追加の金融緩和を牽制する狙いもあったことを認めたとも伝えている。

 また16日には次のような記事も日経新聞に掲載された。

 「ゆうちょ銀行は2007年10月の郵政民営化に合わせて無料とした同行利用者どうしの送金手数料を、今年10月から9年ぶりに復活させる。月3回の利用までは無料のままにするが、4回目から1回あたり123円を徴収する。日銀のマイナス金利政策で資金運用の収益が細るなか、無料でサービスを続けるのは難しいと判断した。」

 5月にゆうちょ銀行の池田憲人社長はインタビューで、日銀のマイナス金利政策が同行の収益に与える影響について「決してプラスではない」と述べていた。メガバンクばかりか、ゆうちょ銀行からもやんわりとマイナス金利政策への批判が出ていたが、ゆうちょ銀行はその対策の一環として手数料収入に目を向けたものとみられる。

 しかし、メガバンクはそれなりの収益を維持しており、たとえ3000億円の収益減となっても大きな打撃とはならないのではなかろうか。これはゆうちょ銀行も同様であろう。今回の金融庁の懸念とは、マイナス金利によって貸し出しが伸びるどころか抑制されるという、効果よりも副作用の面があることを伝えることが目的かもしれない。しかし、本質は違うところにある可能性がある。

 言うまでもなくマイナス金利政策とそれによる国債の利回りのマイナス化などにより、大きな被害を受けるのは大手銀行ばかりではない。むしろ地銀や比較的規模の小さい金融機関の方が被害は大きいはずである。運用において悲鳴を上げているのがこれらの金融機関であり、金融庁の懸念はこれを意識したものとの解釈もできまいか。

 いずれにしても金融機関の収益を削ることにより、その波及経路はわからないが、物価目標を達成するという日銀の建前ではあるが、結果は金融機関の経営を悪化させるだけともなりかねない。

 ここからさらにマイナス金利政策の深掘りをするというのであれば金融機関にさらなる悪影響を与えかねない。銀行の銀行である日銀が銀行を苦しめるという構図は決して日本経済にはプラスにはならない。日銀によるマイナス金利政策の深掘りはこれらの要因により、さらに困難になったと見ざるをえない。

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# by nihonkokusai | 2016-08-17 09:35 | 日銀 | Trackback | Comments(0)

アベノミクスでレジームチェンジは起きず

 世界最速でデフレからの脱却に成功させた高橋財政を模範にしたのが、アベノミクスと言える。これは安倍晋三首相が口にした「レジームチェンジ」という言葉にも現れていた。本田悦郎内閣官房参与(当時)は2013年2月の時事通信社とのインタピューで次のように語っている。

 『「レジームチェンジ」、つまり金融政策の枠組みを変えることによって、緩やかなインフレ予想を国民に持ってもらうことが重要だということです。デフレに順応するのではなくて、デフレと闘う積極的な金融政策、積極的な日銀を演出する。そのためには、それまで日銀がやっていたような小出しの金融緩和ではだめです。2%のインフレ率を達成するまでは「無制限」に国債、特に長期国債を買っていくとアピールすべきだと申し上げました。「レジームチェンジ」「無制限国債購入」でいきましょうと。』

 安倍首相がレジームチェンジという用語を口にしたのは、本田氏の助言による可能性もあった。本田氏の当時の主張は日銀が無制限に国債、特に長期国債を買っていくと2%の物価目標が達成できるというものであった。

 それを日銀は2年で達成するとしたのが2013年4月に決定した量的・質的緩和政策であった。それから3年4か月が経過したが、日銀が目標と置いた消費者物価指数(総合)の直近の数字はマイナス0.4%である(今年6月分)。

 レジーム転換(レジームチェンジ)という用語を調べて見ると、このような説明があった。

 「需要がないから、いくら資金を供給しても無駄という受動的な金融政策のスタンスを、事前に決められたインフレ率に到達するまで積極的に資金を供給し続け、断固としてデフレに立ち向かう、という能動的な金融政策へ転換させることを意味している」(「平成大停滞と昭和恐慌」田中秀臣・安達誠司著)。

 この本のなかで、レジーム転換の事例として、高橋財政における1931年11月の禁輸出禁止と1932年12月の日銀の国債引受開始をあげている。これは日銀副総裁である岩田規久男の「昭和恐慌の研究」で示したリフレ政策であり、アメリカの経済学者であるトーマス・サージェントやピーター・テミンらの「政策レジームの変化」の研究を踏まえ生まれたものとされている。

