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国債の種類を知ろう

 新年度入りしたことで、初めて債券や金利関係の部署に配属された方もいるのではないかと思う。今回は国債の種類について解説してみたい。

 日本国債には期間に応じた種類分けに加え、発行根拠法に基づいた種類分けが存在している。期間による種類分けとしては、1年以下の政府短期証券(FB)及び割引短期国債(TB)は2009年2月より国庫短期証券(TDB)として統合発行されている。

 償還期間が2年以上のものは長期国債と呼ばれ、2年、5年、10年、20年、30年、40年の利付国債が発行されている。さらに10年物価連動債が発行されている。既存の国債を再発行する流動性供給入札という発行形式もある。

 発行根拠法に基づいた国債については、まずは建設国債と赤字国債がある。財政法を発行根拠法としているのが建設国債である。財政法の四条に記載されているため、四条国債とも呼ばれている。建設国債は公共事業などの財源となり、国の資産を形成するために発行される。

赤字国債は特例国債とも呼ばれ、特例措置として財政法4条に対する特例法を制定し、特例により発行されるものである。特例国債は建設国債の発行をもってしてもなお歳入が不足すると見込まれる場合に、公共事業等以外の歳出に充てるための資金調達を目的として新規に発行される国債となる。

 建設国債と赤字国債には60年償還ルール呼ばれるルールが存在している。1965年度に戦後初めて発行された国債(7年債)は、その満期が到来する1972年度に全額現金償還されたが、1966年度以降に発行された建設国債については、発行時の償還期限にかかわらず、すべて60年かけて償還される仕組みが導入された。

 たとえば10年国債が発行されても、10年後に現金で償還されるのは六分の一だけで、残りについては借換債と呼ばれる国債が発行される。これにより60年かけては建設国債と赤字国債償還される仕組みとなっている。60年償還ルールが作られたのは1968年5月なので、当時に発行された国債も未だ完全には償還されていない。60年というのは公共事業によって建設された物の平均的な効用発揮期間、つまり使用に耐えられる期間が、概ね60年と考えられたためである。これが何故か赤字国債にも適用されている。

 2001年度から特別会計に関する法律(第62条第1項)を発行根拠法とした財政融資資金特別会計国債、一般には財投債と呼ばれる国債が新たに発行された。財投債は国がその信用に基づいて発行するものであるため、建設国債や特例国債と同様に発行限度額について国会の議決を必要とする。財投債には60償還ルールは適用されない。


# by nihonkokusai | 2019-04-08 08:57

米国ではキャッシュレス決済に反発する動きも

 4月4日付けの日経新聞によると、米国で買い物や飲食の代金支払いに現金を使わないキャッシュレス決済に反発する動きが広がってきたそうである。ニュージャージー州は3月18日、小売店に対し、米ドルなど現金での支払いを受け付けることを義務化する法律を制定したとか。

 米国の都市部ではクレジットカードやスマートフォン(スマホ)を使った決済しか使えない店舗が増えているそうである。これに対し現金で払う頻度が高い低所得層が新しい金融サービスの恩恵を受けられずに排除されるとの声も出始め、そのため自治体が動きを見せたようである。

 現金を使わないキャッシュレス決済には、クレジットカードや銀行口座を介在するケースが多く、それを持たない人が排除される懸念はある。ただし、現金をプールするかたちでのFeliCaを使ったカードは使えると思われるが、米国では「Apple Pay」などはあっても、カード形式のものはあまり普及はしていないようである。

 キャッシュレス決済の普及により、店舗側としては現金を銀行口座に振り込むなどの作業は軽減できる上に、データの集計も楽になり、現金を保有することによる盗難などのリスクも軽減できる。これに対して、キャッシュレス決済には一定の手数料が掛かることも導入にあたりネックとなっていようが、すべての利用者がキャッシュレス決済を利用できない点もやはり配慮する必要はありそうである。

 日本では大きな震災なども経験し、停電時にはキャッシュレス決済が利用できなくなるというリスクもある。さらに国内では現金の利用がどこでもできることで、どうしても現金の利用も多くなり、財布には現金を入れておかないと不安となる。

