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日銀のイールドカーブ・コントロールはここがおかしい

 日銀の木内審議委員は23日の山梨県での講演のなかで、イールドカーブ・コントロールのプラスの側面として、「金融市場調節の操作目標を長短金利に変更したことによって、国債買入れペースが変動しうる状態となったことから、この先、国債買入れペースが縮小して、国債買入れの持続性が高められる可能性」を指摘している。しかし、現実には80兆円というメドの数値を残しており、国債買入れペースを縮小させることは容易でないことを日銀は1月の国債の買い入れ調整で身をもって知った格好となった。


 日銀は1月25日の国債買入で予想された中期ゾーンをスキップし、その結果、中期ゾーンの国債買入は12月の6回から5回に減り、8200億円減額されることになった。これを受けて市場は動揺を示し、それを沈めるため25日の5年超10年以下の金額を4500億円と400億円増額させた。


 しかし、これで市場の動揺は収まらず、日銀の意図も見えないことで、2月2日の10年国債入札日に10年債利回りは0.115%まで上昇した。これは0.1%台を容認しているのかを試したとも言える。そして3日の日銀の買入では超長期は入らず、5年超10年以下も400億円の増額にとどめたことで、ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとものサインとも受け止められた。これを受けて10年債利回りは0.150%まで上昇した。


 これに動揺したのが今度は日銀となった。日銀は通常のオペタイムではなく12時半というイレギュラーな時間帯に新「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。これにより日銀は7239億円もの国債を買うこととなり、さらに5年超10年以下の増額分も維持せざるを得なくなり、その結果、買入ペースは縮小どころではなくなってしまった。


 木内委員は今回の講演で、イールドカーブ・コントロールのリスクとして下記の指摘をしたが、まさに1月末から2月上旬にかけてのドタバタはこのリスクが顕在化したこととなる。


 「イールドカーブ・コントロールのもとで、先行き、国債買入れペースが国債買入れの持続性を高めるのに十分なペースで低下していくかは不確実であり、逆に国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあると考えています。」


 日銀の現在の政策である長短金利操作付き量的・質的緩和の問題点は量を完全に引っ込めることなく、金利を政策目標に据えたことである。まさに「二兎を追う者は二兎をも得ず」となり、木内委員も「一般に、量と金利は一体的に決まるものであるため、両方に明示的な目標を設定しつつ安定的な金融調節を行うことは難しいと私は考えています」とコメントしている。


 このリスクについては「国債市場に外的なショックが生じる場合に顕現化しやすく、昨年11月以降の米国長期金利上昇に伴うわが国長期金利への押し上げ圧力が長期金利操作への最初の試練になっていると私は考えています」ともコメントしている。


 このリスクへの対応としてか、日銀は国債買い入れ日の事前予告を検討していると伝えられたが、そういう問題でもなかろう。そもそも国債の買い入れを減額したいのであれば、それをはっきり伝え、80兆円というメドもなくすべきである。また長期金利の目標についてもかなりレンジがあることを示すべきで、指し値オペの乱用を防ぐことも必要になろう。市場参加者も国債買入の維持の上でも減額は必要と認識しているはずである。それが言えないところに現在の日銀の金融政策上の矛盾がある。


 そもそも日銀の金融政策で長期金利がコントロールできるのか、それをして良いのかという問題も存在する。木内委員も講演で下記の指摘をしていたが、その通りだと思う。


 「長期金利を一定の水準にコントロールすることは、金利の変動を通じた経済の自動安定化装置機能を損ねてしまうことになり、長期金利をコントロールしない場合と比べて経済の振幅を増幅し、経済を不安定化させてしまう可能性が考えられます」


 しかし、木内委員も指摘しているが、長期金利の目標水準の変更は現実には容易でない。「目標水準を頻繁に見直すと、目標に対する信認の低下を招き、市場を不安定化させてしまうリスク」を木内委員は指摘しているが、それよりも異次元緩和を続けないと為替市場や株式市場が動揺してしまうという恐怖心の方が日銀には強いように思える。



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# by nihonkokusai | 2017-02-24 09:58 | 日銀 | Comments(0)

