牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

日銀の物価目標は2%で本当に良いのか

26日に「金融政策決定会合における主な意見(2017年6月15、16日開催分)」が公表された。このなかで「金融政策運営に関する意見」について確認してみたい。

「物価の伸びが鈍い背景には、人々の将来不安や適合的期待形成などやや構造的な要因もある。ごく短期間で「物価安定の目標」を達成することは容易でなく」(主に意見より)

2013年4月に「量的・質的緩和」の導入を決定した際には、日銀は「消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と明確に表明していた。それが2年でできなかったことを日銀自ら証明した格好だが、その言い訳として上記の文言が果たしてふさわしいものといえるであろうか。言い訳にしか聞こえないのだが。

「2%の「物価安定の目標」の達成には未だ距離があるが、「量的・質的金融緩和」は、雇用の改善、消費の継続的な増加、財政状況の改善という成果を上げている。」(主に意見より)

これについては2013年4月に黒田総裁が波及経路として次ぎのような説明がなされていた。

「物価安定目標の早期実現を約束し、次元の違う金融緩和を継続することにより、市場や経済主体の期待を抜本的に転換する効果が考えられます。先ほどお話ししたデフレ期待の払拭です。予想物価上昇率が上昇すれば、現実の物価に影響を与えるだけでなく、実質金利の低下などを通じて民間需要を刺激することも期待できます」(2013年4月12日の黒田日銀総裁の講演より)

予想物価上昇率は上昇せず、現実の物価に影響を与えられていないにも関わらず、どのような経路によって「雇用の改善、消費の継続的な増加、財政状況の改善」という結果が出ているのか。たしかに実質金利の低下による効果がなかったとはいえないものの、金融政策以外の要因、たとえば世界的なリスクの後退などによる海外初の要因が大きく影響していたとはいえまいか。

「2%「物価安定の目標」は、消費者物価指数の上方バイアス、金融政策の対応余地、グローバル・スタンダードの観点から堅持することが重要である」(主に意見より)

日米の消費者物価指数の過去推移などみてみると、基準となりそうな物価水準は明確に異なっている。2006年の量的緩和解除の条件に消費者物価指数のゼロ近傍というのがあったが、それは日本特有の消費者物価指数の水準を意識したものであったはず。グローバル・スタンダードを持ち込む必要があったのかも再確認する必要はあるのではなかろうか。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-27 10:02 | 景気物価動向 | Comments(0)

FRBの金融政策の正常化スケジュール予想

6月19日にニューヨーク連銀のダドリー総裁は講演で、「拡大局面がやや長期化しているが、実際のところまだ長く継続すると強く確信している」と述べ、物価に関しても、「インフレ率は望ましい水準を若干下回っているものの、労働市場の引き締まりが続き賃金も少しずつ持ち直すことで、2%の目標に緩やかに回帰するだろう」と述べた。

6月13日、14日に開催されたFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を年0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げた。投票メンバー9人のうち8人の賛成多数での決定となり、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。カシュカリ総裁は16日にロイターとの電話インタビューで、利上げを見送るべきと考えるのは私一人ではないとの見方を示していた。

FOMC開催日の14日に5月の米消費者物価指数(CPI)が発表されたが、総合指数は前年同月比では1.9%上昇となり、前月の2.2%の上昇から上昇幅は縮小した。食品とエネルギーを除くコア指数も前月比0.1%上昇と予想を下回り、前年同月比では1.7%上昇と、2015年5月以来の低い伸びとなった。

これを受けて14日の米債は買われていた。今後のFRBの利上げが慎重ペースになるのではとの期待も背景にあったとみられる。しかし、ダドリー総裁はそういった観測を打ち消すべく、景気や物価に対して強気の姿勢を示した。

実はイエレン議長も14日のFOMC後の会見で、最近のインフレ指標の低下は一時的な事柄が要因と指摘していた。ダドリー総裁はイエレン議長と同じような見方をしているというか、フィッシャー副議長含めた執行部は、政策金利を長期の中立金利見通しである3%に達成させるという利上げシナリオは堅持しているとみられる。

今後のFRBのFRBの正常化スケジュールについては、利上げとともにバランスシート縮小も進めることが予想されている。4兆5000億ドルの保有証券縮小計画については年内に着手すると表明し、その手段も示した。満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小するかたちとなり、開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3か月ごとに上限を引き上げて、1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。