 日本のキャッシュレス化についても、その拡大にはやはり限界は出てくるとみられるが、それ以前にひとつ気になるのは、日本のキャッシュレス決済にはどうしてもクレジットカードが介在している点である。

 銀行口座に紐付けされてデビットカードのように直接、口座から現金が引き落とされれば、必要とされる手数料も軽減できるのではなかろうか。QRコードを利用した個人同士や個人と店舗との口座間での現金振替なども可能となれば、利便性は高まると思うのだが。


# by nihonkokusai | 2019-04-07 13:43

日本でも期間50年の債券が発行されるとか

 日本で償還までの期間が最も長い50年という社債を、大手不動産会社、三菱地所が発行することになったとNHKや日経新聞が報じた。

 国債は期間40年のものが発行されているが、これまでは社債を含めて40年を超える期間の通常の債券は発行されておらず、今回の三菱地所の社債が最も償還までの期間が長い債券となる。

 少し古いデータとなってしまうが、海外では50年を超す期間の債券は国債を主体に発行されていた。

 たとえばフランスでは、オランダにおける年金基金の制度改正など年金に関する制度改革などにともなって、超長期債のニーズ増大に応えることを目的とし、2005年2月に50年固定利付債をシンジケート方式にて発行した。

 50年以上の国債は、他にポーランドで50年債、スイスでも50年債、中国では100年債が発行されていた。

 英国では「利払負担の軽減」を目的として、2005年5月に50年固定利付債を入札方式にて発行している。ちなみに英国では永久債と呼ばれる償還期限を定めない方式の債券を発行していたが、それらは統合されて2015年に償還されている。

 米国では50年債の社債が発行された事例もあるとか。

 その米国では長短金利が逆転したことが話題となったが、通常の債券は期間が長いほど利回りは高くなる。それだけ保有期間のリスクがあるためである。日本でも10年国債利回りはマイナスだが、40年債の利回りは0.5%台となっている。

 社債の利回りは最も安全性の高い国債の利回りに上乗せされて決定するが、そもそも50年の国債がない。このためイールドカーブを推計で延長するようなかたちで金利を決定するとみられるが、今回の三菱地所の50年債の利回りは、格付けも高いことも加味された上で、1%台になる見込みのようである。

 日銀の大胆な金融緩和やそれによる長期金利コントロール、さらには物価が「低位で安定」していることもあり、期間の長めの国債利回りも歴史的な低位にある。このため、発行する企業としては、金利負担を抑えて、長めの資金を調達することができる。債券を購入する側からすれば、期間10年の国債までマイナスの利回りとなっているなか、少しでも高い利回りを求めており、そのニーズに応えるものとなる。


# by nihonkokusai | 2019-04-05 10:09 | 債券市場

国債はこうして誕生した

 漠然とした日本国債への関心はあっても、その本質を理解している人は少ないように思われる。国債のことを理解しようとしても、そのような機会も多くはない。大学などで学ぶ機会も限られよう。

 新年度入りして、金融機関などに勤めている人のなかには、国債など債券に接した方もいるかと思う(某中央銀行の政策の影響もあって債券村の人口はだいぶ少なくなったようではあるが)。今回は国債はどのように誕生したのかについて歴史から探ってみたい。

 国債の歴史は債券の歴史であり、また有価証券そのものの歴史でもある。国債は国・政府の借金であるが、これは国王や皇帝による個人の借金とは異なる。

 中世ヨーロッパの国王は、領地などを担保に商人たちからお金を借り入れていたが、国王に直接お金を融資するにはリスクが伴った。借金を踏み倒される恐れや、国王には寿命もあるため債務が引き継がれるのかどうかもわからないためである。そのため、国王の借金は商人の借金よりも高い金利が求められていた。

 12世紀の中頃、ベネチア、ジェノバなど北イタリア諸都市において本格的な政府による債務の調達が開始された。これが国債の起源と言われているものである。たとえば、ジェノバでは議会が元利返済のため税収を他の歳入から分離し、その徴税権を担保に出資債券を発行し国に融資したのである。

 この仕組みを取り入れて、国債制度を確立させたのが16世紀におけるオランダである。ハプスブルグ家のカール五世はフランスとの戦争のために巨額の資金が必要となり、領地であったネーデルランド連邦ホラント州の議会に元利金の返済のための税収を与え、その議会への信用を元にして国債の発行制度を確立したのである。

