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「『円』対『仮想通貨』」

 ビットコインの価格が乱高下するなどしていることで、再びビットコインなどの仮想通貨がニュースなどでも取りあげられている。しかし、特に日本ではこの仮想通貨が法定通貨である円に取って代わるような事態となることは考えづらい。

 日本国内での「円」の利用については、まったく支障がない。それどころか日本人は特に現金主義であり、世界的に電子マネーや仮想通貨といった新たな決済手段が広がりつつあるなかでも、日本は引き続き他国と比べて現金を好む傾向が強いとされている。

 日銀が今年2月に発表したレポートによると、日本の現金流通高の名目国内総生産(GDP)比は2015年末時点で19.4%となり、日本の現金流通高のGDP比はユーロ圏の10.6%、米国の7.9%、英国の3.7%など他の主要国と比べて際立って大きい。

 この要因として日銀が指摘しているもののひとつは「タンス預金」として使わないまま滞留している現金が多いこと。日本は治安が相対的に良く、現金を保管しても盗難のリスクが低いこと、低金利が長く続いていることで、預金していても金利収入がほとんど得られないことなどとなっている(2月21日日経新聞記事より引用)。

 もちろん現金に慣れ親しんでしまっていることで、便利とはわかっていても電子マネーよりもつい現金を使ってしまう面もある。コンビニでの利用もいまだ現金の割合も多いようである。

 これは日本の円の決済のしやすさや、その価値が安定していることも影響している。電子マネーは便利ではあるが、ひとつの電子マネーが、すべての店で決済ができるわけではない。

 またビットコインなどを使った際のように、今日買ったコーヒーの値段が明日、大きく変動するようなこともない。

 同じ円で使える電子マネーの普及もなかなか進まないなか、日々値動きがあり、さらにその決算についても一定の手続きが必要な「仮想通貨」が日本国内で通貨として普及することは、円の信認や価値がこれまで通り維持されるという前提では考えづらい。  

 仮想通貨は通貨という名称はついていても、国内では投機的な対象物となっており、ブロックチェーンという仕組みは応用が可能で普及する可能性はあるものの、仮想通貨自体が「通貨」として普及する可能性は極めて低いと言えよう。


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# by nihonkokusai | 2017-10-18 09:49 | 金融 | Comments(0)

マイナス金利で得をしているのは誰なのか

 日銀が2016年2月に導入した「マイナス金利付き量的・質的緩和政策」はすこぶる評判が悪かった。特に多額の資金運用を行っている投資家にとって、本来であれば安全資産であるはずの国債を保有することで運用成績がマイナスとなる事態は運用そのものに支障を来すことになる。

 日銀のマイナス金利政策の狙いのひとつとして、ポートフォリオ・リバランスというものがある。日銀が安全資産とされる国債を大量に買い占め、国債の利回りを徹底的に引き下げることにより、資金運用を行っている投資家に対し、貸し出しや国債以外の金融資産に資金を振り向けさせようとするものである。

 しかし、年金にしろ、預貯金にしろ資金を払い込んだ人たちには、大きなリスクを負っての運用は本来望んではいないはずである。少なくとも元金が目減りするようなことは考えていないのではなかろうか。だからこそ、これまでは年金や銀行などは国債を主体とした運用をしてきた。その国債も保有することで運用益がマイナスとなる事態となってしまった。

 日銀は金融業界からのマイナス金利政策に対する批判を受けてそれを修正したのが、2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和である。これは何と言うことはない、長期金利、つまり10年債利回りのマイナス化を避けて、期間の長い国債の利回りはプラスにさせる政策ともいえる。それでも長期金利は0.1%以下に押さえ込まれている。

 その結果、我々が受け取る利息もほとんどない事態が続いている。日銀の異次元緩和で物価が上がらなかったことで、その事態がさらに延長され続けている。それでも足元物価をみると消費者物価指数(除く生鮮食料品)で前年比プラス0.7%程度までは回復している。しかし、長期金利は日銀のイールドカーブコントロールによって引き続き0.1%を下回っているが、それがなければもう少し上昇してもおかしくはない。