イエレン議長は14日の会見でバランスシート縮小に関して比較的早期に開始する可能性を示した。つまり9月のFOMCあたりで決定してスタートすることが予想される。利上げについては9月にバランスシート縮小と同時に行うというよりも、少しずらして12月に決定するのではと予想される。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-25 10:15 | 中央銀行 | Comments(0)

4月の米国債保有高はかろうじて日本がトップをキープ

米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、今年4月の国別の米国債保有高のトップは引き続き日本がキープしていた。

4月の日本の米国債保有高は1兆1069億ドルとなった。2位は中国(China、Mainland)で1兆922億ドルの保有高となった。上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)

日本(Japan)  1106.9

中国(China, Mainland)  1092.2

アイルランド(Ireland)  299.9

ブラジル(Brazil)  267.7

ケイマン諸島(Cayman Islands ) 256.8

スイス(Switzerland)  234.1

英国(United Kingdom) 231.5

ルクセンブルグ(Luxembourg )212.1

香港(Hong Kong)  196.6

台湾(Taiwan) 185.6

4月に日本国内の居住者による対外債券(中長期債)投資は4兆2559億円の処分超となり、月次の売り越し額としては過去最大規模となっていた。内訳をみると米国のソブリン債(中長期)を3兆6642億円も売り越していた。ソブリン債とは主に国債のことを示すため、米国債を大量に売却していたのである。このため、4月は場合によると米国債保有高で再び中国に逆転されるのではないかと思われたが、かろうじてトップをキープしていた。

2位中国の外貨準備は2017年1月に3兆ドルを下回っていたが、4月末の外貨準備高は3兆300億ドルと3か月連続で増加し、中国の米国債保有は今年1月以降は増加傾向にある。

6月8日に公表された5月の対外対内証券投資売買契約の状況では、今度は 3兆1074億円の買い越しとなっていた。米国債利回りは5月11日あたりに2.4%台に上昇後、直近では2.1%台にまで低下しているが、これは日本の投資家による買いも影響していた可能性がある。このため、5月の米国債保有高も日本がトップをキープすることが予想される。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-24 16:15 | 国債 | Comments(0)

原油先物価格が再び下落傾向に、物価への影響も注意

21日の原油先物市場では、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)8月物が一時、42.05ドルと期近物として2016年8月11日以来ほぼ10か月ぶりの安値をつけた。今年1月に55ドル台をつけていたが、50ドル台で次第に上値が重くなり、米在庫増が嫌気されて3月に50ドルを割り込んだ。

その後いったん買い戻されて53ドル台まで回復。しかし、米国内での増産が続いていることなどを嫌気して4月に再び50ドル割れとなり、主要産油国が減産しても需給改善につながりにくいとの見方から5月5日に43ドル台に下落した。

そこから再び切り返したが、52ドルあたりまで。5月25日のOPECと非加盟の主要産油国がOPEC総会後の閣僚会合において協調減産を2018年3月まで9か月間延長することで合意したにも関わらず、利益確定売りに押され50ドル割れとなった。そこからダウントレンド入りし5月5日の直近安値を下回ってきた。

ここにきての原油先物の下落には、これといって材料が出ているわけではない。今回の下げのきっかけが、予想通りの減産合意によるものであったことをみても、原油先物の上値の重さが伺える。これには米国の増産が続いていることや、ナイジェリアやリビアなどで供給拡大の動きなどもあり、根強い供給過剰懸念が原油先物の下落の背景にあるとみられる。

今回は中国など新興国の景気動向などを背景とした原油先物の下げでなく、需給そのものが反映された格好の下落であるため、急落は考えづらい反面、大きな戻りも期待しづらい。次の下値のポイントは昨年8月1日につけた39ドル台、つまり40ドルを割り込むかどうか焦点となりそうである。

原油価格の動向は直接、物価に反映されることから、日銀にとってはさらに物価目標が遠のくことも予想され、FRBの今後の利上げペースにも影響してくる可能性がある。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-23 09:56 | 景気物価動向 | Comments(0)

イングランド銀行の利上げ派が増加、カーニー総裁は利上げは時期尚早と火消しに走る

15日に開催されたイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。今回もフォーブス委員だけが利上げを主張するとみられていたのが、そこにマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていた。MPCの委員3人が利上げを支持したのは2011年以来となる。これを受けて市場では今後のイングランド銀行の利上げの可能性を意識し始めていた。