3月のオランダの総選挙の行方にも注意

 4月23日と5月7日に実施されるフランス大統領選挙の行方が注目されているが、そのフランスの大統領選挙の行方も左右しかねないのが3月15日に実施されるオランダの総選挙となる。


 昨年の米国大統領選のトランプ氏勝利の余勢を駆って、オランダでは移民受け入れ反対や反欧州連合(EU)を掲げている右翼・自由党(PVV)が勢いづいている。


 へールト・ウィルダース氏が率いる右翼・自由党(PVV)は現在、下院(定数150)で第5位の12議席を持つが、最新世論調査によれば30議席前後を獲得し、第1党になると予想されている。


 PVVが第1党になっても、ウィルダース氏が首相になる可能性はいまのところ低い。PVVが実際に30議席以上を獲得したとしても半数以上(76議席)には満たない。このため連立政権が必要となるが、PVVを追う自由民主党やキリスト教民主勢力、労働党、グリーン・レフトといった既成政党は、PVVと連立政権を組むことはないと表明している。


 これに対しウィルダース党首はインタビューで、「PVVが有権者の支持を得て本当に大きな躍進を遂げる場合」、彼らは自分と協力せざるを得ないだろうと発言していた(ブルームバーグ)。


 しかし、ウィルダース党首の極端な反移民などに対する過激な発言等もあって、連立を組んでも良いとする党が現れる可能性は少ない。ただし、PVVの勝ち方次第では、全くないとも言い切れないのかもしれない。


 そのウィルダース党首は総選挙で勝った際に特別立法を行い、勧告的な意味合いを持つ国民投票を実施するとも発言していた。その国民投票はオランダのEUからの離脱を問うものである。連立政権が組めない際にはそれは可能ではないものの、この発言も完全には無視できるものではない。


 現実にはウィルダース氏が率いるPVVが第一党となっても連立政権は組めず、オランダの政局が混沌とし、それが不安定要素となる可能性がある。また、ウィルダース氏が率いるPVVが総選挙で躍進を見せると、今度はフランスの大統領選挙でウィルダース氏と同様にユーロ圏離脱などを掲げているルペン氏が勢いづく可能性もあり、いまのところこちらの方が市場では懸念されているように思われる。



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# by nihonkokusai | 2017-02-23 09:49 | 国際情勢 | Comments(0)

市場を動揺させかねないフランス大統領選挙の行方はここに注意

ここにきてフランスの大統領選挙を巡る思惑で、欧米の金融市場でリスク回避の動きが出たり、フランス国債が売られるなどしている。今後、東京市場を含めて世界の金融市場に影響を与える可能性のある今年のフランスの大統領選挙についてあらためて確認しておきたい。

フランス第5共和政の第10回大統領選挙は2017年4月23日(日)と5月7日(日)に実施される。第1回投票の前日に18歳以上で、民事上・政治上の権利を享有する、すべてのフランス国籍者が投票できる。つまりフランス国民による直接投票によって大統領が決まる。

選挙日程が2回予定されているのは、第1回目の投票で全体の過半数の票を取った候補が出ない際に、投票率の上位2名によって決選投票が行われるためである。1965年以降、第1回投票で大統領に決まった候補者はなく、今回もこれまでの世論調査などからも決選投票は不可避とみられている。

今回の大統領選挙が最も注目されているのが、極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首である。ルペン党首はユーロ圏離脱や欧州連合(EU)離脱の国民投票実施を掲げている。英国のEU離脱や米国でのトランプ大統領の登場の流れがフランスでも強まるとなれば、このルペン党首が勢いづくことになる。

Ifopの最新の世論調査によると支持率トップはルペン氏の26%、これをマクロン、フィヨン両氏が約18.5%で並んで追っており、4位はアモン氏の14%、5位メランション氏11.5%となっている(ブルームバーグ)。

このようにルペン党首が支持率トップではあるが、もし決選投票となれば反ルペン派が勢いを増して、ルペン党首の大統領の就任はないとの見立てとなっている。その見立てがやや怪しくなってきたため、ここにきて市場が揺れている。