 日銀の金融政策によって金利そのものは大きく押さえ込まれ、中期ゾーンの金利あたりまではいまだマイナスとなっている。景気は回復基調が続いていることは確かで、我々は本来もらえるはずの金利を、物価を上昇させるためとして、それが享受できない状況が続いていることになる。

 それではマイナス金利政策で得をしている人がいるのか。マイナス金利政策に恩恵を受けているのは、国債を低い利回りで発行でき、国債費が抑えられる政府となる。それは裏返すと財政規律を緩めかねないものともなっている。

 それとともに海外投資家もマイナス金利でも利益が出せる。日本の金融機関による海外の国債などへの投資の際に、円をドルに転換する必要があり、その際に付くドルのプレミアム分を相手方の海外の金融機関などは得ることができる。つまり海外投資家は多少のマイナス金利でもプレミアム分があるため、それで鞘を抜くことができる。

 10月16日の日経新聞の「マイナス金利、海外中銀にプラス」との記事では、その鞘を取る投資家にアジアや欧州の中央銀行も含まれていることを示していた。日銀は海外の中央銀行から預かる資金に今年6月からマイナス金利を適用しているが、それは日銀に預けてある資金の一部だけの適用となっている。このため、海外中銀による日銀の預金残高は10月10日時点で過去最高額となっているようである。


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# by nihonkokusai | 2017-10-17 09:48 | 日銀 | Comments(0)

衆議院選挙の行方次第で金融政策に影響は出るのか

 衆議院選挙は10月10日に公示され、22日に投開票が行われる。選挙の行方は不透明感を強めている。ただし、安倍首相は党首討論会で「(与党で)過半数を取れば首相指名を受ける候補として出る」と述べていた。自民党の衆院解散時勢力は287で、今回全議席465の単独過半数となるのは233議席となる。いまのところ自民党は単独でも過半数は維持するのではとの予想となっている。

 台風の目となりそうな希望の党については、当初の勢いは姿を消しつつあり、ある程度の議席は確保するにしても、政権を奪取するほどの勢いとはなりそうもない。安倍政権が維持される可能性が高いのではなかろうか。

 今回の衆院選挙次第では日銀の金融政策の行方にも影響が出る可能性があったが、安倍政権の続投となれば、2%の物価目標も維持され現在の政策が維持されることになろう。ただし、安倍政権もすでに軸足は金融政策によるデフレ脱却を主軸に打ち出していない。自民党の公約のなかの「アベノミクスの加速」は下記のようになっている。

 「わが国の経済は確実に回復している。この流れを確かなものにするため、「生産性革命」と「人づくり革命」の2つの大改革を断行することによって、力強い消費を実現し、経済の好循環を完遂する。」

 もちろん現在の金融政策は維持するという前提の上での上記の政策となろうが、少なくとも日銀の金融政策に期待する比重は、かなり後退してくるともいえるのではなかろうか。

 消費税については2019年10月に消費税率を10%に引き上げるとし、その際、「全世代型社会保障」への転換など「人づくり革命」を実現するため、消費税率10%への引き上げの財源の一部を活用するとしている。あくまで財源の一部であり、財政再建を後退させる事ではない面も強調している。

 その財政再建については、基礎的財政収支を黒字化するとの目標は堅持するとしている。同時に債務残高対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げも目指すとし、引き続き歳出・歳入両面からの改革を進め、目標達成に向けた具体的計画を策定するとしている。

 この財政再建の文章も残っている以上は、ひとまず国債への信認も維持されよう。アベノミクスについては、日銀の異次元緩和の効果等を含め、かなりいろいろと疑問は多いのも事実であり、必ず物価目標を達成しなければならないとの空気が変化してくる可能性もありうる。


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# by nihonkokusai | 2017-10-16 15:49 | アベノミクス | Comments(0)