これを意識してか、イングランド銀行のカーニー総裁は20日、ロンドン市内で講演し「今はまだ金融政策の調整を開始するときではない」とし、利上げは時期尚早との認識を示し、火消しに走った。ところが、15日のMPCで据え置きに賛成していたハルデーン理事が21日の講演で、自身が近く利上げ支持に転じる公算が大きいと表明した。また、利上げ開始が後手に回るリスクが増えているとの認識を示した。さらにMPCメンバーでイングランド銀行のチーフエコノミスト、アンディ・ホールデン氏からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識を示すとともに、6月の利上げを支持することも検討したと明らかにした。

イングランド銀行のMPCは9名のメンバーより構成される。総裁1名、副総裁2名、理事2名と、財務大臣により任命された外部委員4名の合計9名となる。しかし、3月14日に利益相反の可能性を申告しなかったとして批判されていたホッグ副総裁(銀行・市場担当)が辞任したことで一人空席となっていた。

9名のメンバーがフルで揃っていても議長以外の政策委員の意見が仮に真二つに割れた場合などは、まさに4対4となる。MPCでは採決にあたって頻繁に反対票が見られ、そして過去には9名のうち4名までもが反対に回ることもあり、総裁自身が少数派となってしまったこともあった。つまりカーニー総裁が利上げに反対しても、多数決で覆される可能性がある。

ただし、利上げを主張し続けていたフォーブス委員は、今月末に退任し、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に戻る予定となっている。ハモンド財務相は19日にフォーブス委員の後任としてロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のエコノミストであるシルバナ・テンレイロ氏をイングランド銀行金融政策委員会(MPC)の外部委員に指名した。

マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わったのは物価を意識して、フォーブス委員の意志を引き継ぐという意味合いがあったのかもしれないが、どうやら流れは利上げに傾いているようにも感じられる。今後はテンレイロ氏の動向次第でバランスがさらに変化してくる可能性もありうる。また、ホッグ副総裁の後任もいずれ指名されるとみられ、こちらの人事にも注意しておく必要がある。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-22 10:00 | 中央銀行 | Comments(0)

5月の債券市場ではメガバンクが買い越しに転じる

6月20日に日本証券業協会は5月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し

単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行-14782(-5216、-1087、-7778)

地方銀行-2150(500、-1082、-200)

信託銀行 1822(-1816、2954、676)

農林系金融機関-2589(-1812、0、105)

第二地銀協加盟行-479(-86、-145、0)

信用金庫-3475(-488、-97、32)

その他金融機関-698(-302、463、46)

生保・損保-2863(-2597、314、19)

投資信託-372(-439、88、330)

官公庁共済組合-138(20、0、2)

事業法人-238(-21、1、0)

その他法人-595(-89、-29、15)

外国人-19887(-803、-6541、-11738)

個人 163(2、28、3)

その他 19645(9555、1265、13598)

債券ディーラー-449(-61、-250、-128)

5月の国債の投資家別売買高をみると「信託銀行」、「個人」、「その他」を除いて総じて買い越しとなっていた。4月が銀行系主体に売り越しとなっていたが、それと対称的な動きとなった。期初の売り等でいったん外したポジションを買い戻した格好か。

都銀は1兆4782億円の買い越し。先月は1兆3436億円の売り越しとなり、4か月ぶりの買い越しとなる。超長期と中期ゾーン主体の買い越しとなった。超長期の買い越し額は2011年9月以来の大きさとなっていた。地銀は長期主体、農林系は超長期主体の買い越し。ただし、信託銀行は長期主体の売り越しとなっていた。売り越し金額でのトップは引き続き「その他」の1兆9645億円の売り越し。中期と超長期主体に売り越しとなった。

買い越し額のトップは引き続き海外投資家で、中期債主体に1兆9887億円の買い越しとなっていた。

5月の債券相場を振り返るとゴールデンウイーク中の債券相場は閑散小動き。7日のフランス大統領選の決選投票ではマクロン氏が勝利し、リスクオンの動きが意識されて円債は上値が抑えられた。FRBの緩やかな正常化の動きを連想さて米債は買われ、円債も月末にかけてやや押し目買いが入った。ただし、5月の10年国債の利回りの月中値幅がどうやら過去最小となったようで値動きは限られた。全体の売買高も海外投資家を含めてやや低調なものとなっていた。

