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英国のメイ首相はハードブレグジットを示唆か

 英国ではユーロという単一市場からの離脱の可能性が強まりつつあり、ハードブレグジット・リスクが懸念されている。メイ首相は10月にEU法が英国で適用される欧州共同体法の廃止についても触れており、EU法を廃止するとなれば、単一市場から離脱せざるを得なくなる。

 メイ首相は17日の演説で、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた計画について説明するとしている。この演説が大きなポイントとなりそうである。英紙サンデー・タイムズは15日、メイ首相が移民流入抑制などのために欧州連合(EU)単一市場から撤退する計画を示すと伝えた。タイムズによると、メイ首相は移民制限やEU以外の国との自由貿易協定を可能にするため、EUの関税同盟からの脱退を準備する方針という(ブルームバーグ)。

 英国民が昨年の国民投票でブレグジットの決定をしてしまったことは確かであり、今後メイ首相がどのような手順を踏んで、どのようなかたちでEUを離脱するかに注目が集まる。

 メイ首相は昨年10月にEU法が英国で適用される欧州共同体法の廃止についても触れており、EU法を廃止するとなれば、英国は欧州司法裁判所の管轄外になる。

 英国はEU単一市場にアクセスする権利を持つ欧州経済領域(EEA)に加盟することでEUの単一市場に残留する可能性を探っていたようだが、これにはEU法への準拠が求められる。つまり英国がEU法を廃止するとなれば、EEAに加盟することでEUの単一市場に残留することが難しくなる。

 EUと何らかの経過措置を設けるなどして、ある程度の時間稼ぎは可能となるかもしれないものの、いずれは単一市場から離脱せざるを得なくなる可能性が高い。これがハードブレグジット・リスクとなる。EU圏内での無関税貿易という特権を失うとともに、金融機関がEU内の1国で事業の認可を得ると域内の他国でも事業活動が可能になるパスポーティングと呼ばれる制度が利用できなくなる。

 英紙サンデー・タイムズの記事を受けて、アジア時間16日早朝の取引で、英ポンドは下落。昨年10月のフラッシュクラッシュ以来の1ポンド1.20ドル割れとなった。

 政府当局者はタイムズに対し、メイ首相による17日の演説がさらなる「市場の調整」を引き起こすと見込んでいることを明らかにしたとも伝えられており、ハードブレグジットの可能性が強まってきた、というよりもほかの選択肢がない状況に追い込まれているともいえるのではなかろうか。

 英国のハードブレグジットにより、いまだ欧州の金融の中心地となっているロンドン金融街がどのような変貌を遂げるのか。英国経済の行方にどのような影響を与えるのか。ポンド安は英国経済には好影響として英国株は買われるような状況となっているが、そのような楽観的に見方が本当に続くのか。

 20日には米国でトランプ大統領が誕生する。そのトランプ氏は英タイムズ紙のインタビューで、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)は「素晴らしいこと」になると述べ、他のEU加盟国も英国に追随するとの見通しを示した。

 今年はオランダ、フランス、ドイツで選挙が予定されている。英国を発端としたブレグジットの動きは米国の後押し?も受けて拡がる懸念がある。その意味においても17日のメイ首相の演説は今後の欧州の動向に大きな影響を与える可能性がある。

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# by nihonkokusai | 2017-01-17 09:43 | 国際情勢 | Trackback | Comments(0)

2017年はトランプ氏だけでなく欧州の選挙にも注目

 2017年の最大の注目材料は20日に米国大統領に就任するトランプ氏の動向となりそうだが、欧州の動向にも注意しておく必要がある。

 英国では単一市場からの離脱の可能性が強まりつつあり、ハードブレグジット・リスクが懸念されている。メイ首相は10月にEU法が英国で適用される欧州共同体法の廃止についても触れており、EU法を廃止するとなれば、単一市場から離脱せざるを得なくなる可能性が高い。メイ首相は今月17日の演説で、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた計画について説明するとしている。この演説も大きなポイントとなる可能性がある。

 しかし、ユーロのシステムを揺るがしかねないのは何も英国ばかりではない。2017年にはユーロの中核国ともいうべきフランスやドイツでの選挙を控えている。その前に3月にオランダの総選挙が予定されている。

 米国の大統領選におけるトランプ氏の勝利により、欧州でもポピュリズム(大衆迎合主義)政党が支持を伸ばしているとされる。オランダでは反EU、イスラム移民排斥を掲げるヘルト・ウィルダース党首率いる極右・自由党が世論調査で高い支持率を維持している。オランダはEU離脱国の候補ともされているだけに選挙結果次第では、これに続くフランスやドイツの選挙に影響が拡がる恐れがある。