世界的な株高の謎、日経平均も20年10か月ぶりの高値更新

 10月11日の東京株式市場で日経平均株価は前日比57円76銭高の20881円27銭で引けた。2015年6月に付けた第2次安倍政権の発足以降の高値を上回り、1996年12月5日以来、約20年10か月ぶりの高い水準となった(11日の日経新聞電子版より)。

 米国株式市場では、ここにきてダウ平均、ナスダック、S&P500の主要3指数が過去最高値を更新し続けていた。10月に入ってのロンドン株式市場でもFTSE100種総合株価指数は過去最高値を更新し、フランクフルト株式市場でドイツ株式指数(DAX)も過去最高値を更新している。

 日経平均株価の過去最高値は1989年の大納会(12月29日)に記録した38915円87銭となっている。ここからいわゆるバブルの崩壊によって日経平均は大きく崩れた。日経平均が約21年ぶりの水準に回復したとはいえ、欧米の株価指数が過去最高値を更新しているのに比べると日本の株価の上昇ピッチは緩やかなものとなっている。それだけバブル崩壊の後遺症が大きかったとも言えよう。

 日経平均のここ21年間の動きをみると、日経平均株価は2003年4月28日の7607円88銭がバブル崩壊後の安値となり、いったん底打ちした。2003年5月の、りそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり銀行株などが買われた。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めたのである。

 中国など新興国経済の回復により、日経平均は2007年7月9日に18261円98銭まで上昇した。しかし、サブプライム問題に端を発した世界的な金融経済ショックが日本も襲い、さらにそれが沈静化したかしないかのタイミングでギリシャを発端とした欧州の信用不安が襲ってきた。このため、日経平均は2009年3月10日に7054円98銭まで下落し、バブル崩壊後の最安値を更新。その後も2012年末あたりまで低迷が続くことになる。

 米国のダウ平均の推移をみてみると2009年3月あたりからじりじりと上昇基調となっていた。この流れに日経平均が乗れなかったのは、バブルの後遺症だけでなく、世界的な金融経済リスクに対するリスク回避の動きで、急激な円高が進行していたことも影響していよう。しかし、その世界的な危機が後退しつつあったタイミングでアベノミクスが登場し、リフレ政策を受けたヘッジファンドなどの仕掛けも手伝い、円高の急激な調整が入り、日経平均も回復基調となった。

 その後、日本経済は緩やかながら回復基調が継続した。これには米国経済の回復、懸念された中国など新興国経済の落ち込みが大きくなかったことなども上げられよう。それでも欧米の株式市場が過去最高値を更新していることについては謎ともいえる。もしその背景に日米欧による非伝統的な金融政策、特に異常な規模の量的緩和策の影響があったとすれば、FRBの正常化も進みつつあり、ECBも緩和縮小に舵をとりつつあり、日銀も実質的なステルス・テーパリングを行っていることで、いずれピークを迎えることも予想されるのである。


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# by nihonkokusai | 2017-10-14 12:12 | 中央銀行 | Comments(0)

ロクイチ国債の暴落を知っているか

 10月の日本経済新聞の「私の履歴書」は、野村證券株式会社副社長や日本取引所グループの最高経営責任者(CEO)などに就任した斉藤惇氏が執筆している。10月12日の「私の履歴書」では下記のような記述があった。

 「78年から79年にかけて発行された表面利率6.1%の国債、いわゆるロクイチ国債が、79年から80年にかけて大暴落する局面にも立ち会った。そんな中でも野村はしぶとかった。」

 ロクイチ国債と聞いてピンとくるのは、当日の債券市場を知る一部の人に限られようが、日本国債の最初の暴落とも言える出来事であった。

 国債の流動化があまり進んでいなかったころに、国債は一度大きな暴落を経験している。それがロクイチ国債と呼ばれた国債の暴落である。1978年は当時とすれば低金利局面であり、4月にそれまで発行された10年国債の最低利率である利率6.1%(通称、ロクイチ国債)の国債が発行された。