与党・社会党など左派陣営のブノワ・アモン氏と共産主義の支持を集める急進左派のジャン・ルク・メランション氏が、協力の可能性をめぐり協議していることを明らかになった。左派系2人が手を組めば決選投票に進む可能性も出てくる。マクロン氏と共和党など中道・右派陣営の統一候補フィヨン元首相が第1回投票で敗北するのではないかとの観測が出ていた。ところがその後、左派候補2人が目指した共闘の取り組みは決裂したと伝えられている。

現職のオランド大統領は国民からの支持率が極めて低く、これまでのパターンからは通常、2期目を目指すところ早々に再選を諦めており、オランド大統領の代わりとして出馬したのがブノワ・アモン氏である。

そして左派からは中道・無党派のマクロン前経済相が出馬を予定している。フランス大統領に最も近いとされていたのがこのマクロン前経済相である。

右派統一候補のフィヨン氏は最大野党・共和党に属しサルコジ政権で首相を務めた人物である。

左派の2人が組まない限り、5月7日の決選投票に進むのはルペン氏、マクロン氏、フィヨン氏のうちの2人、いまの勢いであればルペン氏とどちらかということになる。

オピニオンウェイの調査によると、もし決選投票がマクロン対ルペンとなった際は58%対42%でマクロン氏、もしフィヨン対ルペンとなった場合には56%対44%となると見込まれているそうである(ロイター)。

ちなみに2002年の大統領選挙の際には1回目の投票で現職のシラク大統領に次いで、極右政党・国民戦線(FN)のジャンマリ・ルペン党首(マリーヌ・ルペン氏の父親)が2位で決選投票に進んでいた。決選投票では1回目の選挙で敗れた左派の社会党候補の支持者も、ルペン氏を当選させないために、ライバルであった保守系政党のシラク氏支持に回り、シラク氏が大差で勝利していたということもあった。

市場ではルペン氏が大統領選挙で勝つことはないだろうとの予想が大勢を占めているようだが、この予想が米国大統領選挙の際のように覆されることとなれば、フランスのユーロ離脱の可能性まで出てくることとなり、市場には大きなインパクトを与えることになる。


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# by nihonkokusai | 2017-02-22 09:32 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀のイールドカーブコントロールが難しい理由」

 日銀の中曽副総裁は2月10日の高知県での講演後の記者会見で、イールドカーブコントロールに関して次のような発言をしていた。


 「いわゆる長短金利操作付き量的・質的金融緩和のもとでは、金融市場調節方針において、短期政策金利と10年物金利の操作目標を定めた上で、金融市場調節方針と整合的な形でイールドカーブが形成されるように国債買入れを運営しています。」


 日銀の現在の操作目標は短期の政策金利と10年物の金利となっている。この2つの金利を起点として適切なイールドカーブを形成することで2%の物価目標を達成するというのが長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の目的となる。


 「国債買入れの金額とかタイミングとか回数は、国債の需給環境や市場動向を踏まえて実務的に決定されるものです。日本銀行のオペレーションデスクは、こうした実務的な能力を十分に有していると私は思っています。」


 操作目標を決めるのは金融政策決定会合においてであるが、その操作目標の金利を適切に誘導し、日々のイールドカーブの修正を行っているのが、中曽副総裁の言うところのオペレーションデスクとなる。国債の需給環境や海外を含めた市場動向次第では、日銀の許容範囲を超えた金利の上げ下げが起きることが予想され、それをオペレーションデスクは国債の買い入れ金額の増減、もしくは指し値オペを使うことによって調節する。


 日銀はこれまでコントロールできない、もしくは市場に任せるべきとしていたはずの長期金利をコントロールするという新たな実験を行っている。国債市場での日銀に対する依存度の高まりにより、日銀の国債買入の細かな増減でも影響を与えられるとの認識が背景にあろう。ただし、ここで問題となるのは日銀は国債の買い入れ額そのものの調節も同時に行おうとしているように見えることであり、このため市場と日銀の間での意志の疎通に支障が出ていると考えられるのである。