 4月から5月にかけてフランスの大統領選挙が実施される。フランスではテロや景気の低迷で左派・社会党を率いるオランド大統領の支持率は低下し、すでにオランド氏は次期大統領選への不出馬を表明している。この大統領選挙での注目ポイントは、誰が大統領になるのかというよりも、極右政党・国民戦線のマリーヌ・ル・ペン候補が選挙で獲得する票数とされている。オランダの選挙次第ではポピュリズム政党が勢いを増し、反EUを掲げる国民戦線の支持率が高まる可能性がある。それが6月に実施されるフランスの国民議会選挙に影響を与え、社会党と共和党によるフランスの二大政党制を揺るがす可能性もある。

 9月にはドイツでの連邦議会選挙が予定されている。盤石とされたメルケル首相の支持率は移民政策に対する不満から急速に低迷している。オランダやフランスの選挙でポピュリズム政党の勢力が強まることになれば、ドイツの選挙にも影響を与えよう。2016年の地方選挙では、メルケル首相の率いるキリスト教民主同盟(CDU)の得票が伸び悩む中、2013年に設立されたばかりの難民支援の削減を訴える右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が議席を確保している。連邦議会選挙結果次第では初めて議席を得る可能性があり、ドイツにおける第3党になる可能性もありうるとされる。

 昨年の英国の国民投票でのEU離脱の決定、イタリアの国民投票での改憲否定という結果を受けての首相の辞任、さらには米国大統領選挙のトランプ氏の勝利と、思わぬ流れの拡がりが、欧州にも押し寄せてくるのか。選挙の結果次第ではユーロというシステムに大きな影響を及ぼしかねず、これらの選挙の結果にも注意する必要がある。

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# by nihonkokusai | 2017-01-15 16:32 | 国際情勢 | Trackback | Comments(0)

2017年の金融相場をみる上で注目すべきポイント

 2017年の金融市場の動向を占う上で注目すべきポイントをまとめてみたい。最初に注意すべきは1月20日に就任する米国のトランプ大統領であろう。11日のトランプ氏の記者会見では、ロシアとの関係を問う質問が大半を占め、減税などの具体的な経済成長促進策は示されなかった。しかし20日に就任後はある程度、具体的な政策が打ち出されるとみられる。これまでのトランプ氏の発言等からはその柱となりそうなのが雇用面である。

 トランプに標的にされたトヨタは今後5年で対米に向け100億ドルの設備投資を行うと発表した。大統領選挙期間中にトランプ氏と衝突したアマゾンのベゾス氏は米国で10万人強を採用する計画を発表した。

 これらの動きはトランプ氏の顔色を伺いながらのもの、と見えなくもないが、大手企業のグローバルな投資戦略に変化が訪れてきている事も確かなのかも知れない。中国の急激な経済成長にブレーキが掛かり、中国では大気汚染も拡がるなど副作用も出ている。中国政府は元安を食い止めようと色々と策も講じるなど、いわゆる中国の時代がいったん終焉を迎えつつある。このようなタイミングでのトランプ大統領の登場が世界経済だけでなく政治のパワーバランスにどのような影響を与えるのかも注目される。

 米国市場動向を占う上では、FRBの利上げの行方も気になる。2015年12月に最初の利上げ、追加利上げは2016年12月とFRBは結果として慎重に利上げのタイミングを計ってきた。それは今後も同様もみられ、経済状況次第の面はあるが、今年も1回もしくは2回程度の利上げがあるとみている。その際にはトランプ氏が指名するであろう空席のFRB理事の人選などにも注意したい。トランプ氏が為替政策をどうみているのかも気になるところではある。いまのところある程度のドル高は容認しているように見える。

 昨年の英国のEU離脱問題、イタリアの国民投票の結果などを受けてのユーロシステムが継続可能なのかも焦点となる。英国はハードブレグジットへの懸念も出ている。英国のメイ首相は今月17日の演説で、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた計画について説明するとしている。この演説も大きなポイントとなる可能性がある。

 今年3月にオランダの総選挙が予定され、4~5月にフランスの大統領選挙が行われる予定。6月にはフランスの国民議会選挙も予定されている。さらに9月にはドイツの連邦議会選挙がある。これらの選挙の結果次第ではユーロというシステムに大きな影響を及ぼしかねない。