 1979年4月以降は本格的な金利上昇局面となり、国債価格は大きく下落した。景気拡大や原油価格の上昇により、6月にロクイチ国債の利回りは9%を超えてきた。この国債の下落を受けて、12月には金融機関の保有国債の評価法が、従来の低下法から原価法または低価法の選択性となった。

 1980年に日銀は2月、3月と立て続けに公定歩合を引き上げ、長期金利も大きく上昇し、ロクイチ国債は暴落した。4月にロクイチ国債の利回りが12%台にまで上昇し、国債を保有している金融機関がパニック状況に陥ったのである。その後、米国金利の急激な低下などにより債券市況は急回復したが、ロクイチ国債の暴落は大蔵省(現財務省)の国債管理政策にも大きな影響を与えたとされる。

 斉藤惇氏によるロクイチ国債に関する記述は少なかったものの、最後の「そんな中でも野村はしぶとかった」との部分が非常に気になった。ロクイチ国債の暴落に当時の野村證券がどう立ち向かったのか。数少ない国債暴落時の経験だけに、できればその経験を将来に生かすためにも、そのときの状況を知りたいものである。


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# by nihonkokusai | 2017-10-13 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

スペイン・カタルーニャ州の独立問題とは何か

 カタルーニャ州のプチデモン州首相は、10月1日に行われた住民投票の結果、カタルーニャがスペインから独立する権利を得たと強調した上で、スペイン政府との交渉を視野に今後数週間、独立を延期すると発表した(NHKニュースより)。

 カタルーニャ州の独立問題は欧州の新たな火種となっており、スペインの国債も一時大きく売られるなどしていた。

 スペインの北東部にあるカタルーニャ州は1979年にスペイン国家内で自治州の地位を得たが、歴史的にフランスと結びつきが強く独立志向が強い地域となっている。

 10月1日にカタルーニャ州において実施されたカタルーニャの分離独立の是非を問ういわゆる「州民投票」に際しては,独立支持派と治安関係者の間で小競り合いが発生し,州政府の発表によれば,800人以上の負傷者が発生した。カタルーニャ州政府は一方的な独立宣言を行う可能性があり、中央政府はこのような行為は違法であるとして認めていない。日本の外務省はサイトでカタルーニャ州に渡航・滞在される方は、安全に注意する必要があることを認識するよう呼びかけている(外務省のサイトより一部引用)。

 ちなみにカタルーニャ州の州都はバルセロナである。有名なサッカークラブであるFCバルセロナの愛称「バルサ」はカタルーニャ語読みから来ているそうである。

 それはさておき、プチデモン州首相は賛成多数で独立が承認されれば、「48時間以内に独立宣言を行う」と公約していた。10日夜からバルセロナにある州議会が開かれ、この中でプチデモン州首相は、住民投票では独立賛成が大多数を占めたと報告し、「住民投票の結果、カタルーニャは共和国として独立国家になる権利を得た」と述べて、スペインから独立する正当性を強調した。そのうえで「スペインとの問題を解決するには対話が必要だ」と述べ、住民投票は憲法違反だとしているスペイン政府との交渉も視野に今後数週間、独立を延期すると発表した(NHKニュースより一部引用)。

 10日の欧州市場はひとまずこのプチデモン州首相による独立延期の発表を好感した格好となった。プチデモン州首相とは政府との交渉の余地を探りたいとみられるが、スペイン政府がカタルーニャ州の自治権の停止も含めた強硬措置に乗り出す可能性もあるとされ、問題が深刻化する懸念もある。これがユーロシステムを揺るがすような事態に発展するのかは読みづらいが、今後の動きには注意すべきと思われる。


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# by nihonkokusai | 2017-10-12 09:33 | 国際情勢 | Comments(0)

国民の関心はさほど高くはない日銀の異常な緩和政策

 日銀は6日に「生活意識に関するアンケート調査」(第71回<2017年9月調査>)の結果を発表した。

 これによると「景況感」については「良くなった」との回答が第68回(2016年12月)が4.4、第69回(2017年3月)が6.2、第70回(2017年6月)が6.5、第71回(2017年9月)7.6となっており、「また悪くなった」との回答は同29.2、24.3、22.7、21.1と減少している。「景況感」については「変わらない」との解答が最も多いものの、着実に回復していることも確かである。景況判断の根拠としては「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多かったようで、雇用の回復とともに賃金が増加していることが伺える。