 国債買入額の縮小等を含めて政策スタンスを示すのは金融政策決定会合である。その決定会合ですでに量から金利に操作目標を戻し、マネタリーベースの目標値を取り下げた。しかし国債の買入については80兆円という数字をメドとして残している。その80兆円が数字として残ったことで、今後の国債買入の持続性に問題が生じることを市場は(日銀も?)警戒しており、それが日銀のコントロールをより難しくさせている要因だと思われる。



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# by nihonkokusai | 2017-02-20 09:43 | 日銀 | Comments(0)

FRBの利上げとバランスシート縮小の行方

FRBのイエレン議長は14日、上院銀行委員会における半期に一度の証言で、緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないと指摘し、利上げを遅らせれば後手に回り、結果的に速いペースでの利上げを余儀なくされると指摘した。今後数か月に、どのようにバランスシートを縮小していくかについて協議することも明らかにした。ただし、政策金利を十分引き上げるのが先決で、バランスシートの縮小に取りかかるのはそれ以後だとの発言もあった。

フィッシャー副議長は16日、ブルームバーグテレビのインタビューで、この時期に想定していた状況と現状は一致している、つまりインフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定だと発言し、この二つが実現すれば、ほぼ想定していた通りの軌道に乗ることになるだろうと述べた。

ニューヨーク連銀のダドリー総裁は15日、米経済がトレンドを上回るペースで成長し続け、予想通りに財政政策が景気を刺激すれば、FRBは今後数か月に利上げするとの見通しを示した。

ここにきてFRBの中心人物の3人が相次いで金融政策について発言があった。3人ともに共通しているのは、インフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定通りの状況となりつつあるなか、利上げについては前向きの姿勢であるということである。

市場参加者にとって目先の問題となるのは、3月のFOMCでの利上げの可能性の有無である。2015年、2016年とも年一回ペースの利上げに止まっており、3月の利上げを予想する向きは少ない。ところがイエレン議長やフッシャー議長の利上げに前向きな発言を受けて、一時早期利上げの可能性が意識され、3月利上げ観測が強まった。しかし、ニューヨーク連銀のダドリー総裁による「今後数か月」との表現などもあり、3月の利上げ観測は後退した。

FOMCでの金融政策の変更は、7名の理事と5名の地区連邦銀行総裁の合計12名による多数決で決められる(現在は理事2名欠員で、理事5名と連銀総裁5名の10名)。しかし、その流れを決めているのは執行部とされるイエレン議長とフィッシャー副議長、そしてこちらも副議長待遇のダドリー総裁とみられる。

その意味では前向きのイエレン議長の発言に対して、ダドリー総裁が少しブレーキを掛けたようにもみられ、少なくとも3月の可能性より6月の可能性のほうが確かに高いのかもしれない。

利上げ時期も注目されるが、それとともにバランスシートの縮小についてはかなり慎重になっていることも個人的には気掛かりである。2006年の日銀は量的緩和を解除してからゼロ金利政策を解除した。これに対してFRBはまずはテーパリングを行ってから、ゼロ金利解除を行い、膨らんだバランスシートの縮小は後回しとした。

これは米国債券市場にも配慮してものではあろうが、償還分を乗り換えない程度の縮小であれば、米国債券市場に大きな影響を与えるとも思われない。大きなバランスシートがあれば物価を押し上げるわけではないことは日銀も証明した格好となっており、なぜ縮小についてこれほど慎重になっているのかが個人的には疑問である。


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# by nihonkokusai | 2017-02-18 10:27 | 中央銀行 | Comments(0)

バブルの様相強めつつある米国株式市場

 ここにきて米国株式市場では、ダウ工業株30種平均、ナスダック総合株価指数、S&P500種株価指数がそろって過去最高値を更新している。ダウ平均は2万ドルが節目となっていたが、そこを抜けたこともあり、上昇圧力が強まったようにみえる。


 この米国株式市場の上昇にはいくつか背景がある。そのひとつを象徴するのがゴールドマン・サックスの上場来高値更新であろうか。ゴールドマン・サックスなど金融株の上昇の要因にFRBの利上げ観測がある。イエレン議長は14、15日の議会証言で利上げに前向きの姿勢を示した。