 今年は原油価格の行方もキーとなりそうである。1月1日に発効した協調減産が守られるのか。OPECは決して一枚岩ではなく、むしろ対立も激しくそこにロシアなどの非OPEC諸国の影響も考慮する必要がある。結果として減産はせざるをえないとみられ、原油価格が再度大きく下落するようなことは考えづらいか。

 国内では衆院解散総選挙の可能性も指摘されており、年内に選挙があるのかどうか、仮に選挙となったとしていまの盤石ともいえる安倍政権の行方に変化が出てくるのか。東京オリンピックにむけてさらに体制を整えてくるのか、そのあたりも焦点となる。

 その安倍政権と二人三脚で歩いて来た日銀の金融政策の行方は直接、債券市場に影響を与えかねないので注意したい。日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和はこれまでの政策をすべて付け足したものとなるなど、かなり無理を重ねている。かつては日銀が操作できないとしていた長期金利を操作対象に置いた。これにもかなり無理があり、外部環境の変化次第、特に金利に上昇圧力が加わりかねない場面では、市場参加者と日銀が対峙する懸念もある。日銀の今後の動向にも注意が必要となろう。

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# by nihonkokusai | 2017-01-14 11:30 | 債券市場 | Trackback | Comments(0)

2017年に日銀やFRBの人事等で気をつけるべきこと

 2017年の日銀とFRBの金融政策を決める会合のスケジュールを確認してみたい。FOMC後の議長会見は今年も四半期ごとに年4回、3、6、9、12の各月に予定されている。

1月30日(月)・31日(火)、January 31-February 1 (Tuesday-Wednesday)
3月15日(水)・16日(木)、March 14-15 (Tuesday-Wednesday)
4月26日(水)・27日(木)、May 2-3 (Tuesday-Wednesday)
6月15日(木)・16日(金)、June 13-14 (Tuesday-Wednesday)
7月19日(水)・20日(木)、July 25-26 (Tuesday-Wednesday)
9月20日(水)・21日(木)、September 19-20 (Tuesday-Wednesday)
10月30日(月)・31日(火)、October 31-November 1 (Tuesday-Wednesday)
12月20日(水)・21日(木)、December 12-13 (Tuesday-Wednesday)

 FOMCでは7名の理事(現在2名空席)と5名の地区連銀総裁の計12名が投票権を有する。このうち理事とニューヨーク地区連銀総裁は常任メンバーで、残りのメンバーはその他の地区連銀総裁が輪番制で1年間担当する。

 2017年に投票権を有する地区連銀総裁はエバンス・シカゴ連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、カプラン・ダボス連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁となる。タカ派とかハト派の区別はさておき、利上げの行方については議長や副議長の意向が強く反映されるとみられ、メンバー構成よりも特にイエレン議長の意向次第とも言えよう。ただし、空席となっている理事2名をトランプ次期大統領が指名してくる可能性があり、その人事次第では金融政策の行方に影響を及ぼす可能性はある。

 日銀についても引き続き、黒田総裁の意向が強く反映されるものとみており、長短金利操作付き量的・質的金融緩和という、まるで戦艦扶桑の艦橋のような政策がうまくいくのかどうかが注目される。

 黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁の任期は2018年3月までとあと1年とちょっとあるが、佐藤審議委員と木内審議委員の二人は今年7月に任期を迎える。この二人は異常な金融政策に対して批判的な見方をしており、2014年10月の量的・質的緩和の拡大、2016年1月のマイナス金利政策、9月の長短金利操作に関して反対票を投じている。これらについては反対票が投じられて当然と私は思うし、また委員会制度をとっている以上はこのような反対意見があってしかるべきと思う。しかし、佐藤委員と木内委員は再任はないとみられ、現状の日銀の金融政策に理解ある人物が政府から指名される可能性が高い。

 これはこれで日銀の金融政策において黒田総裁の意向がさらに強く反映されることになるかもしれないが、すでに日銀の金融政策はいろいろと限界も見えてきていることや、長期金利を取り巻く情勢如何では、方針そのものが微妙に変化してくることも予想される。結果としての出口政策に向けてはむしろ佐藤委員や木内委員の存在は必要とされる可能性があり、ボードメンバーの方向性が妙に一方的になると微妙な舵取りがより難しくなる可能性もある。

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# by nihonkokusai | 2017-01-13 10:04 | 中央銀行 | Trackback | Comments(0)