 アベノミクスは岩田規久男日銀副総裁や、浜田宏一内閣官房参与、本田悦朗内閣官房参与などいわゆるリフレ派と呼ばれる人達の考え方が強く反映されている。そのリフレ派の人達が、デフレ脱却の見本としたのが高橋財政であり、特に1931年11月の禁輸出禁止と1932年12月の日銀の国債引受開始という二段階でのレジームチェンジによりデフレ脱却を可能にしたとしていた。

 果たして高橋財政が今の時代でも通用するのか。そもそもアベノミクスと高橋財政では時代背景がまったく異なるものである。そのような背景を無視しても2%のインフレ率を達成するまでは「無制限」に国債、特に長期国債を買っていくとアピールでレジームチェンジが起きて物価は上がるとした本田氏の主張は結果として正しくはなかった。

 むしろ日銀は2013年4月の大胆な国債買入だけでなく、2014年10月はその規模を拡大したが、少なくとも目標とした物価については成果は出なかった。規模の拡張が困難になると今年1月にはマイナス金利という政策を打ち出したが、これは長期金利をマイナスに引き下げるという結果は出ても、物価や景気に対する目に見えた効果もなく、むしろマイナス金利への弊害が指摘された。

 アベノミクスによる大胆な国債買入でレジームチェンジは起きたのかという問いがあれば、この結果を見る限り起きなかったと判断せざるをえない。消費増税の影響、原油安等は言い訳に過ぎないことも上記の本田氏の発言等で明らかである。さらにここから大胆な金融緩和を行えばインフレ目標達成が可能という理屈にも無理がある。

 「金融政策が提供できるのは経済の不確実性に対する短期的な鎮静剤にすぎない」とイングランド銀行の チーフエコノミスト、アンドルー・ホールデン氏が述べたそうであるが、これが本来の見方であり、黒田総裁前の日銀も同様の主張をしていた。日銀はこの原点に回帰すべきであるが、少し派手に進み過ぎて後戻りもできない状況に自らも追い込んでしまっている。9月に多少なりその軌道修正は可能なのであろうか。

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# by nihonkokusai | 2016-08-16 10:05 | アベノミクス | Trackback | Comments(0)

米利上げ時期を左右しかねないブレイナードFRB理事

 現在のFRBでの要注意人物としては当然ながらイエレン議長がいる。さらにそれを補佐するフィッシャー副議長も注意すべき人物である。さらにここにニューヨーク連銀のダドリー総裁も含めて、いわば執行部とされる人物の発言には今後の金融政策の動向をみる上で注意が必要となる。

 しかし、ここにもうひとり利上げ時期を左右しかねない要注意人物が存在している。その人物とは、ラエル・ブレイナード理事である。日本の為替政策にも大きな影響を与えていた人物である。

 たとえば、2013年2月12日のG7による緊急共同声明について、円の過度な動きに懸念を表明することがG7の目的だったとの匿名のG7筋による発言があった。この匿名のG7高官とはブレイナード財務次官である可能性が高いとされた。

 ブレイナード財務次官(当時)はご主人がカート・キャンベル元東アジア・太平洋担当国務次官補で親日家であるが、こと為替政策についてブレイナード氏は安倍政権の動きを牽制していた。そのブレイナード氏はいまFRBの理事となっている。

 ブレイナード元財務次官が何故、FRBに送り込まれたのか。それは現政権とFRBの橋渡し的な役割を与えられているとの見方は当然できる。このブレイナード理事の部屋が近頃、イエレン議長の部屋の近くになったとの観測もある。

 しかも今年は大統領選挙の年であり、民主党のヒラリー・クリントン氏が大統領となった際の財務長官の候補のひとりに、ブレイナード氏の名前がすでに挙がっている。

 ブレイナード氏のFRB理事としてのこれまでの発言をみると、利上げを急ぎ過ぎることに対して警鐘を鳴らすなど、いわばハト派といえる。正常化を急ぐイエレン議長に対してブレーキを掛けている存在でもある。

 このブレイナード氏の勢力が増しているため、FRBの年内利上げが難しくなるとの見方も存在する。しかし、そうはいっても正常化路線はイエレン議長が進めている政策であり、フィッシャー副議長の賛同があり、積極的ではないにしろダドリー総裁も賛同すれば、理事の立場からブレイナード氏は反対しにくくなる。

 ただし、大統領選挙の結果が明らかになりクリントン氏が仮に大統領となれば、ブレイナード氏を通じて新政権の意向が伝えられるような事態も予想される。そうであるのであれば、イエレン議長としては12月まで利上げを待つというのは政治的なリスクが出てくる可能性もある。そういった意味で経済指標等を確認した上ではあるが、FRBの9月の利上げの可能性は意外と高いのではないかとの見方も出来るのではなかろうか。

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# by nihonkokusai | 2016-08-15 09:31 | 中央銀行 | Trackback | Comments(0)
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