 15日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比で0.6%もの上昇となった。前年比では2.5%の上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となるなど物価も利上げを後押しする要因となる。


 ゴールドマン・サックスの上場来高値更新の要因としては、トランプ政権の閣僚に何人もの人材を送り込んだこともあるのではなかろうか。そのトランプ政権下で金融規制の緩和が進む事への期待や減税などの期待も株価上昇の要因となっている。


 トランプ氏はIT企業とはやや距離を置いているようだが、アップルも上場来高値を更新している。新型iPhoneへの期待やトランプ政権が米企業が国外の資金を国内へ持ち帰る際にかかる税金の引き下げを提案しているとの報道なども材料視されているようだが、米景気の好調さも米国を代表する企業の株価を押し上げているのではなかろうか。


 しかし、絶好調に見える米国株式市場の上昇に対し、利上げがその根拠のひとつとなっているにも関わらず、米長期金利やドルの上昇が鈍いことが気になる。米長期金利は2.5%台に乗せる場面はあっても押し返されている。ドル円も115円近辺に上昇しても押し返されて113円台に下落するなどしている。


 こうなるとほとんど調整らしき調整もなく上昇してきている米株の動きの方が妙に見えてくる。米長期金利やドルの動きを見てそろそろ米株も注意しなければならないとしても、ここでショート(空売り)を仕掛けるのもリスクがある。もうはまだなりで相場上昇が続くことも当然予想される。これはこれで日本のバブル時のような様相にも近いように見えてくる。いずれにしても、ここからの米株の動向は注意してみておく必要がありそうである。



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# by nihonkokusai | 2017-02-17 10:00 | 投資 | Comments(0)

利上げに前向きなイエレン議長

 FRBのイエレン議長は14日、米上院銀行委員会で証言し、「追加利上げの条件は、雇用と物価が想定通りに改善するかどうかだが、今後数回の会合で判断するつもりだ」と主張した。緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないとも指摘。利上げするに当たってトランプ政権による財政刺激策の計画を待つ必要はないと指摘した。


 FOMCの今後のスケジュールは下記の通り。
3月14、15日(イエレン議長の会見有り)、5月2、3日(議長会見なし)
6月13、14日(イエレン議長の会見有り)、7月25、26日(議長会見なし)
9月19、20日(イエレン議長の会見有り)、10月31日、11月1日(議長会見なし)
12月12、13日(イエレン議長の会見有り)


 FRBは毎年3、6、9、12月にFOMCメンバーによる米国経済と政策金利の見通しを公表しており、政策金利の見通しは「ドット・チャート」と呼ばれている。これは今後の政策金利の予定を示すものではなく、あくまでFOMCメンバーの予想の集合体にすぎない。実際に2016年の利上げは年4回とドット・チャートで予想されていたが、現実には12月の1回だけであった。


 2017年のドット・チャートでの予想は年3回となっているが、これでFRBが3回利上げをしてくる予定だということではない。現実の利上げはかなり慎重に行ってくることが予想され、市場を取り巻く環境など次第の面がある。昨年は年末まで利上げを見送ったのは、年初からの新興国経済減速などによるリスクオフの動きや、英国のEU離脱などが影響していた。


 今年に関していえば、いまのところ利上げを躊躇させるようなリスク要因が表面化しているわけではない。トランプ政権の経済政策の行方が不透明材料ながら、これは景気や物価にはプラスに作用する可能性もあり、むしろFRBにとっては利上げを急ぐ要因ともなりかねない。また、15日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比で0.6%もの上昇となった。市場予想を上回り、2013年2月以来最大の伸び。1月の総合は前年比では2.5%上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となっている。FRBの物価目標はCPIではないものの、物価が予想以上にしっかりしているとなれば、早期の利上げという可能性も排除はできない。


 しかし、それでも慎重姿勢に変わりはないとみられる。このため、多くても年2回程度の利上げを想定している可能性があるのではなかろうか。3月のFOMCでの利上げの可能性は排除していないようだが、市場の予想は3月よりも6月となっているようである。6月に追加利上げを行って様子を見た上で12月に再利上げの判断をするのではないかと、今回のイエレン議長の発言からは予想される。