トランプ相場は終焉したのか

 米東部時間11日午前11時(日本時間12日午前1時)に米国の次期大統領となるドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利してから初めて、公の場で記者会見を開いた。金融市場だけでなく世界中の多くの人々が、その会見の内容に注目していた。

 トランプ氏はこれまで過激な発言を続け、その過激な発言そのものが大統領選挙ではむしろ追い風になった面もあったとみられる。大統領選後は公の場での発言は控えていたが、ツイッターを利用して「トヨタは米国向けカローラを生産するためにメキシコのバハに工場を建設しようとしている。あり得ない!」といった批判的な書き込みをしていた。今回のトランプ氏の会見では日本に対して具体的な言及はなかったが、貿易不均衡の相手先として中国やメキシコとともに日本も言及しており、貿易に絡んでの批判を強めることは予想される。

 金融市場では減税を含めた経済政策に関して何かしら具体的な示唆があるのかどうか注目されていた。こちらについても具体的な言及はなかった。11日の米国株式市場やドル円はトランプ氏の会見を受けて乱高下したが、これは内容そのものよりもアルゴリズム取引などによる影響もあったのではないかと思う。結果として11日のダウ平均は98ドル高、ナスダックも11ポイント高と高値を更新した。一時114円20銭台あたりに下落していたドル円は115円台に戻している。ただしチャートをみると、このドル円や日経平均は多少の調整を余儀なくされる可能性はある。

 このトランプ氏の経済政策を期待して、景気の回復と物価の上昇を睨んだ動きがトランプラリーとかトランプ相場と呼ばれた。昨年の大統領選挙の結果を受けての米長期金利やドル、米国株式市場の上昇などを総称したものであった。これは東京市場もその恩恵を受けた格好となり、ドル円は11月9日につけた101円台から12月には118円台に急上昇した。日経平均も11月9日に16000円近くまで売られたあと急速に切り返し、今年に入り2万円に接近した。

 これらの動きだけをみると2012年11月に発生したアベノミクス相場と類似している。このときも安倍自民党総裁のリフレ発言で、物価の上昇や景気の回復が意識されて、急速な円安と株高が起きたとされた。しかし、これらの動きはトランプ氏の政策(まだ具体化もしていない)や安倍首相の政策(そもそも物価は上がっていない)が、具体的な効果を発揮したというよりも、大きな流れが変化しつつあるときの起爆剤のようなものになったに過ぎないと私はみている。

 トランプラリーが期待感だけであり、ここにきてドル高や米金利高、株高などにブレーキが掛かったことで、すでにそれは終わってしまったとの見方も出ている。しかし、それはまだ結論づけることはできない。トランプラリーと呼ばれた金融市場の動きの背景にあるのが、世界的な危機の連鎖の終焉とそれらによる正常化の流れによるものとみれば、その流れは簡単には止まらないとみている。

 米国株式市場をみてみると、ここにきてややダウ平均はブレーキが掛かっていたが、ナスダックは連日の高値更新となっている。トランプ政権と変わるとアップルなど世界的なハイテク企業に対しての圧力が加わるとの見方もある。ところがそれらハイテク企業の株も買われているのは、やはり景気そのものの回復も背景にあるのではなかろうか。

 米10年債利回りの推移をみると11月に1.7%台あたりにいたのが、12月には2.5%台に乗せるなどやや急ピッチな上昇となっていた。さすがにそろそろ調整が入ってもしかるべきタイミングであったようにもみえる。それでも米長期金利がボトムをすでに打っており、今年のFRBにとって複数回の利上げが可能となるのであれば、米長期金利はいずれ3%台に乗せてくる可能性はありうるとみていたほうが素直かなとも思う。

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# by nihonkokusai | 2017-01-12 10:10 | 債券市場 | Trackback | Comments(0)

英国のハードブレグジット(英国がEUから完全に離脱する強硬路線)・リスクはあるのか

 英国のメイ首相は8日、今年初のテレビインタビューで、英国のEU離脱は「正しい関係を得るものであって、メンバーシップを少し残すことではない」と強調した。「われわれは離脱する。EU加盟国ではもはやなくなる。英国が離脱した際にEUとどのような適切な関係を持つかが問題だ」と述べた(ブルームバーグ)

 このメイ首相の発言が、移民抑制などを優先し、単一市場からの離脱もいとわないハードブレグジットを示唆したと受け止められ、9日の外為市場でポンドはドルなどに対して大きく下落した。