 物価に対する実感(1年後、現在対比)は、「かなり上がる」が同6.9、5.6、7.7、6.2となり、「少し上がる」が同57.8、61.4、67.7、64.2となり、「上がった」との回答が減少した格好となっている。

 消費者物価前年比上昇率2%の「物価安定目標」の認知度については、「知っている」との回答が同28.6、29.6、27.7、26.7となっていた。さらに日本銀行が「積極的な金融緩和を行っていること」に対する認知度については、「知っている」が同43.2、33.8、40.1、28.1となっていた。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の認知度については、「知っている」が同24.4、20.6、23.3、16.5となり、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という「積極的な金融緩和」に戸惑いを見せているようにも見受けられる。

 足元景気が着実に回復していることをこのアンケート調査は示しているが、それが日銀による積極的な金融緩和によるものとの認識ではなさそうである。金融緩和の波及経路など考慮しても、日銀が積極的な金融緩和を行って物価の上昇期待が強まり、それが景況感を改善させている、といった流れになっているわけではないことをこの結果は示している。

 これだけ異次元の緩和を日銀が行っているにも関わらず、これについての国民の関心もさほど高くはない。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が債券市場にどのような影響を与えているのかといったこともほとんど知られていないであろう。少なくとも金融緩和は景気に良いとの漠然とした認識があり、このため今回の衆院選挙でも、この日銀の異次元緩和に異を唱える政党がほとんどみられず、むしろ現在の政策を維持することが重要との認識も強い。本来であれば米国がすでに行っているように異常な緩和を修正するタイミングにあるが、日銀はそれができない。この状態は決して健全な状態にあるとは思えないのだが。



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# by nihonkokusai | 2017-10-11 09:59 | 日銀 | Comments(0)

硬貨を加工すると罰せられる

 手品用コインを製造するために硬貨を傷つけたとして、警視庁保安課は5日までに、男3人を貨幣損傷等取締法違反の疑いで逮捕した(日経新聞電子版より)。

 このように硬貨を加工すると法律で罰せられることをご存じであろうか。

 日本の通貨を規定している「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」、いわゆる通貨法によると、政府貨幣とは日本政府、この場合には財務省が発行する通貨となる。私たちが利用している一円、五円、十円、五十円、百円そして五百円の硬貨や記念硬貨などがある。これらの硬貨は、日銀が発行する日銀券、つまり千円、二千円、五千円、一万円という紙幣の補助通貨としての役割を持っている。

 通貨法の第4条には貨幣の製造及び発行について、「貨幣の製造及び発行の権能は、政府に属する」とあり、貨幣は政府が製造して発行している。さらに財務大臣は、貨幣の製造に関する事務を独立行政法人造幣局に行わせるとあり、製造は造幣局が担当している。貨幣の発行は財務大臣の定めるところにより、日銀に製造済の貨幣を交付することにより行うとされる。

 つまり硬貨は、政府が製造したあと日銀が引き取り、その後、金融機関が日銀に保有している当座預金を引出し、日銀の窓口から受取ることによって世の中に出回る仕組みとなっている。

 その硬貨はその目的にかかわらず、故意に損傷したり鋳つぶすことは「貨幣損傷等取締法」により禁止されている。一円貨幣であっても穴を開けるなどの損傷行為は同法に抵触し、罰則が適用される(財務省のサイト「一円硬貨に穴を開けても良いですか」より引用)。

貨幣損傷等取締法

第1項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。

第2項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。

第3項 第1項又は前項の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

 この法律は昭和22年(1947年)に補助貨幣損傷等取締法として成立したものが、昭和63年(1988年)に通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律附則14条により「貨幣損傷等取締法」と改題された。

 昭和22年(1947年)と言えば終戦直後であり、ハイパーインフレが押し寄せ、物不足も加わり、当時は貨幣価値よりも金属としての原料価値のほうが高かくなったことから、貨幣価値を安定させて経済を復興させるべく、このような法律が成立したとみられる。

 ちなみに日銀が発行している日銀券(紙幣)については、同様の法律はないが、偽物のお金(偽札・偽貨)を作ったり、使用したりすると刑法で罰せられる。

通貨偽造・通貨変造罪(刑法第148条第1項)

偽造通貨・変造通貨の行使罪(刑法第148条第2項)


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# by nihonkokusai | 2017-10-07 16:19 | 金融 | Comments(0)

FRBの量的緩和は米長期金利を引き下げたのか

 中央銀行の金融政策は短期金利を操作し、長期金利に働きかけることで景気や物価を刺激するというのがひとつのセオリーとなっている。政策金利となっている短期金利がゼロ%近辺となった際には、国債などを買い入れて長期金利に働きかけようとした。それではこの金融政策が本当に長期金利に働きかけていたのか、米国の事例を元に検証してみたい。

 2008年11月25日のFOMCにおいて、総額8千億ドルのあらたな金融対策を発表した。内容は住宅ローン担保証券や、自動車ローン・学生ローンなどを担保にした証券化商品を買い取ることが柱となった。これによりFRBのバランスシートは大きく膨張することになる。これがFRBによるQE(Quantitative easing、量的緩和)と市場で呼ばれたものである。

 2008年11月末の米10年債利回り(以下、長期金利)は3.5%台にあったが、翌月12月末に2.4%台に下落しており、FRBの量的緩和は一時的にせよ米長期金利は低下した。しかし、2009年6月末には3.7%台まで戻しており、これだけみると効果が継続していたようには見えない。

 2010年11月3日のFOMCでは一段の景気刺激に向けた措置として、2011年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するという追加緩和策(QE2)を決定した。毎月の追加購入額は約750億ドル、MBSの償還元本の再投資分も含めると2011年6月末までの米国債購入は総額8500億~9000億ドルとなる。

 2010年10月末は2.5%台、11月末は2.7%台にあった米長期金利はむしろ上昇し、2011年2月末には3.5%台をつけている。結果から見る限り、QE2が米長期金利を押し下げたようにはみえない。

 2011年9月21日のFOMCで残存期間6~30年の財務省証券4000億ドルを買い入れ、残存期間3年以下の財務省証券を同額売却するというプログラムを決定した。1961年のケネディ政権下で行なわれたことがあるツイスト・オペもしくは、オペレーション・ツイストと同様の手段となった。

 2011年9月末の米長期金利は1.98%、その後も2.0%近辺で推移しており、ツイストオペが米長期金利を引き下げてはいなかった。

 2012年1月25日のFOMCで政策金利は据え置いたものの、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」と、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。さらにFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。

 2012年1月末の米長期金利は1.97%、その後の米長期金利も4月あたりまでは2%台で推移し、その後7月に1.5%台に低下した。

 2012年9月13日のFOMCでFRBは追加の緩和策を決定し、住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明した(QE3)。

 12月12日のFOMCでは、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大する。MBS含めると月額850億ドルを買い入れる。また、償還分の買入も行うとした。

 米長期金利は2012年9月末が1.72%、12月末が1.65%、2013年1月末が1.91%台と低下というより、むしろ上昇した。

 2013年5月22日にFRBのバーナンキFRB議長は、議会証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘した。

 これをきっかけとして米長期金利2013年5月末の1.9%台から、12月には3%近くまで上昇することとなる。しかし、これ以降の米長期金利はデーパリングが現実に実施され、利上げも行われているにも関わらず、2016年7月には1.3%台に低下した。

 もちろん金融政策だけが米長期金利を動かしているわけではない。しかし、FRBの量的緩和は米国債とMBSの大量の買入、いわゆるQEを通じて行われており、長期金利を押し下げることも大きな目的であったはずである。