投資家全体の売買状況 全体 超長期 長期 中期

1月1996647、303116、412877、588101

2月1958526、340593、481039、496524

3月2041609、385293、472883、558183

4月1914346、373287、391855、488680

5月1707093、320073、345208、435486

海外投資家の売買状況

月 売り越し買い越し(マイナスは買い越し)、(超長期、長期、中期)、国債売買高、うち中期

2017年

1月-23784(-1153、-504、-19500)、294839、61994

2月-11210(-2687、3009、-10323)、292813、51127

3月-17190(-4603、1222、-12886)、312730、58810

4月-21075(-3562、-4623、-11957)、321272、43951

5月-19887(-803、-6541、-11738)、269888、47170


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-21 10:02 | 債券市場 | Comments(0)

5月の債券市場ではメガバンクが買い越しに転じる

6月20日に日本証券業協会は5月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し

単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行-14782(-5216、-1087、-7778)

地方銀行-2150(500、-1082、-200)

信託銀行 1822(-1816、2954、676)

農林系金融機関-2589(-1812、0、105)

第二地銀協加盟行-479(-86、-145、0)

信用金庫-3475(-488、-97、32)

その他金融機関-698(-302、463、46)

生保・損保-2863(-2597、314、19)

投資信託-372(-439、88、330)

官公庁共済組合-138(20、0、2)

事業法人-238(-21、1、0)

その他法人-595(-89、-29、15)

外国人-19887(-803、-6541、-11738)

個人 163(2、28、3)

その他 19645(9555、1265、13598)

債券ディーラー-449(-61、-250、-128)

5月の国債の投資家別売買高をみると「信託銀行」、「個人」、「その他」を除いて総じて買い越しとなっていた。4月が銀行系主体に売り越しとなっていたが、それと対称的な動きとなった。期初の売り等でいったん外したポジションを買い戻した格好か。

都銀は1兆4782億円の買い越し。先月は1兆3436億円の売り越しとなり、4か月ぶりの買い越しとなる。超長期と中期ゾーン主体の買い越しとなった。超長期の買い越し額は2011年9月以来の大きさとなっていた。地銀は長期主体、農林系は超長期主体の買い越し。ただし、信託銀行は長期主体の売り越しとなっていた。売り越し金額でのトップは引き続き「その他」の1兆9645億円の売り越し。中期と超長期主体に売り越しとなった。

買い越し額のトップは引き続き海外投資家で、中期債主体に1兆9887億円の買い越しとなっていた。

5月の債券相場を振り返るとゴールデンウイーク中の債券相場は閑散小動き。7日のフランス大統領選の決選投票ではマクロン氏が勝利し、リスクオンの動きが意識されて円債は上値が抑えられた。FRBの緩やかな正常化の動きを連想さて米債は買われ、円債も月末にかけてやや押し目買いが入った。ただし、5月の10年国債の利回りの月中値幅がどうやら過去最小となったようで値動きは限られた。全体の売買高も海外投資家を含めてやや低調なものとなっていた。

投資家全体の売買状況 全体 超長期 長期 中期

1月1996647、303116、412877、588101

2月1958526、340593、481039、496524

3月2041609、385293、472883、558183

4月1914346、373287、391855、488680

5月1707093、320073、345208、435486

海外投資家の売買状況

月 売り越し買い越し(マイナスは買い越し)、(超長期、長期、中期)、国債売買高、うち中期

2017年

1月-23784(-1153、-504、-19500)、294839、61994

2月-11210(-2687、3009、-10323)、292813、51127

3月-17190(-4603、1222、-12886)、312730、58810

4月-21075(-3562、-4623、-11957)、321272、43951

5月-19887(-803、-6541、-11738)、269888、47170


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-21 10:02 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の正常化が困難を極める原因のひとつがアベノミクス

米国の中央銀行にあたるFRBは正常化に向けた歩みを着々と進め、カナダの中央銀行も利上げが視野に入りつつある。イングランド銀行では利上げ推進派が3名に増え、こちらもいずれかのタイミングで利上げを決定する可能性が出てきた。ちなみにイングランド銀行は議長である総裁が少数派となることもあるなど、空気など読まずに本当に意味での多数決で金融政策が決定されることがありうる。ECBもひとまず追加緩和に傾斜する姿勢を中立に戻している。

日銀も表向きは物価目標が達成できないことで強力な緩和を推し進めるという姿勢は維持しているものの、政策目標を量から金利に戻したことでステルステーパリングを行うなど、実際には少しブレーキを掛けている。