 これを受けてかメイ首相は9日に、従来からの自身の立場を誤って伝えたとしてメディアを批判、単一市場からの離脱は不可避ではないとし、投資家の懸念払しょくに努めたそうである(ロイター)。

 たしかに9日の欧州市場での動きをみると外為市場でポンドは下落していたが、ポンド安を「好感」し、ロンドン株式市場ではストックス欧州600指数はザラ場中の最高値を更新し、10日続伸となっていた。また、英国債も「リスク回避」の動きを示し、10年債利回りは6日の1.38%から9日は1.33%に低下(価格は上昇)している。

 これは昨年6月の英国の国民投票において、EU離脱決定を受けた際の動きと同様である。通貨のポンドは売られても、英国の株や国債はむしろ買われており、英国売りといった状況とはなっていない。

 とはいうものの英国がブレグジットの決定をしてしまったことは確かであり、今後メイ首相がどのような手順を踏んで、どのようなかたちでEUを離脱するかに注目が集まる。いまのところEUとの離脱交渉における英政府の目的は依然として不透明であることで、これを払拭させない限り、ポンドなどは不安定な動きが続くことも予想される。

 メイ首相は10月にEU法が英国で適用される欧州共同体法の廃止についても触れており、EU法を廃止するとなれば、英国は欧州司法裁判所の管轄外になる。

 英国はEU単一市場にアクセスする権利を持つ欧州経済領域(EEA)に加盟することでEUの単一市場に残留する可能性を探っているようだが、これにはEU法への準拠が求められる。つまり英国がEU法を廃止するとなれば、EEAに加盟することでEUの単一市場に残留することが難しくなる。

 EUと何らかの経過措置を設けるなどして、ある程度の時間稼ぎは可能となるかもしれないものの、いずれは単一市場から離脱せざるを得なくなる可能性が高い。これがハードブレグジット・リスクとなる。EU圏内での無関税貿易という特権を失うとともに、金融機関がEU内の1国で事業の認可を得ると域内の他国でも事業活動が可能になるパスポーティングと呼ばれる制度が利用できなくなる。

 しかし、昨年6月の国民投票の結果を受けての欧米市場の動向をみても、今回のメイ首相の発言を受けての市場の動きを見ても、パニック的な英国からのリスク回避が起きているわけでもない。市場は英国が単一市場に結局残れるとの楽観的な見方をしているわけでもなかろう。むしろこれが世界的な金融経済危機を招くようなこととはイメージしていないのではなかろうか。

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通貨がいらない国、通貨が多い国、通貨が流出する国

 2016年末現在、マイナス金利政策を導入しているのは日本とユーロ圏、そしてデンマーク、スウェーデン、スイスの中央銀行となっている。このうちデンマークやスウェーデンはキャッシュレス化が急ピッチで進んでいる。これはノルウェーなども同様で北欧諸国の現金通貨流通高はここ数年間が大きく減少している。これらの国に行く際は現金を持つ必要はない反面、クレジットカードなどがないとスウェーデンなどでは地下鉄に乗ることもできない。反対に少額の買い物でもカードで決済が可能となっている。

 現金の流通を減らそうとしているのはこれら国々だけではない。韓国中央銀行は2020年までに硬貨を廃止する計画を立てている。韓国もカード決済システムが確立されているため、現金の決済率は低いそうである。硬貨製造や回収、管理コストなどのコストが軽減されるだけでもそれなりの経済効果が期待されるとか。

 インドでは昨年、突然、高額紙幣が廃止されて大きな混乱を招いた。この処置は、インドでは国内でテロ行為を行っている過激派グループが、紙幣を大量に偽造し活動資金に充てているためとした。また市民の間でも、脱税目的の現金決済が行われているとされる。ただし、モンティ首相はこの措置についてキャッシュレス社会も念頭に置いているようである。

 また欧州中央銀行(ECB)は2018年末で500ユーロの紙幣の発行を停止することを発表している。これらは犯罪に使われることを阻止するためのもので、マネーロンダリングに悪用されているとの懸念が高まっているための措置とされている。ただし。これに対し現金志向が強いドイツで廃止に否定的な意見が強かったようである。