 それでも今後、何が起きるのか予想することは難しい。オランダを皮切りにフランスやドイツの選挙次第では、ユーロというシステム崩壊の危機が訪れる可能性もある。ギリシャも引き続きリスク要因となる。中国やロシアの動きなども気になるところ。物価をみる上では原油価格の動向も注意する必要があろう。



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# by nihonkokusai | 2017-02-16 09:18 | Comments(0)

無償化財源に教育国債という安易な考え方

 2月8日の日経新聞によると、自民党は大学などの教育に関する財政支援に必要な財源を確保するため「教育国債」の議論を近く始めるそうである。安倍首相は1月の施政方針演説で「誰もが希望すれば高校にも専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければならない」と述べ、高等教育の無償化に意欲を示した。教育無償化はもともと日本維新の会が改憲案の柱として掲げてきた。


 ただし、全国の大学・短大が学生から1年間に徴収する授業料総額は約3兆1000億円に上るという(時事通信)。大学に限っても巨額の財源が必要となる。麻生財務相は6日の衆院予算委員会で、教育国債について「償還財源の当てはない。実質は親世代が税負担や教育費から逃げるため、子どもに借金を回すものだ」と述べ、否定的な見解を示した。


 ここにはいくつかの大きな問題が潜んでいる。「誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければならない」との首相の訴えは理解できなくはないが、とにかく大学に行けば良いという考え方にそもそも問題はなかろうか。


 これは国民の理解が得やすく、これをきっかけに憲法改正に持っていきたいとの意図も見え隠れし、日本維新の会と自民党の関係強化も狙いのようにみえる。このあたりの問題については、ここではひとまず置いて、その財源として浮上している「教育国債」にも大きな問題があると思われる。


 そもそも財源の目処もないものについて国債を発行すれば良いという考え方があまりに安易すぎる。たしかにいまの日本の債券市場では日銀が異常な量の国債を買い入れていることもあり、需給はかなりタイトとなっている。日本国債の利回りも日銀の長短金利操作によって低位に押さえつけられており、国債を発行しやすい環境にあることは確かである。しかし、この環境そのものがすでに変化してきており、このような好環境が未来永劫続くと予想することの方が危険である。日銀もいずれは出口政策を議論せざるを得なくなる。


 それでなくても2020年までのプライマリー・バランスの黒字化達成には赤信号が点滅している状況となっているところに、名称を変えたといえど国債を増発するには無理があろう。いまならば年間5兆円程度の国債を増発しても日本の債券市場での需給面では何ら問題はなく、いくらでも調整は利くだろうとの見方もあろうが、国債は打ち出の小槌ではない。市場がいくら安定していようが、市場参加者が日本国債に対するリスクを完全に忘れ去っているわけではない。国債を発行せずに、その分はあらたな税収で賄うものであれば話は別だが、償還財源の当てのない国債を発行することによって財源を補うという考え方は、やや安易な発想と指摘せざるを得ない。



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# by nihonkokusai | 2017-02-15 09:34 | 国債 | Comments(0)

FRBも次第にトランプ色が強まることに

FRBは10日、タルーロ理事が今年4月5日をメドに退任すると発表した。タルーロ理事がトランプ大統領に退任の意向を伝える手紙を提出したそうである。タルーロ理事はオバマ前大統領の指名を受け2009年1月28日に就任した。空席となっていた金融監督担当副議長の任務を代行し、金融危機後の金融システムの規制強化に関わった。任期は2022年1月末まで残っていた(日経新聞電子版)。

FOMCの投票権のあるメンバーは理事会から7名の理事と、地区連銀から5名の地区連邦銀行総裁の合計12名によって構成される。現在のFRB理事の布陣は、ジャネット・イエレン議長、スタンレー・フィッシャー副議長、ダニエル・タルーロ理事、ジェローム・パウエル理事、ラエル・ブレイナード理事の5名である。FRBの理事会は本来、7人の理事で構成されるが現在空席が2つある。