 つまり国王の借金ではなく、政府が税収を担保にして永久機関とみなされる議会の信用を元にして発行されたものが国債なのである。そのためには議会を中心として強い徴税権を持った国家の樹立も必要不可欠となる。北イタリア諸都市からオランダ、そしてオランダの制度を取り入れて、それをさらに充実させたイギリスといったように近代国家の形成とともに国債制度が育まれていったのである。


# by nihonkokusai | 2019-04-04 10:24 | 国債

マネタリーベースで物価を動かせたのか

 日銀が2日発表したマネタリーベース(資金供給量)の3月末の残高は506兆2932億円となり、3か月ぶりに増加した。

 「教えて日銀」という日銀のサイトによると、マネタリーベースとは、「日本銀行が世の中に直接的に供給するお金」のこと。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と日本銀行当座預金(日銀当座預金)の合計値とある。

 マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

 2013年12月に日本経済団体連合会審議員会における「デフレ脱却の目指すもの」と題する講演で、黒田日銀総裁は次のようにコメントしていた。

 「具体的な金融緩和の手法としては、日本銀行の保有額が年間約50兆円増加するように国債の買入れを行い、マネタリーベースを2年間で2倍に拡大させることとしています。2年後のマネタリーベースは、名目GDPの約60%に達します。これは、現在の米国のFRB(22%)や英国のイングランド銀行(22%)のケースを遥かに凌駕する規模であり、歴史的にも例のない金融緩和と言えます。」

 歴史的にも例のない金融緩和とはこの年(2013年)の4月の金融政策決定会合で決定した量的・質的緩和政策である。黒田総裁は次のように続けている。

 「量的・質的金融緩和は、様々な波及経路を想定していますが、日本銀行のこれまでの金融緩和政策や、海外の主要中央銀行で実施されている金融緩和政策と大きく異なるのは、「期待の転換」を特に重視している点です。「量的・質的金融緩和」は、強く明確なコミットメントとそれを裏打ちする異次元の金融緩和によって、市場や経済主体の期待を抜本的に転換し、インフレ予想を直接的に引き上げることを目指しています。」

 「期待の転換」は起きたのか。マネタリーベースと物価の関係を追ってみたい。日銀のマネタリーベースのデータが1996年7月からであったので、1996年7月以降のマネタリーベースと日銀の目標としている物価指数である消費者物価指数(除く生鮮、前年同月比)を適当に比べてみた。

年月 マネタリーベース コアCPI前年比

1996年7月 489,123 プラス0.3%

1999年12月 929,780 マイナス0.1%

2003年3月 1,062,876 マイナス0.6%

2012年4月 1,230,656 プラス0.2%

2013年4月 1,552,803 マイナス0.4%

2014年4月 2,255,347 プラス3.2%(消費税の影響を除くとプラス1.5%)

2015年4月 3,058,771 プラス0.3%

2016年4月 3,861,893 マイナス0.4%

2017年4月 4,621,733 プラス0.3%

2018年4月 4,983,048 プラス0.7%

2019年2月 4,972,997 プラス0.7%

 上記は適当にピックアップしたものではあるが、そのデータは日銀と総務省のサイトからピックアップできることで参照してほしいが、意図的に何かを無理矢理導こうと抜き出したものではない。

 この数値を見比べて、この両者に何かしらの相関関係はあるかと試験で問うたとすれば、その解答は特に相関は見当たらないとの解答が多いというか、それを正解とせざるを得ないのではなかろうか。タイムラグがあるとしても相関は見えない。

 そもそもマネタリーベースとは何か、日銀が何をしているのかに多くの国民の関心は薄い。量的・質的金融緩和によって国民の「期待の転換」を図るなどということができるのかは甚だ疑問であったし、現実にこれらの数値が期待の転換などできなかったことを示している。

 さらに、ここまで長期国債の買入を主体にマネタリーベースを歴史的にも例のない規模まで増加させたしまった副作用はまったくないものなのか。日銀にあらためて問うてみたい。


# by nihonkokusai | 2019-04-03 09:48 | 日銀
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