 世界的にキャッシュレス化が進むなかにあって、何故か現金の流通額が増えている国がある。それは日本である。12月に日銀は紙幣流通額が100兆4661億円と過去最高になったと明らかにした。100兆円を突破するのは初めてとなる。世界的にキャッシュレス化が進むなか、何故に日本の現金が増加しているのか。これは日銀のマイナス金利政策が影響しているようである。日銀のマイナス金利政策により金利が下がり運用先が見当たらなくなったことで、お札を銀行等から引き出し、自宅でためこむタンス預金が増えたことが背景にあるとされる。たしかに金庫が売れているとのニュースもあった。これにはマイナンバー制度の影響との指摘もある。

 ただし、日本で現金が増加した背景にはそれだけ円の信用度が高いことも要因となっていよう。インドなどのように偽札が入り込む余地は少ないこともあるが、円そのものへの信認が高く現金で保管しようとのインセンティブが働いているとみられる。日本でキャッシュレス化が進みにくい背景にも円そのものへの信用度の高さがあるのではなかろうか。

 これに対称的な国が中国となる。中国から海外への資金流出が2016年に過去最大になり、流出から流入を差し引いた金額は3千億ドル(約35兆円)超と前の年に比べ6割拡大した(日経新聞)。

 M&Aなど直接投資で流出した面も大きいが、現金の海外持ち出し、地下銀行を通じた違法送金などもあったとされる。ビットコインが一時急騰したが、その取引の9割が中国であった。

 中国当局はHIBORの翌日物金利を大きく上昇させて元の下落を防ごうとしたのは、ヘッジファンドの買い戻しを誘うためとされるが、年が変わると年間外貨両替枠が更新されて、中国からの資金流出が加速される恐れも懸念されていたことへの対処でもあった。

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# by nihonkokusai | 2017-01-09 15:47 | 中央銀行 | Trackback | Comments(0)

中国の短期金利が一時100%となった原因

 昨年の年初の金融市場はリスクオフの動きでスタートした。中国経済の先行き懸念にそれに伴っての原油価格の下落、原油価格の下落による資源国への影響なども意識されて、円高が進むなどリスクオフの動きを強めることとなった。

 そして2017年の相場がスタートして、またもや中国市場がおかしな動きを見せている。1月5日の東京市場の引けあと、ドル円があっさりと116円台を割り込んだ。特に国内の材料が見当たらず、何か起きたのかと思われたが、この背景に中国の人民元の急反発があり、それによってドルが下落し、ドル円も116円を割り込んだという図式であった。

 人民元は昨年10月にIMFの定める特別引き出し権(SDR)に採用された。このあたりからドルに対して下落傾向が続いていた。ドルそのものも12月のFOMCの利上げ観測もあり、上昇しやすい地合のなか、米大統領選挙におけるトランプ氏の勝利を受けて、さらにドル高圧力が強まった。そのトランプ氏は中国を「為替操作国」に指定すると広言しており、中国政府は為替介入という手段が取りづらくなっていた。

 ここに外貨準備の減少も懸念材料となっていた。中国人民銀行が元安の急激な進行を抑えようとドル売り介入を断続的に実施してきた結果、2016年11月末の中国の外貨準備高は3兆516億ドルと14年のピークに比べて1兆ドル近く減少していたのである(日経新聞電子版)。

 これは中国の米国債の保有額の減少要因ともなっており、米財務省が発表している米国債国別保有残高によると昨年10月時点で、これまでトップを走っていた中国を抜いて日本がトップに返り咲いていた。

 介入を行うと外貨準備が減少するが、外貨準備の減少は元安要因ともなりかねない。このため、中国政府は年が変わってから介入ではない手段を講じてきたようである。それは短期金利の操作で、いわゆる短期金利の高め誘導を行ってきた。

 比較的、元を自由売買できる香港短期金融市場で、オフショア人民元の流動性をひっ迫させ、香港銀行間取引金利(HIBOR)の翌日物が前日の16.9%から38.3%へと約1年ぶりの水準に上昇し、午後には100%を超える取引も成立したようである。ちなみに昨年1月にも香港市場で中国国有銀行を通じて、ドル売り元買いの市場介入を行ったことでHIBORが急騰し、翌日物HIBORは12日には60%台に急上昇するという場面もあった。

 今回は外国為替市場での大規模な元買いドル売り介入は見送られているようで、中国の国有銀行などが短期市場への資金供給を絞ったための短期金利の急騰とされる(日経電子版の記事より一部引用)。年が変わると年間外貨両替枠が更新されて、中国からの資金流出が加速される恐れも懸念されていたことへの対処でもあったとみられる。