タルーロ理事は、FRBの金融監督当局者として新たな規制の導入を主導するなどし、金融危機や深刻な景気後退への対応に尽力、最も厳しい銀行監督当局者の一人として高い評価を得ていた。しかし、金融規制を見直す大統領令にトランプ氏が署名するなど、今後は規制緩和の動きを強めることが予想され、タルーロ氏が退任表明は想定内との見方もあった。タルーロ氏が退任する意向を示したとのニュースが伝わると、株式市場では銀行株が上昇するなどしていた。

これで4月5日以降のFRB理事の空席は3つとなる。さらにイエレン議長の任期が2018年1月までとなっており、トランプ氏は再任しないことをすでに表明している。またフィッシャー副議長の任期も2018年中となっている。

トランプ氏は空席となっているFRB理事の3つの席をいずれ指名してくると予想され、いずれ議長、副議長も変えるとなれば、FRB理事会がトランプ色の強いものに刷新される可能性が出てきた。ラエル・ブレイナード理事はトランプ候補と大統領選挙で戦ったクリントン氏に近く、いずれブレイナード理事の去就が注目されることがあるかもしれない。

トランプ政権がFRBの政策に対してどのような認識を持っているのかはいまだはっきりしていない。ただし、現在の正常化路線については否定はしておらず、過度な金融緩和を求めるようなことはせず、ファンダメンタルに即したある程度の金利上昇も容認してくる可能性はある。このあたりが次第にはっきりしてくると、今後のFRBの政策にも影響が出てくる可能性があり、それはつまり日銀の金融政策の行方にも影響を与えてくる可能性がある。


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# by nihonkokusai | 2017-02-14 09:28 | 中央銀行 | Comments(0)

日本の債券先物の建玉が10兆円台に復活した理由



 2月3日に大阪取引所に上昇している長期国債先物の中心限月の建玉が10兆円を回復した。債券先物の建玉が10兆円台を越えたのは2016年2月4日以来となる。この日付けを見てピンと来た人もいるのではなかろうか。この数日前となる1月29日の日銀金融政策決定会合でマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定していた。


 昨年1月29日に日銀が決定したマイナス金利政策により、その後の国債の利回りは20年ゾーンあたりまでマイナスとなってしまった。債券市場では日銀のマイナス金利政策による国債利回りのマイナス化を受けて参加者が減少し、その結果として債券先物の建玉も減少していったのである。


 国債の利回りのマイナス化により、銀行や年金や生保などの資金運用に支障を来すようになり、日銀のマイナス金利政策に対して金融機関からも批判が相次ぐようになった。三菱東京UFJ銀行は国債市場特別参加者制度の資格を返上したが、これも国債利回りのマイナス化が影響していたといえる。


 こうした金融機関などからの批判を受け、日銀は総括的な検証を行うとともに昨年9月に長短金利操作付き量的・質的緩和政策を決定した。これまで日銀は操作できないとしていた長期金利を操作対象に加えたわけであるが、この政策の目的はマイナス金利政策の修正と言えた。


 つまり国債のイールドカーブをある程度スティープ化させて、金融機関の資金運用をやりやすくさせることが目的となったのである。これを受けてマイナスに沈んでいた10年国債の利回りがプラスに浮上し、債券市場での売買高も回復基調となった。債券市場の機能が回復し、それを示す象徴的なもののひとつが、この債券先物の建玉の10兆円台回復と言える。


 しかし、問題はこれからである。債券市場を取り巻く環境は改善しつつある。世界的な過度のリスク要因は後退し、原油価格の上昇もあり、欧米を中心に物価はしっかりしてきた。FRBの利上げとその背景にある雇用の改善等で米長期金利は2.5%近辺まで上昇してきた。日本の金利も上昇圧力が強まりつつある。そのなかにあって日銀は長期金利を国債の買入オペの調節で抑えようとしているが、その調節は容易なことではない。2月3日に日銀は指し値オペを実施したが、これは頻繁に使えるものでもない。債券市場の機能が回復すればするほど、市場を無理矢理押さえ込むには無理が生じることにもなるのである。



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# by nihonkokusai | 2017-02-13 09:52 | 債券市場 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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