 タイムラグもあり、結局、QEによって現在の米長期金利の低位安定があるとの見方もあるかもしれないが、QEで米長期金利は低下せず、むしろテーパリングなど正常化途中で低下傾向を示すなど、金融政策そのものと長期金利の連動性は低いとみたほうが素直か。

 日本の場合は日銀が強制的に長期金利を押さえ込んでいる。米国の例をみても少なくとも量的緩和が米長期金利低下を即、促しているわけでなく金利低下による効果は限定的ともいえる。これは日本にとっても同様ではなかろうか。



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# by nihonkokusai | 2017-10-05 10:10 | 中央銀行 | Comments(0)

ここにきて日米欧の国債が売られている理由

 米10年債利回りは7月上旬に2.4%近くまで上昇していたが、その後低下トレンド入りし、9月上旬に2.0%近くまで低下した。この間に米10年債利回りが低下した背景として、イエレンFRB議長が謎とした足元物価の低迷があった。FRBの年内あと一回の利上げは見送られるのではとの見方もあり、金利を押し下げた。また、北朝鮮が相次いでミサイルを発射し、核実験を行うなど地政学的リスクも意識されて、リスク回避による米債買いもあった。

 米10年債利回りの低下に合わせるようにドイツの10年債利回りも低下し、7月中旬に0.6%近辺にいたドイツの10年債利回りは9月上旬に0.3%近辺に低下した。ドイツの10年債利回りの低下の背景には米債が買われたことだけでなく、ユーロ圏の物価も低迷し、ECBの超緩和策の修正も極めて慎重に行うとの見方などもあったとみられる。

 日本の10年債利回りも7月7日に0.105%まで上昇し、日銀が指し値オペを実施したタイミングがピークとなり、9月1日に10年債利回りが再びマイナスとなった。しかし、この水準がボトムとなり、今度は上昇基調となってきている。

 日本の10年債利回りは足元、0.080%あたりまで上昇し、再び0.1%を試すかのような動きとなっている。米10年債利回りも9月上旬の2.0%近辺から2.3%台に上昇した。ドイツの10年債利回りも9月上旬の0.3%近辺から0.5%近くまで上昇している。

 ここにきて日米欧の国債が売られている理由としては、足元物価は謎としても、9月のFOMCにおける金融政策見通しで、会合参加者の多くが年内1回の追加利上げを予想するなど年内利上げ観測が再燃したことも挙げられよう。また、2日に発表された9月のISM製造業景気指数が2004年5月以来の高水準を記録し、この日の米国株式市場は3指数ともに過去最高値を記録したが、米景気の好調さも米10年債利回りの押し上げ要因となっているとみられる。

 ここに財政面の懸念も出てきている。トランプ大統領は連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表したが、財源の問題があり、米国債の増発など財政悪化も懸念材料となりつつある。

 日本では衆院選挙が実施されることとなったが、安倍首相は消費税の増収分の使途変更を表明した上で、2兆円規模の新たな経済対策を行うとしている。対抗馬となりそうな小池氏率いる希望の党は消費税の凍結を打ち出すなど、日本でも財政健全化に対する懸念が生じつつあり、これが日本国債を買いづらくさせている。

 北朝鮮問題については、ひとまず軍事衝突は避けられるとの見方もあり、地政学的リスクの後退により、米債、ドイツ国債、日本国債ともに再度売られた側面もある。

 このようにいくつかの要因によって、日米欧の国債の利回りは揃って上昇基調にあるが、注目は日本の10年債利回りがどこまで上昇するのかということになるのではなかろうか。再び日銀が0.1%で抑えに掛かれば、日本国債の利回りだけでなく、米国債やドイツの国債利回りも抑えられる可能性がある。しかし、日本国債の利回りだけが強制的に抑えられ、米国やドイツの国債利回りがさらに上昇するとなれば、日本国債を取り巻く状況に変化が生じる可能性もある。


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# by nihonkokusai | 2017-10-04 10:07 | 債券市場 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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