 HIBORの上昇をみて、ヘッジファンドなど元を売っていた投機筋などが、コストの増加を嫌気して外為市場では元の買い戻しの動きを強めることとなった。人民元が急反発し、その余波で上昇し続けていたBitcoinが急落するなどした。

 ただし、インターバンク市場の流動性ひっ迫は、銀行に深刻な影響を与えかねない。企業や市場などにも影響を与えることで、昨年のような景気減速そのものへの警戒が強まることもありうる。さすがに昨年の二の舞はないと思われるものの、当面の中国人民元の行方も注意する必要がありそうである。

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# by nihonkokusai | 2017-01-07 11:28 | 中央銀行 | Trackback | Comments(0)

国債の歴史からみた日銀の長期金利コントロールの意味

 日本の国債市場が本格的に稼働したのは、それほど昔のことではない。1979年頃まで、預金金利などは厳しく規制されてきており、国債の金利を含めて市場水準よりかなり低いレベルに置かれていた。これにより企業の設備投資が促され、いわゆる高度成長の原動力となっていた。銀行も保護され、いわゆる護送船団方式と呼ばれるシステムが作られていた。

 1970年代に発行された国債は、銀行や証券会社などで構成された引受シンジケート団と大蔵省資金運用部が引き受けていた。シ団が引き受けた国債で市中消化されるのはごく一部で、ほとんどがシ団メンバーの金融機関にそのまま保有された。シ団の引き受けた国債の市場売却は、事実上自粛されていた。ただし実際のところ、銀行が保有する国債の大半は、日銀の買い切りオペで吸い上げられていた。

 ところが1977年に金融機関の取得した国債の流動化がスタートすることになる。日銀の買入で吸収される国債の比率が低下し、都銀等の預金増加額に占める国債引受の割合が急増していたためである。特例国債の市場売却について各金融機関の自主的な判断に委ねられた。引き受け後一年間は引き続き売却を自粛することになった。建設国債に対しても借換方式を見直すことを前提に流動化が開始された。

 1979年のロクイチ国債の暴落を受けて、金融機関の保有国債の評価法が従来の低下法から原価法または低価法の選択性となった。また、ロクイチ国債の暴落は大蔵省の国債管理政策にも大きな影響を与えることになる。

 1985年6月に金融機関の債券のフルディーリングが開始された。債券のディーリング業務とは既発債を売買する業務であり、それまでは証券会社にしか認められていなかった。国債を大量に保有している都銀などの銀行が、国債市場に本格的に登場することで公社債の売買高は急増した。ただし、銀行は商品勘定保有国債であっても、翌月までの売却自粛期間が設けられており、この売買自粛が完全に廃止されたのは1987年9月である。

 1985年10月に東京証券取引所に日本ではじめての金融先物市場が誕生した。長期国債先物取引が開始されたのである。債券先物取引においては、東京証券取引所会員の証券会社だけではなく、国債を大量に保有している銀行の参入が、特別会員という資格で認められた。

 金融機関のフルディーリングの開始や債券先物の登場もあって、国債は活発に売買されるようになり、一時的ながら当時の指標銘柄である10年利付国債(68回債)の利回りが、代表的な短期金利のひとつであった手形レートを下回り、長短金利の逆転現象が生じた。また、1987年5月に指標銘柄の89回債は10年債でありながら、当時の代表的な短期金利であった公定歩合の2.5%に接近した。ここが債券のディーリング相場のピークとなったが、これ以降はディーリングそのものはは影を潜め、本来の投資家主体の相場が形成されるようになっていった。

 国債残高が年々積み上がったものの、タイミング良く銀行、生保、年金など国内の民間金融機関には、日本国債を買い入れる余地が拡がっていた。日本国債への海外からの投資額はそれほど多くはなくても、国内で大量の国債が消化が可能となっていたのである。

 1998年に国債を大量に引き受けていた大蔵省資金運用部の引き受け比率の低下などをきっかけに運用部ショックと呼ばれた国債価格の急落(長期金利の急上昇)が起きた。しかし、実際には資金運用部分の国債を買い入れる余地を民間金融機関は有していた。日銀のゼロ金利政策や財務省の国債管理政策の強化とともに、需給面の不安の後退もあって運用部ショックは一時的なものとなった。

 その後も需給面での不安はないにも関わらず、2013年4月から日銀は無理矢理、国債を大量に買い入れることとなった。これによって国債の需給バランスは変化した。さらに2016年9月のイールドカーブコントロールの導入により、日銀は今度は長期金利をコントロールしようとしている。これはまさに先祖返りともいうべきものでもあろう。