それでも欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を取りつつある中、このままだと日銀だけが取り残されることも予想される。そのためか、ここにきて日銀の出口戦略に対する関心も高くなってきている。しかし、日銀は物価目標達成のためにリフレ政策を取ってしまったことで、自ら退路を塞ぎ、正常化に向けて舵を取るには多くの障壁を作ってしまった。

リーマン・ショックに代表される米国の金融機関の経営危機が世界的なリスクを増大させ、そのあとギリシャの財政問題がユーロというシステムの危機を迎え、それぞれ百年に一度という世界の金融経済危機を迎えた。それに対処するには最終的に中央銀行の金融政策に依存せざるを得なかった。

当時のFRBのバーナンキ議長やECBのドラギ総裁なども、日銀が試していた量的緩和政策などの非伝統政策に追い込まれたというより、壮大な実験を自ら試したかったこともあったのかもしれない。そう簡単にオペなどで売れないであろう長い期間の国債の買い入れ等を主体とした非伝統的手段を打ち出した。それらが結果的に市場の不安感を後退させて、百年に一度のリスクは沈静化していった。

そのようなタイミングで出来たのが、世界的なリスクに対応するため、ではなく長く続くデフレ脱却を掲げたアベノミクスである。デフレは日銀の金融政策の踏み込みの甘さが原因として、リフレ派の主張を取り入れたのがアベノミクスであった。

危機対応ではなくデフレ対応の大胆な金融緩和を柱としたアベノミクスは、そのタイミングがたまたま世界的な金融危機の後退期にあたり、それが急激な円高の巻き戻しを呼び、急速な株高を誘発した。円安効果と世界的なリスクの後退、原油価格の高止まり、消費増税前の駆け込み需要なども加わり、一時的に物価も上昇しコアCPIは前年比プラス1.5%まで上昇した。しかし1年後の円安効果が剥落するなどして、CPIは再びゼロ近傍となってしまった。

あのタイミングで日銀が嫌っていたはずのリフレ政策を時の政権が強制的に打ち出したことで、円安などによる一時的な物価上昇は起きたが、それは日銀が長い期間の国債を大量に購入した結果によるものではなかった。ヘッジファンドなどの仕掛けによるポジション調整が円高トレンドを変えさせた影響が大きかった。だから物価上昇が長続きしなかった。

日銀の異次元緩和で物価目標達成が可能という前提に問題があったことを証明するのに4年以上の歳月が必要となった。しかし、それは当然日銀も現政権も認めることはしないであろう。実はそれが日銀が正常化を困難とする大きな足かせとなってしまっているのである。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-20 10:00 | 日銀 | Comments(0)

カナダ銀行(中央銀行)も利上げを模索

カナダの中央銀行であるカナダ銀行(Bank of Canada)のウィルキンス上級副総裁は6月12日のマニトバ州ウィニペグでの講演で、国内の景気回復が各地域やセクターに広がっていると強調し、政策当局者に「勇気づけられる理由」を与えていると述べたそうである。経済が勢いを増しつつある中、利上げの準備が整っていると、これまでで最も強い調子で示唆した。また、ポロズ総裁も13日、CBCラジオに対し、利下げは経済をショックから守るという役割を果たしたとの認識を示し、「足元の経済は勢いを強めつつあり、それも特定の分野ではなく幅広い経済でそうした状況と見受けられる」と述べていた(以上、ブルームバーグの記事より引用)。

カナダ銀行は今年1月18日に「利下げ」を検討したことが明らかになっていた。1月20日にトランプ氏が次期米国大統領に就任したが、これによる影響なども考慮していた可能性がある。しかし4月にカナダ銀行が政策金利を据え置いた際、ポロズ総裁は記者会見で、今回は「利下げ」は議題に上らなかったと明言しており、ハト派的なトーンは後退し、「中立的な立場」であることを明らかにしていた。5月24日の会合でも金融政策の据え置きを発表し、カナダ銀行は2015年7月以来、約2年間、政策金利を0.5%に据え置いている。

今回のウィルキンス副総裁やポロズ総裁の発言からは、利下げによる効果が発揮されて、国内の景気回復が顕著となりつつあるなか、今後は中立的なスタンスからの変更を検討する可能性が示された。もしカナダ銀行の「利上げ」となれば2010年以来となる。ウィルキンス副総裁はトロント住宅市場のバブルを巡る懸念は一蹴したそうだが、このあたりの懸念も背景にあるのかもしれない。