 日本の国債市場にはそれほど長い歴史があるわけではない。しかし、こつこつとながら日本の国債市場は拡大していった。しかし、その国債を日銀が年間発行額に匹敵する金額を買い入れて、残高の4割も保有するというのは、ある意味、国債市場の機能を損ねていることは間違いない。だから長期金利をコントロールできるとするのであれば、それは国債市場の機能をむしろ蔑ろにしているとも言えるものではなかろうか。

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# by nihonkokusai | 2017-01-06 10:01 | 国債 | Trackback | Comments(0)

トランプ相場の背景にあるポスト・グローバル危機

 金融市場、金融相場の世界では、ある言葉が流れの変化を象徴することが多い。昨年の米国大統領選挙の結果を受けての「トランプ相場」とか「トランプラリー」と呼ばれるものもそのひとつである。

 日本でも「アベノミクス」と呼ばれた用語が相場に限らず、日本全体に何か大きな変化をもたらせたかのように受け止められている。それより少し前の「欧州の信用不安」や「リーマン・ショック」も同様に百年に一度と呼ばれた世界の金融経済危機を象徴する用語となっていた。

 ただし、注意すべきはこれらの用語が一人歩きしてしまい、あたかもトランプ氏や安倍首相の登場が、金融市場の流れを突然変えてしまったかのような見方をしてしまうことである。

 「リーマン・ショック」という用語は英語にはない。いわゆる和製英語である。英語では「the financial crisis」とか呼んでいるようである。これは2007年のサブプライム住宅ローン問題がきっかけとなり、ある種のバブル崩壊が発生した上に、金融商品のリスクの行方が広範囲に拡大していたことで、金融バブルの崩壊とも言えた。その象徴的な出来事のひとつが、リーマン・ブラザーズの破綻であった。

 「アベノミクス」についても、安倍首相のリフレ政策への発言は、あくまでひとつのきっかけにすぎない。「リーマン・ショック」のあとの「欧州の信用不安」の拡大で、かつてないほどのリスク回避の動きが極まり、それが解消されつつあったタイミングで出てきたのがアベノミクスである。そのため急激な円安株高が起きたが、リフレ政策で物価目標は達成されていない点だけをみても、物価を上げるはずのアベノミクスは成功したわけではなく、タイミングの問題とも言えた。

 アベノミクスと呼ばれた現象の背景にあったのが、世界の金融市場を揺るがした大きな危機からの脱却であり、それを象徴するのが米FRBの正常化に向けた動きとなった。しかし、日銀はアベノミクスに引っ張られ、ますます深みにはまり、ECBも異常な緩和を続けている。これは流れを読み切れていなかったともいえるのではなかろうか。物価の低迷は金融政策が足りなかったからというわけではない。原油価格の持ち直しで、それも次第に解消されつつある。

 そんなタイミングで出てきたのがトランプ相場である。2016年12月のFRBによる二度目の利上げは遅かったぐらいではあるが、2016年に入っての中国など新興国経済への懸念と原油安によるリスク回避の動きなどが、米再利上げを躊躇させた。しかし、このリスク回避の動きの大きな要因はそのFRBの利上げであり、過剰流動性の後退と原油安が新興国に与える影響が危惧されたと言える。しかし、原油価格は底を打ち、新興国経済もそれほど悪化することはなかった。

 さらに予想外ともいえる国民投票による英国のEU離脱決定も、世界の金融市場を揺るがしかねないとされた。しかし、これもギリシャ危機に比べると市場は比較的冷静であった。ドイツ銀行やイタリアの銀行の問題も懸念されたが、すでにこのような危機に対してはブラックスワンとはなっておらず、危機を防ぐための手段も講じられていたことや、過去の経験も生きたことで、これらによるリスク回避の動きも一時的なものとなっていた。

 もちろん今年、2017年にも新たな危機が生じる可能性はある。その火種もある。しかし、2007年から2012年あたりにかけての金融経済危機を乗り越え、ポスト金融経済危機の時代に移りつつあるとの見方もできよう。それがここにきてのトランプ相場と呼ばれる世界的な株高、長期金利上昇の背景にあるとも言えるのではなかろうか。象徴的な言葉に惑わされることなく、背景にある流れについても認識しておくことも重要だと思われる。

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# by nihonkokusai | 2017-01-05 09:43 | アベノミクス | Trackback | Comments(0)
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