今後のカナダ銀行の金融政策を決める会合の予定は、6月はなく、7月12日、9月6日、10月25日、12月6日となっている。市場ではウィルキンス副総裁らの発言を受けて10月の会合で利上げを決定するのではとの見方が強まっているようであるが、そこまで待たずに決定する可能性もありそうである。

ちなみに現在のイングランド銀行のカーニー総裁は、元カナダ銀行の総裁である。そのイングランド銀行がFRBに続いて正常化に向けて舵を切るかとみていたが、EU離脱決定の影響もあり、ひとまず先送りされ、古巣のカナダ銀行が先に利上げを行う可能性が出てきた。ただし、15日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、フォーブス委員だけでなくマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていた。カナダ銀行とイングランド銀行の利上げ合戦の行方は、意外に良い勝負となるやもしれない。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-19 09:33 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行で利上げ派が3人に増加した理由とは

6月15日の欧米の国債は珍しく揃って下落していた。これは前日14日に発表された5月の米消費者物価指数が予想に反して前月から0.1%低下となり、今後のFRBの利上げペースについてやや懐疑的な見方となり、米10年債利回りが大きく低下した反動とも言えたが、別の要因も絡んでいた。

14日にはFOMCが開催されて予想通りの追加利上げが決定された。年内はさらに1回、2018年中にも3回の利上げを見込む政策シナリオは維持した。4兆5000億ドルの保有証券縮小計画についても年内着手と正式に表明した。さらにイエレン議長は最近のインフレ指標低下は一時的な事柄が要因と指摘していた。それにも関わらず、この日に米債が大きく買い進まれたのは、市場参加者は今後の利上げペースに疑心暗鬼になっていたためとみられる。

そこにまた別途材料が現れた。イングランド銀行である。15日のイングランド銀行の金融政策委員会では、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。ただし、これについては今回もフォーブス委員だけが利上げを主張するとみられていたのが、マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていたのである。

1~3月期の英国の実質GDP成長率は前期比0.2%増と低調となっていただけでなく、EU離脱そのものも不透明要因となっている。メイ首相が賭けに出た総選挙では、メイ首相の保守党が議席数を減らし過半数割れとなり、さらに不透明感が増している。そのような状況下、イングランド銀行が利上げを行うことはかなり困難とみられていた。

ただし、この不透明感の強まりはポンド安を招き、ポンド安の影響もあって英国の5月の消費者物価指数は前年同月比2.9%もの上昇、英中銀の物価目標の2%を大幅に上回っていた。今回のMPCでの利上げ派はこの物価を意識したものであろう。

これにより、今後イングランド銀行が利上げを決定する可能性が多少なり出てきた。これを受けて15日にはポンドが買われ、英国債が下落した。フランスの国債入札がやや低調となっていたことも材料視された。8日のECB理事会の政策に関する声明では、追加利下げに関する文言を削除し、追加緩和に前向きの姿勢から中立姿勢に修正したことも意識されたことで、ユーロ圏の国債も売り込まれ、それが15日の米国債の売りに繋がった面もあった。

すでにカーニー総裁の古巣であるカナダ銀行も、副総裁から利上げを示唆するような発言が出ていた。欧米の中央銀行ではFRBが先んじて正常化を開始し、それにカナダ銀行、さらにはイングランド銀行が追随してくる可能性が出てきた。方向性までは変えなかったものの、ECBも緩和に傾斜していた姿勢を中立に戻している。日銀はいつでも追加緩和は可能と主張するが、すでにステルステーパリングを行っており、追加緩和といってもマイナス金利の深掘りなど現実的に困難でもある。実質的に日銀も中立スタンスにいるようにみえる。

そもそも現在、非伝統的な金融政策とか、異次元緩和が必要とされるほどの危機的状況にいるわけではない。中央銀行の正常化への歩みは当然といえば当然ながら、あまりに金融緩和に傾きすぎて、なおかつ市場の反応を過度に気にするあまり、出口政策はなかなか難しい。英国を除き物価が目標を下回っていることも、正常化を納得させずらくしている。しかし、いずれにしても日銀以外は新たなリスクが発生するようなことがない限りは、正常化に向けた歩みをはじめる準備をしていることも確かではなかろうか。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-06-17 10:23 | 中央銀行 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー